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エリナの容体

夜空に星が瞬き、冷たい風が吹き抜ける中、ルークは村の診療所にたどり着いた。

建物の前には数人の村人が集まり、不安げに話し合っている。ルークが馬を降りると、彼らは振り返り、ほっとしたような表情を浮かべた。


「エリナは……」

ルークが問いかけると一人の中年女性が口を開く。


「まだご存命です。ですが、どうか急いで……」


ルークは黙って頷き、診療所の扉を開けた。

中には微かな薬草の香りと、かすかに響くエリナの荒い息遣いが漂っていた。ベッドの上に横たわる彼女は、額に汗を滲ませながらも、どこか穏やかな表情を浮かべている。


「ルーク……帰ってきたのね。」

弱々しい声が彼を迎えた。


「約束しただろう。必ず戻るって。」

ルークはそっとエリナの枕元に座り、彼女の手を軽く握った。


王都でのルークの動きは慎重かつ大胆だった。

リリアーナとの対峙の後、彼女の意図的な行動を示す証拠を冒険者ギルドに託し、さらなる調査を依頼していた。また、ギルド内の人脈を活用し、リリアーナが研究したとみられる解毒薬の成分についての情報を収集。さらに、密かに動いている王家の内情にも触れるべく、信頼できる仲間を通じて王宮内部に目を光らせていた。


そして最も重要な手は、アルベルト王太子との再謁見だった。

彼に希望を託し、「王家としてエリナを見捨てるわけにはいかない」と行動を促したのだ。アルベルトは即答を避けたが、ルークの執念が彼を動かしたことは間違いなかった。


「王家としての名誉が懸かっている。聖女の存在は民の希望だ。それに、一回ぐらい、自分の好きなやつを助けたらどうだ?なんのために王太子やってんだ。」

そう告げて去った後、王太子の中に芽生えた動揺が、事態を動かす鍵になることを信じていた。


エリナは疲れた目を開き、ルークを見つめた。

「秘薬は、なかったのね...?」


ルークは静かに息をつき、手短に話し始めた。

「いくつかの手を打った。ギルドにはリリアーナの動きを調べさせてる。それから、王家に動いてもらうように仕向けた。少なくともアルベルトは動くだろう。」


「アルベルトが……動く?」

エリナの目が微かに驚きで揺れた。


「動かないわけにはいかないさ。聖女のお前が命をかけて聖女をしている限りな。」


エリナは微かに笑みを浮かべたが、すぐに真剣な表情に戻った。

「リリアーナの計画はもしかしたらもっと壮大なものかもしれないわ、そんな予感が止まらないの……」


「分かってる。」

ルークは短く言い、椅子に深く腰掛けた。

「今は待つしかない。俺たちができることは全部やった。」


外では村人たちが静かに祈りを捧げていた。

エリナの元気な姿を再び見ることができるように、そして彼女が再び聖女として村を救ってくれるようにと願いを込めて。


ルークは窓の外に目をやりながら、エリナの手をもう一度軽く握り締めた。

「これ以上、リリアーナや民を案じるな。お前は必ず治る。俺がそのために、何だってやってやる。」


彼の言葉に、エリナは小さく頷いた。今は、ただ静かにその時を待つしかなかった。

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