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隣の部屋に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする  作者: 夕姫


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14. 逆に考えてみる。でも好感度は間違いなくあるし

14. 逆に考えてみる。でも好感度は間違いなくあるし




 今日は学校の創立記念日だった。朝からいつもとは違う、どこか浮ついた空気が校舎全体に漂っていた。午前中で授業は全て終わり、解放されたクラスメートたちは一斉に盛り上がっていた。


 放課後の予定で頭がいっぱいといった様子で「駅前のカフェ行こうぜ」「カラオケがいい!」なんて楽しそうな声があちこちから聞こえてくる。ああ、青春ってやつか。眩しい光景だな。


 まぁオレには全く関係ないけどな。特別仲の良い友達がいるわけでもなく、ましてや放課後にわざわざ誰かと遊びに行くなんてタイプじゃない。さっさと家に帰って、静かに過ごすのがオレの日常だ。


 そして、いつも通りの日常の延長線上に、白石が部屋に来る、というイベントが組み込まれている。今日が創立記念日だろうが何だろうが、白石は絶対に来る。だが、今日はいつもと少し違う。午後の授業がない分、長い時間こいつといなきゃいけないと言う、考えてみれば全くもって理不尽な状況だ。まるで何かの罰ゲームみたいだ。


 普段なら授業が終わって家に帰ってから夜までの時間だけ我慢すればいいのに、今日はこれから延々と白石の相手をしなければならないのかと思うと、深くため息が出た。あーあ。早く今日一日終わらねぇかな……


 家に帰りゆっくりしようとしていると、チャイムが鳴りドアを開ける。予想通り白石が立ってた。いつもの明るい笑顔と、変わらない制服姿。ただ、今日は午後の予定がないせいか、いつも以上にのんびりとした、気の抜けた雰囲気を纏っているように見えた。


 部屋に入ると、白石はいつもの定位置のソファーを占領する。特に会話もなくしばらく部屋の中に静寂が流れた。創立記念日で早く帰れたからといって、特にすることも決めていない。ただ、時間が過ぎるのを待っているだけだ。そんな、だらけた空気の中、不意に白石が口を開いた。


「ねぇ先輩。聞いてもいいですか?」


 白石の声にぼんやりしていた意識が引き戻される。なんだか真面目なトーンに聞こえたのは気のせいか?


「なんだよ?」


「先輩って、私が彼女だと思ってないんですよね?」


「そう言ってるだろ」


「どうしたら認めてくれるんですか?」


 どうしたらって言われても、そもそも彼女じゃないんだから認めようがないだろう。まるで彼女であるという既成事実をオレに押し付けようとしているみたいだ。


「認めるってなんだよ……そもそもそういう、告白っぽいものもないだろ?」


 オレたちは、いわゆる恋愛関係のステップを踏んでいない。だから付き合っているなんて言えるわけがない。極めて論理的な反論だと思ったのだが、白石は少し考え込むような仕草をした。


 白石は確かにそうだとでも言うように、軽く頷いてから、少しの間沈黙が流れる。部屋の中の空気は、先ほどまでの緩んだものから、少しだけ張り詰めたものに変わった。白石は何かを計算しているのか、それとも全く別のことを考えているのか、オレには読めない表情をしている。


 そして、また少し考えるような素振りを見せてから、白石はとんでもないことを言い放った。


「じゃあ逆に考えてみて、私を彼女にしてみてくださいよ!」


 ……ん? 今、こいつは何を言ったんだ? 聞き間違いか? 全く意味がわかんねえぞ?脳が彼女の言葉を理解することを拒否している。どういう理屈でそんな結論に至るんだ?


「どういうことだよ?」


「言葉通りの意味ですよ! 私のことを本当に好きになってください!」


 白石は至って真面目な顔でそう言った。いやいや、言葉通りの意味でも意味が分からないんだが? 好きになってくださいって言われて、はいそうですか、と好きになれるなら世話ないだろう。感情なんてそんな単純なものじゃない。


「いや、だから……」


「考えてみてください?私のどこか嫌いなところ、ありますか?」


 うっ……確かにウザいとか、図々しいとか、面倒なやつとか色々思うところはある。だが人間として、後輩として、心底嫌いかと言われると……確かに、ウザいという事以外にこいつに決定的にマイナスなところは見つからない。


 いつも元気で、明るくて、意外と気遣いができたり、時折見せる真剣な表情にドキッとさせられたり……でも、そんなのは嫌いじゃないというレベルであって恋愛感情とは全く別物だ。付き合うなんてそんなこと想像すらできないし、したこともない。確かに見た目で言えばかなり可愛いし、好みのタイプであるのも事実。


 オレが言葉に詰まっているのを見て、白石は確信したような表情を浮かべた。


「ほら!答えられませんよね?それが答えですよ先輩!素直になってください!」


「なんでそうなるんだよ! って言うか……お前はなんでそんなにオレと付き合いたいんだ?オレのどこが好きなの?」


 もう、反論するのも疲れて、逆に質問を投げかけた。一体、オレのどこに、白石をそこまで惹きつける要素があるというんだ? 自分でもよく分からないのに、白石に言われても分かるはずがない。少しでも彼女の思考回路を理解したかった。


「そんなの全部ですよ!構ってくれるところとか、優しいところとか、あと可愛いところも全部好きです!」


 彼女の言葉を聞きながら、オレの頭の中はパニックに陥った。構ってくれるところ? そりゃ、無視するわけにいかないだろ。優しいところ? 後輩になら普通に接するだろ。そして、『可愛いところ』? な、何を言ってるんだこいつは! オレのどこが可愛いんだよ! 真っ赤になる顔を隠すことすら忘れて、オレは完全にフリーズしてしまった。


「それに、先輩だって私のことは嫌いじゃないですよね?」


 白石の言葉が、追い打ちをかけるように響く。シン、とした沈黙がオレたちの間を流れる。外から遠く聞こえる車の音や、どこかの家から漏れてくる生活音だけが、世界の営みを教えてくれるようだった。


 しかし、オレの世界は完全に停止していた。白石の真剣な瞳から逃れるように視線を逸らし、机の上に置いてあるペン立てに目をやる。使い古したボールペンやシャーペンが、いつもと変わらずそこにある。なのに、それらが全くの別世界のもののように感じられた。


 ……正直な話、嫌いではない。こいつが毎日こうして部屋に来ることも、いつの間にか日常の一部になってしまった。こいつの明るい声を聞かないと、どこか物足りないような気さえする瞬間もある。でもそれは、あくまで『後輩』としての情であって、『恋愛感情』とは違う。オレの中ではその線引きは明確だったはずだ。なのに、白石はその線を軽々と飛び越えて、オレの心の中に入り込んできている。


 白石は、オレの沈黙をじっと待っているようだった。その視線が、肌に突き刺さるように感じられる。重苦しい空気に耐えられずオレは小さく息を吐き出した。心臓がドクドクと脈打っているのが自分でも分かる。顔はきっと、茹でダコみたいに真っ赤になっているだろう。情けなくて、顔を上げることができなかった。


 オレの頭の中は完全にシャットダウン寸前だった。考えることを放棄したい。この場から逃げ出したい。誰か代わりに答えてくれと本気で思った。


 もう、耐えられなかった。この重苦しい空気、理解不能な状況、そして何より、自分自身の混乱しきった感情に。オレは、無理やり口を開いた。それは、かすれた情けない声だった。


「あー……その、なんだ。えっと……」


「……やっぱり先輩は素直じゃないですね?私のこと好きすぎです!」


「え?」


 白石の言葉に、完全に思考停止していたオレの頭が、再び動き出す。素直じゃない?そんな簡単な言葉で片付けられる問題かこれは。お前が言っていることがどれだけめちゃくちゃで、どれだけオレを混乱させているか分かっているのか?


「別に、素直とか関係ないだろ。お前が、その……変なこと言ってるだけだ」


「あ。好きすぎは認めるんですね?いや~ん。もう!答えじゃないですかそれ!」


「認めてねぇだろ!」


 混乱はまだ続いているけれど、静かな日常に少しだけ刺激と、そして、わけの分からない感情の波が加わった。創立記念日の午後は、こうして掴みどころのない後輩に翻弄されながらゆっくりと更けていった。

『面白い!』

『続きが気になるな』


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