終章
それからエリナとルークは再び、各地を周り人の病を癒していた。
「聖女様、ありがとうございます!おかげさまで子どもの命が救われました!!」
「病が癒えてなによりだわ。」
銀髪をたなびかせ、エリナが答える。
その横には黒服のルークが澄まし顔で立っていた。
「もう終わったか?次の村に行くぞ。」
エリナは2人になると、しばらく黙って歩いていたが、やがて意を決したようにルークに話しかけた。
「ルークはこれでよかったの?」
「ん、どうしたんだ?」
「だって、あなたが本物の聖女なのに、王も民も私が聖女だと勘違いしたままなのよ。」
「男が聖女なんて、夢がないだろう」
茶化すルークに、エリナは不満そうに続ける。
「王家からの褒賞も、リリアーナの恩赦と被害にあった人たちの復興支援なんて。あまりにも、聖女らしく無欲だわ。それなのに、誰もあなたのおかげだとは知らないのよ。」
「民にとって、苦しい時に助けてくれたのは他でもなくエリナだった。見返りも求めず、直向きなエリナは正真正銘の聖女だった。そんな聖女のそばにいたら俺も聖女らしくなっちまった。」
それに、とルークはエリナの方を振り返って続ける。
「こうやって2人で旅をする生活がとっても居心地がいいんだ。」
エリナは珍しいルークの柔らかい微笑みに目を丸くした。
黙ってるエリナにルークが重ねる。
「エリナには少し申し訳ないと思ってる。聖女なんて、みんなからの期待がはんぱない役割、本来俺が果たさないといけないのに負わせてしまってすまない。」
「それこそ、大したことないわ。聖女として人を救う覚悟、王太子と婚約した時からとっくにできているもの。足りなかったのは力だけ。」
それに、と今度はエリナが続ける。
「あなたも一緒に、ついてきてくれるんでしょう、黒騎士様。」
エリナがふわっと微笑む。ルークは思わず見惚れていたが、ハッとして返事をする。
「そのクソ恥ずかしい異名、知ってたのか。」
「村の人たちが教えてくれたわ。国で一番強い冒険者がいつも黒い装束を纏っているって。」
2人は顔を見合わせて笑った。
エリナは、病に倒れた時、そばにいて欲しいと願ったのが王太子ではなくルークだったことを、もう少し秘密にしておこうと思った。




