最強の元ひきこもり
十月三十日午後三時。
雲ひとつ見当たらない青空の下を俺たちは車で走っていた。
川中を救出して二日。
あれから一人も欠けることなく俺たちは外の世界でしぶとく生存していた。
早く新たな拠点を見つけて落ち着きたいところだが、フィールドワークもこれはこれで勉強になる。
外での食料の確保がこれほど難しいなんて部屋にひきこもっていたら気づかなかったことだ。今やコンビニなどは大抵荒らされていて、まともな食料はほとんど残っていない。
つい先日、スーパーでゾンビ共と死闘を繰り広げながら食料を確保した時は小躍りしたものだ。食料の確保ひとつでこの騒ぎなのだから、今後も受難の日々が続くことだろう。
だが、どうにかなるさ。
いつか百瀬先生が言っていた通りだ。
俺は……俺たちはまだ生きている。それが肝心だ。
生きている限りはどうにでもなる。
いよいよどうにもならなくなったら、それが死ぬべき時なのだろう。その時が来るまではせいぜい足掻いてやるさ。
さて、ここまで辛抱強く付き合ってくれた読者諸賢には悲しいお知らせだが、そろそろお別れの時間だ。
何せ明日をも知れぬ身になってしまったからな。落ち着いて記録をつけている余裕はないんだ。
まずは謝罪させてほしい。大して役に立たない記録になってしまってすまない。
言い訳をさせてもらうと、こんなはずじゃなかった。
五年もかけて築き上げた王国の城がたったの一週間で崩壊するなんて予想できるかよ。
このゾンビ専門家である黒沢誠也の目を持ってしても読めなかった。
原因が俺にあるとはいえ、不運に不運が重なってしまったのだ。
いや、専門家ならあらゆる事態を想定しておくべきだったな。
俺も一から出直しだ。本来なら今頃は自分の部屋で優雅にプロテインでも飲みながら記録を続けていたはずなんだがな。ままならないものだ。
だが、約束しよう。
俺は必ずこの記録を再開してみせる。王国の再興を俺はまだ諦めてはいない。
まだまだ手つかずの堅牢な建物はたくさん残っているはずだ。
新しい城を見つけたら安全を確保して生活の基盤を整えたい。
そうすれば記録を再開できる。
その後はどうするのかって?
もちろん籠城するさ。
俺はひきこもりだからな。




