20. その正論は甘んじて受けるが、その二択は受け付けたくない
20. その正論は甘んじて受けるが、その二択は受け付けたくない
また、いつものように白石がオレの部屋に居座っていた。白石はソファーに座って、今日の学校であったことや、テレビでやっているバラエティ番組の内容を特にオレの反応を求めるでもなく一方的に喋っていた。オレは適当に相槌を打ちながら、明日の準備でもしようかと思っていたところだった。この、白石の一人喋りをBGMにした時間は、最早オレの日常の一部と化している。
そんな中、白石がふいと口を閉ざし何か考え込むような仕草をしてオレの方に視線を向けた。
「ねぇ先輩。ふと気になったことがあるんですけど?」
「なんだよ? お前の『気になったこと』って、めんどくさいことしか言わないんだが?」
白石の「気になったこと」は、たいていオレのプライベートに踏み込むものか、彼女の突飛な発想に基づいたものだ。聞くだけ無駄だという経験則がオレにはある。
「失礼ですよ! 私はただ、先輩って夜ご飯どうしてるのかなって思っただけですよ!」
白石は頬を膨らませて抗議したが、言う内容は意外にもごく普通の日常的なことだった。夜ご飯?そんなこと今更気にするようなことか?
「お前が帰ったあとに、コンビニとかに買いに行ってるけど? あまり自炊はしないかな。それがどうしたんだ?」
一人暮らしを始めてから、まともに料理をした記憶はほとんどない。面倒だし、そこまで食にこだわりもない。仕送りで十分賄える範囲なので別に問題はないと思っている。
「えっ!?お金もったいないですよ!毎日毎日買い食いなんて!」
白石が心底驚いたような声を上げた。そして珍しく正論をぶつけてきた。確かに自炊に比べれば、毎日外で買ってくるのは割高だろう。こいつはたまにこういう常識的なことを言ってくるから油断できない。
「いいだろ別に。贅沢してるわけじゃないんだからさ」
オレは、白石の言葉を軽く受け流そうとした。別にこいつに食費の心配をされる筋合いはない。
「よくありませんよ!私が作りますから!」
「……はい?」
何を言っているんだこいつは?オレのために料理を作る?それに白石の料理?想像しただけで、なんだか得体の知れない物体が出てくるような気がして少し怖くなる。
「今度から、私が作ったものを食べてください!毎日は難しいから……週末だけでも!」
白石は、もう決定事項であるかのように捲し立てる。毎日は難しいって、毎日作ろうとしてたのか? それもそれで恐ろしいが。週末に白石の手料理? それは、こいつとの関係がまた一段階進んでしまうような気がして無性に落ち着かない。それに本当に食べられるものが出てくるのかも不安だ。
「いや白石。落ち着けよ。お前は華のJKだ。忙しいだろ?せっかく高校生という青春を謳歌できる時間を潰すわけにはいかないだろ?な?」
「私は自炊してます。それに1人分も2人分も変わらないですよ。決まりです!先輩はこれから週末は彼女である私のご飯を食べる!」
決まりですじゃないだろうが。そして、また出た「彼女である私」! 本当にこの前提を崩すのは至難の業だ。
「勝手に決めるなよ!」
「じゃあ先輩。毎日私の愛情がこもったお弁当を学校のお昼に食べるのと、週末に私の愛情のこもった手料理を食べるのでは、どっちがいいんですか?」
白石は、なぜかドヤ顔でオレに究極の二択を突きつけてきた。なんでその二択しかねぇんだよ!しかも、どちらも『愛情がこもった』手作り料理という微妙に恥ずかしいシチュエーションを伴っている。うぜぇ。どちらを選んでも面倒なことになるのは目に見えている。
しかし、ここで頑なに拒否して、白石が拗ねたり、学校で「先輩にお弁当作ってあげようとしたら嫌がられたー!」とか、変な噂を流されたり、あるいは直接騒がれたりしたら、もっと面倒だ。
こいつは、人がたくさんいる場所でも平気で大声を出せる人間だ。たぶん。それを考えたら、週末に手料理を食べさせられるという方が、まだ被害が少ないかもしれない。
くそっ。こいつはなんでこんなに面倒なやつなんだ。いつもオレをこういうどうしようもない二者択一の状況に追い込みやがる。深いため息をついて、オレは白石の提案を受け入れることにした。もうこの際仕方ない。
「わかったよ……週末、お前の料理を食えばいいんだろ?」
「はい!そうしましょうね!」
「お試しだからな!言っとくけど、不味かったらもう食わねぇからな?それでいいな?」
「それでいいですよ。先輩は私のことどう思ってるか知りませんけど、それなりに料理の腕はあるんですよ?」
白石は自信満々に胸を張った。まあいい。とりあえずこいつの料理が不味ければいいんだからな。
「あっそ。それは楽しみだな」
「あーまたバカにしてますよね?絶対に美味しいって言わせてみせますから、覚悟してくださいね?」
こうして、週末に白石の手料理を食べることが決まってしまった。こいつの料理の腕前を知るのが怖いんだけど、という不安がじわじわと胸の中に広がっていく。本当にちゃんとしたものが作れるのか。奇抜なものや、とんでもない味のものが登場するのではないか。週末が来るのが楽しみなような、怖いような複雑な気持ちになったのだった。
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