16. 価値観というものは大体合わないように出来ている
16. 価値観というものは大体合わないように出来ている
オレの部屋は、いつものように白石の存在によって占領されていた。彼女はソファーに寝転がったり、体育座りをしたり、思い思いの格好でくつろいでいる。手にはスマホ、視線の先には付けっぱなしのテレビ。
部屋の中にはテレビの音と、白石が時折漏らす独り言、そしてスマホをタップする微かな電子音だけが響いている。それなら自分の部屋でもできることだろう。わざわざオレの部屋に来て、こんな風に過ごす意味が何度考えても理解できない。まあ、今更問い詰める気にもなれないが。
そんなある意味平和な時間が流れる中、突然白石がスマホから顔を上げた。天井を見上げたままぽつりと呟く。
「うーん……何度考えても理解できないなぁ」
「……何がだよ?」
聞かない方がいい。関わらない方がいい。頭の中の警鐘が鳴るが、つい口が出てしまうのがオレの悪い癖だ。こいつの「気になること」はたいてい面倒事の始まりだからだ。
「今日、友達に『いつも彼氏と一緒にいて、飽きないの?』って言われたんですよ。絶対おかしいですよね? 好きな人なら、一緒にいたいと思うのが普通ですよ!」
白石は熱弁を振るい始めた。まず、その友達の認識が間違っている。だが、その友達の意見――『飽きないの?』という部分に関しては、正直オレも同じ意見だ。毎日、こんな風に一緒にいて飽きないのか?
「まず、大前提としてオレは彼氏じゃないからな?まあ、オレもその友達と同じ意見だけどな。価値観の違いだろ。お前の価値観を押し付けるなよ」
「そうかなぁ……でも、私と先輩はあまり一緒にいませんよね?」
「は?」
何を言っているんだ、こいつは。ほとんど毎日、放課後はずっとこの部屋で一緒にいるだろうが。何をもって「あまり一緒にいない」と言うんだ?
「ほぼ毎日いるんだが?もしかして記憶喪失?」
「違いますよ!日じゃなくて時間です。帰宅してからの数時間だけじゃないですか?少ないですよ!」
時間?たかが数時間?いやいや、世間一般で言えば、放課後毎日数時間も異性の部屋に入り浸っている状況を「あまり一緒にいない」とは言わないだろう。むしろ「いつも一緒にいる」と言うはずだ。それに普通じゃないのは、時間じゃなくてこの状況そのものだ。
「いや、世間ではそれが『いつも一緒にいる』と言うんだが?」
「もう!先輩は自分の価値観を押し付けないでくださいよ! さっき自分で言ってましたよ? まったく!」
なんでこいつはオレに怒ってんだよ?オレはただ一般的な常識を言っただけだろうが。本当に、こいつはすぐに揚げ足を取りたがるな。こちらが何か言うと、それを自分に都合の良いように解釈したり論点をずらしたりする。本当にうぜぇ。
「それに私はもっと先輩と遊びたいんです! 先輩だって同じ気持ちのはずです!」
「だから、お前の価値観を押し付けんなよ! オレは、お前と遊びたくなんかないぞ!」
でも、こいつには何を言っても無駄だろうけどさ……どれだけ正論を言っても、どれだけ反論しても、白石は自分の都合の良いように受け止めるか、全く別の話にすり替えるか、あるいは「先輩は素直じゃない」で片付けてしまう。
この会話にならない感じが疲れる。今日も結局、白石のペースに乗せられて、わけの分からない議論に付き合わされている。本当に面倒なやつだよこいつは。
オレがもう何を言っても無駄だと内心で諦めのため息をついた時、白石はコロリと表情を変えた。さっきまでの真剣な顔や、怒った顔はどこへやら、いつもの楽しそうな笑みを浮かべている。
「とりあえず何かして遊びましょうよ、先輩!」
こうして、いつもオレは白石のペースに巻き込まれる。面倒だ、帰ってほしい、一人になりたい。そう思うのに、結局こうしてこいつの提案に乗ってしまう。
こいつの理屈は理解できないし、突飛な行動にはいつも振り回される。だが、同時にこいつがいない日常を想像すると、少しだけ物足りない気もするのも事実だ。
この、わけの分からない関係性がもう当たり前になってしまった。面倒で疲れるけど、全く退屈しない日々。これもまた、悪くないのかもしれない。この複雑な感情も、きっと白石という存在がオレにもたらしたものなのだろう。
『面白い!』
『続きが気になるな』
そう思ったら広告の下の⭐に評価をお願いします。面白くなければ⭐1つ、普通なら⭐3つ、面白ければ⭐5つ、正直な気持ちでいいのでご協力お願いします。
あとブックマークもよろしければお願いします(。・_・。)ノ




