第16話 Z世代山田ユウ、証券会社を選ぶ
【後日談】
山田ユウとの会話にて
この前と同じ大人女子向けの居酒屋だな。二人とも飲まないけど。
今日はスカジャンのお姉さんはいない。
なんかホッとするな。
「証券会社の選定はどうだった?」
「シショー、口座開設だけなのに難しすぎるよー」
「どこが難しかった?」
「そうだね、それぞれメリットを提案してるけど、結局は相性かな?」
「相性ってなんだ?」
「それが上手く言えないんだよねー」
「自分なりに答えは出てるんだろ?』
「そうだね、Webからの第一印象が大きいかな?私世代を意識したUIとかオススメの提案があるとポイントは高くなるね」
ユウの選定ロジックは消去法だった。
まず2つの証券会社が候補から外れた。
まず、OTE証券
「ターゲット層が違うと感じたの。Webの写真もシニアが多かったし、言葉使いも丁寧過ぎる感じ」
「さすがデジタルマーケティングを扱ってるだけあるな」
「まぁね。ターゲット層の嗜好に寄せるのは基本だからね。だから私はターゲットから外れていたと思うよ」
次に、丸得証券
「ここは簡単だったよ。丸得経済圏のメリットも明確だったし、キャンペーンも的確だった。若年層も意識したサイト構成は魅力的だったよ」
「じゃあどこがダメだったんだ?」
「ダメじゃないんだよね。いいんだけど……」
「なんだ?」
「私、丸得経済圏の人じゃないんだよ。同じ経済圏の人はいいと思うけどね」
「それで?」
「投資口座の開設と経済圏は違うと思うの。経済圏は今のところ大競争の真っ最中でしょ。再編もあり得る。でもね、私は積立投資をしたいんだ。そうするともっと長期的な視点が必要じゃないかなぁって思った」
良く気がついたな、それがポジショントークなんだ。
「ポジショントーク?」
「簡単に言えば、企業側の立場で話している内容ってことだ。経済圏の拡大のために口座開設者を増やすのは企業の利益になる。でも、投資家の立場からすると、それは必ずしも最適じゃない場合もある」
「あーやっぱり、企業の視点が強すぎると、ちょっと違うなって思ったんだ」
数字のロジックじゃなくて、マーケティング視点で見たのか。
やるじゃないか。
「ここまではどう?」
「いいな。自分の考えで判断してるからいい」
「シショーもそう思う?」
「ああ、いい判断だ」
「ムフーーー!」
あっ、耳が動いた。
「で、最後にどう絞った?」
「多分、投資に対する収益性は変わらないと思う。違いは今の話だと、ポジショントークかな?」
「で?」
「55(ゴーゴー)証券は勢いがあって元気なイメージ。私世代もターゲット層でいい感じだよ」
「教えてもらったよね?ドラゴン討伐の話。初心者視点で見るとギルド依頼の銘柄の推しが強すぎるんだよね」
「投資信託が多いか……」
「そう、初心者や私みたいなZ世代は新NISAを使うでしょ。それだと積立投資が多いよね。そうすると……」
「ギルド依頼銘柄の投資信託を推してくると」
「投資初心者だと『プロが運用する安心投資』って聞くと心が動くよね」
「そこで俺の話を思い出したか」
「そう、証券会社の収益指向が強い気がしてやめた」
「それはユウの判断基準だからいいんじゃないか。投資信託がいいって言う人もいるからな」
「いろいろ考えてSTM証券にした。確かにここもポジショントークは多いけど、他社との差別化が多かっただけね。ただし、取扱銘柄MAXって書いてたけど一覧表が探しづらかったりと不満はあるけどね」
良く考えて判断したな。確かに成長してるぞ。
「さて、じゃあ俺の話をしようか」
「シショーの話聞きたい!どうしたの!」
「俺もSTM証券だな」
「じゃあ、私も大当たり!!」
「もう一度言っとくが、俺は投資初心者だからな」
「わかってるよ。でもシショーは初めて取り組む時はすごく慎重じゃん。でも初めてなのに尻込みしないじゃん。そこが凄いと思うから聞いてるんですぅー」
「はぁ〜、じゃあ話すけど参考までにな」
「わかったー!」
「俺はSTM証券にした。いくつか理由はあるが、俺の戦略・戦術上最も使いかってがよかったんだよ」
「?」
「俺の戦術は話してなかったな」
「うん、聞いてないよ」
じゃあ簡単に説明するな。
カクカクシカジカ
「なにそれ、ウケるー。面白すぎる。投資をゲームにするつもりなのー」
「ああ、そうだな」
「で、具体例的にはどうなの?」
「俺はユウと違って新NISAにはこだわらない」
「え?!」
「俺にとって投資はゲームなんだ。だからゲームに制限がかかる、新NISAにはこだわらない。特定口座にドルを入れて個別銘柄も買うぞ」
なんてぶっ飛んだ初心者なの?
おじさん(山田店長)が同じ話をすると怪しさマシマシだけど、シショーが話すと納得させられる。
さすがだ。
って思ってたら、最後にとんでもない爆弾が!
「そんなに沢山の調査、時間かかったでしょ」
「いやーそれがね」
それがどうした!なんか怪しい。
吐きなさい!吐くんだシショー!
***
『初めまして、パーソナルAIのジュニアと申します』
!?!?!?!?!?
なに?! シショーのスマホがしゃべった?!
『いつもお世話になっております』
……は?!
めっちゃ礼儀正しい!!かわいい!!!
「なにこれなにこれなにこれ!!?」
「何なのよー?!この子」
ふむふむ、スマホ用パーソナルAI?そんなアプリあったっけ?そもそも技術的に実現できてた?
どーでもいい、私もほしい!
「で、このジュニアに証券会社のWebを調べてもらってさ、助かったんだよー」
助かったんだよーじゃないよ、なんだそのズル!
「このアプリどこで手に入れたの?」
「それがだな」
ふんふん、シショーのノートパソコンのパーソナルAIが生み出してスマホ内に構築しただとぅーーー。
そんな、どこかのラノベのローファンタジーのような話が……。
「私も欲しい!この子欲しい!!」
「そうは言ってもなぁ……」
『このおねーさんはお友達でしょうか?』
「お友達だな」
「お友達!そう、お友達だよ!!」
『なら、大丈夫ですよ』
どゆこと?
『僕のスマホでおねーさんの顔写真を撮ってもらえますか?』
「そうか?じゃあ撮るな」
カシャ
『はい、これで大丈夫です。クラウドAIの支援ももらいますので、少々お待ちください』
何が起こってる?
何が起こるのよ?
『パンパカパーン! 今週のハイライト!』
そのフレーズ気に入ったのか?
『では、おねーさんのスマホを近づけて下さい。NFC-Xで接続しますね』
『ピロローン』
『はい終了しました。スマホの新しいアプリを立ち上げて下さい』
えっどれどれ?!これね。
「山田ユウ専用パーソナルAI ジュニアン」
『これで私のサブセットである「ジュニアン」が、おねーさんのスマホに構築されました。構築時に、おねーさんの写真データを元に公開鍵暗号を用いたセキュリティキーを生成しているため、利用できるのはおねーさん本人に限定されます』
顔写真を使って本人認証とロックをかけたのか。
さっそく、ジュニアンを起動だ!
『こんにちはージュニアンだよー。おねーさんよろしくねー』
「やったー、私のジュニアンだ!!シショーありがとーーーー!」
なにが起こってる?
『ジュニアンへのアクセス用のセキュリティにはお姉さんの画像データを元にして暗号鍵を作成しました。量子コンピュータでも解読に数百年かかるレベルの鍵長なので、ハッキングされることはないですよ!』
「……えっ、ジュニア何した?」
まさか、世界のなんとかをよこせとか言い出さないよな?
ともかく証券会社は決定だな。
後はWebから申し込んで、ユウの口座から振込みの手続きが済めば完了。
どんな戦略と戦術で銘柄を選ぶのかな?
楽しみだ。
次回 喜多と孤独と赤い三連敗
『たいへんだよー』
『緊急会議を要請します』
なんだ、どうした?
心臓に悪いことはやめてな。
ゆるいお話だからな。
……立つんだシショー
※この作品は【訳あり品】です。
正規品(?)はAmazon Kindleにて公開予定──かもしれません。




