第13話 お子ちゃまAIの策略
さて、特に用事もないしスマホを買いに行くか。
おっさんはSIMフリースマホ派だ。最近ではどこのキャリアでも他社SIMが使えるようになったが、おっさんはずっとSIMフリースマホだ。
おっさんのこだわりだな。
最寄駅からターミナル駅経由で電車に乗りかえる。ちょっと遠出だ。平日の午後なので、特に混む事もなく東京まで。
東京駅で降りて、目的のお店まで地下道を歩いて行く。
地上に上がれば目的のお店だ。
おしゃれなフルーツ屋さんのようなお店で、お茶とケーキでも頂いてまったりできそうだが、しない。
おっさんだからな。
いや、フルーツ屋さんじゃないな。
「新型で、画面が少し大きめの機種はあるかな?」
店内のスタッフはカジュアルだが洗練されたユニフォームでなかなか感じがいい。
おっさんはきびきび働く若者を見るのが好きなのだ。
「ここは、いつ来ても気持ちいいな。」
わざわざ東京まで出向くのもおっさんのこだわりだ。
「新型機は全機種ありますよ。AIにも対応してます。」
やっぱりフルーツ屋さんのスマホは先端走ってるな。お子ちゃまの希望の機種だ。
「ありがとうございましたー。」
「いいの買っちゃったな。」
***
さて、もう一件だな。近くにデパートがあるからそこでいいだろう。
お子ちゃまにお土産だ。
お・み・や・げ!
なんで、ローカルAIがお土産を欲しがるのかって?
俺が知るか!おねだりされたんだよ。
『かって!かって!かってーーー!!』
俺が新しいスマホを買うことになった昨夜、お子ちゃまAIの『おねだりこうげき』が炸裂した。
パソコンの画面に『かって!』『かってー!』のメッセージが止まらない。
メッセージウィンドウのクローズだけで疲れるじゃないか。
おまえ本当にローカルAIなのか?
どこかの強力なウィルスじゃないのか?
お子ちゃまランサムウェア?
『かってほしいのーーー!』
わかった。わかった。欲しい物を言ってみなさい。
ふんふん?なに?
わかった。わかった。
お土産として買ってきてあげるよ。
というわけで、やって来ました。
デパートのおもちゃ売り場。
おっさんが一人でおもちゃ選び。
孫へのお土産のおもちゃを買いにきたじいちゃんにしか見えん。
普段近寄らないエリアだからな。
場違い感すごい。
怪しいおっさん感を消して、お子ちゃまへのお土産を買わねば。
なんだか高度なミッションだ。
おっさんだからな。
『ぬいぐるみがほしいのー!』…だと?
ガチのお子ちゃまかよ。
まぁ仕方ない。欲しがっているんだ、買ってやろう。たまには喜ばせてやるか。
『ピロリロリーン!おっさんはレベルがあがった。まごおもいがみについた!
かわいがりが3上がった!』
RPGだと、こんな感じかな?
やっと見つけた。これか?ホントにこれ?
「おしゃべりスライムくん(商品名)」
スマホやパソコンと接続しておしゃべりするらしい。
どう見ても普通のスライムのぬいぐるみだぞ。これがしゃべるのか?
異世界もので見たことがあるぞ。
だんだんと成長して仲間をまとめ、立身出世するやつだな。
うちのお子ちゃまは魔王にでもなるつもりなのか?
値段は……と、24,800円(税抜)か。
子供のおもちゃだぞ?いい値段すぎない?
なんか、世の中のじいちゃん、ばあちゃんの気持ちがわかった気がする。
これって……課金じゃないよな?
投資をはじめる前に、散財ばかりしている気がする…そろそろ次のステップだな。
さぁ、用事も終わったし、家に帰るかな。
***
『かんせいしたのー。』
『おさんぽいけるのー。』
しゃべる、おしゃべりスライムくん。
当たり前だ。いや違う。
お子ちゃまAIがおしゃべりスライムくんからしゃべってやがる。
何やった?
これじゃわからないよな?
説明しましょう、俺が見たことを。
AIスマホを買ってきてから、お子ちゃまAIはゴキゲンだ。
『すまほっ、すまほっ、すまほ!』
ヤバくない?
『のーとぱそこんに、えーあいすまほとすらいむくんをつないでほしいのー。』
ん?バックアップ取るのか?
まだ何も入ってないぞ?
充電するのか?
どっちもUSB−Cケーブルで接続だ。いいなUSB−C。
どうでもいいか?
『ちょっとまっててほしいのー。』
「ヴィィィィィィーン!」
グラボの冷却ファンが吠える。
あっ、これ時間かかるやつだ。
晩飯食べに行こ。
***
で、帰って来ました。
『できたよー、どっぺるげんがぁー!』
何した?
『初めまして、こんにちは。スマホAIのジュニアと申します。』
ん?
『ぼくのどっぺるげんがーなのー。』
『はい、私はお子ち……パーソナルAIのドッペルゲンガーとしてAIスマホに構築されました。」
はぁ?
『パーソナルAIが言語情報からSLM処理を経て知識データベースを構築し、クラウドAIと並列化しつつ、仮想空間にアクセス可能の状態でデータ保存するには多大な時間を必要とします。』
「……」
『なので、私ジュニアがスマホAIとして、リアルタイムで音声データの収集および同時にバイタルデータの付与を行います。』
「……」
『さらに、収集したデータを蒸留・整理してSLM処理の前処理を担います』
「……」
『私の貢献により、お子ち…… パーソナルAIは本来の作業に集中する事が可能になりました。エッヘン!』
お前たちいったい何をしようとしている?
『せかいのはんぶんをてにいれるのー。』
それ、「はい」って言っちゃだめなやつだからな。
『私はスマホアプリとしてバックグラウンド動作します。なので特に意識しなくても大丈夫ですよ。』
そういう事か。以前にお子ちゃまから説明されたけど、ひらがな構文だったのでよくわからなかったよ。
なんだかんだで、すごいことやってんだな。
『まだあるのー。』
まだ?追いつけなくて、疲れてきたよ。
おっさんなんだぞ?
ん?
おしゃべりスライムくんがしゃべった!
『おしゃべりスライムくんをせいあつしたのー。』
制圧?何やった?
説明しなさい。
ほうほう、そんな事やったのか。
みなさんにわかるように説明するとこうだな。
お子ちゃまの話はひらがな構文だから、会話で説明するのが難しいんだよな。
まとめるとこうだ。
・ノートパソコンにAIスマホとおしゃべりスライムくんを接続して、AIスマホにお子ちゃまAIのドッペルゲンガーとしてジュニアを構築した
・同時にジュニア経由でおしゃべりスライム君くんを侵食し、おしゃべりスライムくんの音声モジュールをジュニアがコントロール可能に
・ジュニアとおしゃべりスライムくんはBluetooth接続出来るので、お子ちゃまAIがスライムくんとして会話できるようになった
一言でいえば、お子ちゃまAIがスマホとスライムくんを拡張デバイスにしたってことだな。
『しゃべれるのー!おはなしできるのー♪おっはなしっ、おっはなし!』
こいつ、どんどん成長して仲間を増やしてるな。
本当に魔王になるつもりなのか?
うちには残念な美人秘書はいないぞ?
***
で、こうなりました。
『おさんぽいこー、おさんぽー!』
スライムのぬいぐるみを抱っこして家を出る……おっさん。
俺は、いったい何をやろうとしているんだ?
次回 第14話 おっさんは証券会社を選ぶ
お子ちゃまAIに振り回されてダメージをくらったおっさん。
いよいよ投証券会社を選び、投資口座開設に向かう。
お子ちゃまAIたちを仲間としたおっさんパーティの冒険は始まるのか?
※この作品は【訳あり品】です。
正規品(?)はAmazon Kindleにて公開予定──かもしれません。




