解毒薬の手がかり
翌朝、冷たい朝霧が村を覆う中、ルークは診療所の外で冒険者ギルドの伝令を待っていた。
村人たちは診療所に寄り添いながらも、エリナの無事を祈る以外にできることはないと悟っている。
「ルーク様、こちらに!」
少し離れた道から馬の蹄の音が聞こえ、冒険者ギルドの伝令が息を切らしながら駆け寄ってきた。
「ギルドからの報告です。リリアーナ様が王都の屋敷を急に離れたとの情報が入りました。それと――」
伝令は周囲を気にしながら、声を潜めて続けた。
「王家の方から提供された解毒薬の成分とされる材料が、リリアーナ様の家の一部から見つかりました。」
ルークの表情は険しくなった。
「つまり、あいつが持っている可能性が高いってことか。」
「ええ。ただ、それがどこに隠されているのかまでは……」
ルークは短く頷き、伝令を下がらせると、診療所の中に戻った。
エリナは窓から差し込む弱々しい朝日を見つめていた。
体調はまだ安定していないものの、その目には静かな意志が宿っている。ルークが入ってくると、彼女はゆっくりと振り返った。
「何か進展はあった?」
「ギルドが動いてる。リリアーナが動き出したらしい。」
ルークは簡潔に答えながら、エリナの枕元に腰を下ろした。
「動いた、ということは……?」
「どこかに隠してた解毒薬の材料を持ち出そうとしてる可能性がある。まだ確証はないが、追いかける価値はある。」
エリナは考え込むように眉を寄せた。
「解毒薬の材料があるということは、完成した薬も存在するかもしれない……」
「その通りだ。」
ルークは軽く頷いた。
「俺がその薬を奪いに行く。その間、お前はここで静かにしてろ。」
「……私も行く。」
ルークは即座に首を振った。
「無理だ。お前は体力を使えば使うほど危険だ。ここで待つんだ。」
エリナは反論しようとしたが、ルークの真剣な眼差しに言葉を飲み込んだ。
「分かった……でも、必ず戻ってきて。」
「約束だ。」
ルークは短く答え、診療所を後にした。
王都へ向かう道中、ルークの頭にはさまざまな思いが巡った。
リリアーナの行動、彼女の復讐の理由、エリナの命。すべてが絡み合い、彼の中に一つの確信が芽生えた。
「リリアーナ、お前が隠しているものを、俺が必ず奪ってみせる。」
冷たい風が吹き抜ける中、ルークの姿は次第に霧に溶け込んでいった。
その頃、王都の一角にある廃れた倉庫では、リリアーナがギラギラした目で箱を運んでいた。
箱の中には、暗く輝く液体が入った小瓶がいくつも収められている。その表情には恐怖と決意が交錯していた。
「これが私の切り札……誰にも邪魔させない。」




