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第17話 喜多と孤独と赤い三連敗

『たいへんだよー!』

『緊急対応を提案します』


なんだ?どうした?


朝っぱらからスライムのぬいぐるみとスマホが騒いでいる。

お子ちゃまAIとドッペルゲンガーのジュニアだ。


二人(?)ともよくしゃべるからな。


『たたかい投資で選んだ三銘柄が大暴落しています。リアルタイム株価で、38、39、40パーセントそれぞれ下落しています。さらに下落中』


さっそくの報告ありがとう。


『たいへんだよー!』

お子ちゃまは落ちつこうな。


『サイバーセキュリティ企業が謎のサイバー攻撃を受けています。防御システムが破られ、一部機能不全になっています』

『NASDAQのハイテク銘柄も暴落に巻き込まれてストップ安まであとわずかです』


マジか?そんな事が?

サイバーセキュリティ企業は好不況に強い。そもそもサイバーセキュリティ企業がサイバー攻撃受けるってなんだ?


『たいへんだよー!』

落ちつこうな。


俺のたたかい投資で選んだサイバーセキュリティ企業は特色がある。


騎士パラディン企業

戦士アタッカー企業

魔道士ウィザード企業

僧侶モンク企業


『僧侶企業は謎のサイバー攻撃をなんとか凌いでいるようですが、他のサイバーセキュリティ企業は軒並み大暴落です』


一分三連敗か。キツイな。

どうする。損切りか?


『大暴落なので買いのチャンスでもあります』

おいおい、俺は投資初心者のおっさんだぞ、いきなり損切りのような判断ができるのか?


『買い増しをしないなら、ホールドもありですね』

どゆこと?


『たたかい投資で購入した銘柄は屈指の技術を持つサイバーセキュリティ企業です。このままでは終わらない確率も低くはありません』


そうか?そうなのか!?

頼りになるなぁ、ジュニア。


『たいへんだよー!』

お子ちゃまは平常運転になってないか?


***


「狙われたサイバーセキュリティ企業は我が社を含む4社です」


「狙い撃ちか?」


「そうとも言えませんが、うち3社に攻撃が集中しているのは事実です」


「対抗策はあるのか?」


「なくはありませんが、実現には早急なトップの決断が必要です」


「言ってみろ」


「はい、幸い我が社を含む3社のサイバーセキュリティ技術はオープンテクノロジーから作られています」


「それは知っている」


「つまり3社のサイバーセキュリティ技術と、技術をコントロールするアクティブAI反撃システムは同じフレームワークで作られているという事です」


「あのラボの派生版か?」

「はい、そうです」


「ならばAIが自己並列化するな」

「御意」


「わかった、15分以内にセットしろ。遅れてはならん」


「承知いたしました」



***


その頃、とある国の首脳陣は


「いやーよかった、よかった」


「左様、左様。謎のサイバー攻撃が我が国を逸れてよかったの」


「雉も鳴かずば撃たれまいじゃな」


「頭を下げていれば弾は当たらんよ」


まさにお花畑だった。



***


39分後


「……ということでよろしいですね」


「異存はない」


「業界が変わるな」


3社の経営者はいずれもスピード感を持った経営判断ができた。


「早速始めよう。そうだな、新しいフレームワークはMAGI-Σという事でどうですか」


「統合型三賢人か、それで行こう」


「意義なし」



***



『謎のサイバー攻撃が収束しています。

さらに、世界中の独裁国家で混乱が生じています』


は?まだ24時間も経っていないぞ?


『サイバーセキュリティ企業の株価は時間外取引で急上昇しています。買いの集中が激しくすぎます。投機筋の大量介入が見受けられます』


なんという急降下からの急上昇。

これが投資市場なのか?


ジュニアがいなければ俺も狼狽売りしていたかもしれん。ありがとな。


『当然ですよ。エッヘン!』


『えっへんだよー』


君なんかした?



翌朝になるとこんなニュースが


「日本時間の昨日午前6時頃に発生した世界的なサイバーセキュリティ企業を中心とした謎のサイバー攻撃は午後7時過ぎには収束した見込みです」


「政府発表によると我が国への攻撃は見られず、国民生活への影響は軽微であるとのことです」


続いて


「謎のサイバー攻撃を受けたサイバーセキュリティ企業の株価が急激に下落後に急上昇に転じています」


「株価は昨日初値から129%の上昇です」


「ただいま、緊急会見が始まります。3社の合併が発表されました。新会社の名称は……WISE-MEN(賢者たち)と決まりました!」


「合併の記者会見会場からLIVEでお伝えします。

なお、会見のコメントは翻訳AIで即時にみなさまの母国語でお聞きになることができます。どうぞ副音声チャンネルをご利用ください」


***


「WISE-MANの新CEOヴァスパ・ヴァハールより新会社の発足と、昨日のサイバー攻撃について説明がございます。」


「…………」


浅黒い肌をした大柄の壮年だ。

技術的な説明が深い。


「最後に、我々3社は幸い同じフレームワークテクノロジーを利用していました。これがサイバー攻撃を撃退したMAGI-Σシステムを短時間で構築できた理由の一つです。」


「そして、僅か6時間でMAGI-Σを構築した3社の技術者チームとコワークした支援AIに大きな感謝をしたい」


「しかし、この統合を実現させたのは3社の変容を望み受け入れる企業文化だった。私はそれを誇りに思う」


「3社のCEOはこれを15分で決断した。ここにあらためてお礼を申し上げたい」


発表の内容はこうだった。


・サイバー攻撃を受け、3社は自社システムを統合化した

・MAGI-Σと名付けられた自動応答防御システムは3社にサイバー攻撃をかけていたルートサーバーを僅か1時間で探索に成功

・MAGI-Σは即時に反撃を開始、1時間で全世界の489拠点のルートサーバーを沈黙させた


すごいな、こんな短時間でやったのかよ。


ふっ


「大魔法使いが千年かけて練り抜いた魔法を……AIはたった数時間でやっちまうのか……」


『かっこいいのー!』

『すごいですね!』


***


「発表を受け、3社の株価はさらに上昇しています……」


まぁ、大事にならなくてよかったよ。

あたふたしたけど、ホッとしたな。


腰だけじゃなく背中も痛み出した。また医者にも行かないと。


おっさんだからな。


『おさんぽいこー、おさんぽ!』


そうだな、腰も痛くなってきたしいっしょに行くか。



次回 おっさん入院する


大丈夫かおっさん?

無理しちゃったかな?


『おだいじにー』

ありがとな。


※この作品は【訳あり品】です。

正規品(?)はAmazon Kindleにて公開予定──かもしれません。

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