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一刻でも早く

ルークは廊下を急ぎながら、頭の中でリリアーナの言葉を反芻していた。

魔物憑きの触媒が幼い子供の遺品だという話。解毒薬がその犠牲の上に成り立っているという事実。そして、リリアーナの怒りと悲しみ。


彼女の言葉の裏にある真実が、ただの悪意や権力欲だけではないことは理解できた。しかし、それでも――。


「だからって、許されると思うなよ。」

ルークは低く呟き、外の冷たい風を顔に受ける。


エリナのいる村に戻るべきか、別の方法を探すべきか――。

彼の脳裏には、倒れたエリナの姿が浮かんでいた。彼女が見せた微笑み、必ず戻ってくると約束した時の瞳。


「待ってろよ、エリナ。」


そう決意し、彼は馬を手配するために冒険者ギルドへ向かった。


★★

一方、リリアーナは部屋の中で独り、震える手を握りしめていた。

彼女の中でくすぶる怒りと苦しみが、静かな火種となって胸を焼き尽くしていく。


「エリナ……。」

その名前を口にするたびに、感情がぐらつく。


「どうして……どうしてあの女ばかりが称えられ、気にかけられるの? 私の方が、この国のために動いているというのに。」


自分の行動の正当性を信じたかった。復讐も、計画も、すべては自分の正義のためだったはずだ。しかし、ルークの目に浮かんだ怒りと軽蔑が、胸を刺すように痛む。


「いいわ、ルーク。あなたがどれだけ足掻こうと、私の計画は止まらない。」


彼女は机の引き出しを開け、そこから一冊の古びた書物を取り出した。それは、魔物憑きの研究が記された禁書だった。


「最終段階に入る時が来たようね。」


★★

ルークは冒険者ギルドで、あの情報屋に声をかけていた。

「魔物憑きの解毒薬の材料について調べられるだけ調べろ。子供の遺品が関係していると聞いた。」


情報屋は驚いた表情を見せたが、深くは問いたださなかった。


「分かった。だが、それには少し時間がかかる。」

「急いでくれ。一刻でも早い方がいい。結果は分かり次第、ここに届けてくれ。」


情報屋にメモを渡した後、ルークは一瞬考え込み、続けた。

「それと、リリアーナの動向を引き続き探れ。彼女はまだ隠していることがある。」


情報屋は短く頷き、素早く動き出す。


時間がない――エリナの命を救うための猶予は限られている。

その思いがルークの胸を焦らせたが、同時に冷静な判断を失わないよう自らを律する。


「リリアーナが何をしようとしているか、全て暴いてやる。それがエリナの願いと希望に繋がるはずだ」

そう誓い、ルークはエリナの元へ向かうのだった。

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