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もののけの2 ここは廃墟・・・え?会社?!

彼女は運転に慣れていないのか、それはそれはもう見事なまでにガッチガチで運転している。そんな彼女を見て一抹の不安を感じ声をかけようか、かけまいか悩みながらも、特に何も話すことなく、車は15分ほど走り林道を抜け、人里離れた山の中にたどり着いた。


「ここから少しだけ歩きますね」


駐車場に車を停め、逃げられないようにする為なのか、彼女は俺の手を引いて歩く。昼間でも薄暗い感じがして、一人では絶対に来られないであろう所だ。今は彼女と一緒だからある程度は気丈に振る舞えてはいるが、内心は大きな恐怖心と不安しかない、、、

獣道のようなところを5分程歩くと、ダムがあるところへと出た。その上に架けられた大きな橋を渡り、更に先にあるトンネルを抜けたところにその建物はあった。


「着きました!ようこそわが社へ!!」


廃墟ビルの前で彼女は満面の笑みを浮かべてこちらへ向かってそう言った。


「え??これ廃墟...え?わが社?それにこの場所は…」


手を引かれ連れて行かれたその場所を俺は知っていた。

その昔、製薬会社だったそうだが悪い噂しかなく、薬を開発するにあたって動物を使った色んな実験が行われていたとか、はたまた人間を使った実験も行われてたとか、、、。

今だに時々ここに連れて来られて消息を絶ってる人も居るとが居ないとか、そんな噂が渦巻いている、今ではXtubeという動画サイトで話題の心霊スポットとして名高い場所だった。


冷や汗が吹き出ると同時に心臓の鼓動が高鳴る!


『やばい!!このままじゃ人体実験されて、事が済んだら埋められて、、、いや、ダムに沈められるのかも!!』

心の中でそう考えていると


「さっきも言いましたけど、そんなことはありませんので、大丈夫ですよ」


?!


やっぱり、思っていることが伝わっている?!

いくら優しく声を掛けられたところで、怖いものは怖いし、信用する事も出来ない。


「さぁさぁ、行きますよ」


彼女は笑顔のままで俺の手を引いて建物の中へと向かう。それとさっきから気になっていたが、手を引く力が凄い。いくら俺が陰キャとはいえ、一応男だ。手を引き離すぐらいは出来るはずなのに、ビクともしない、、、

しかも、こんな所を物怖じせずに笑顔で突き進んで行く彼女に対しても、普通じゃないという感覚を覚え、だんだんと恐怖心を抱き始めた。というか、むしろ恐怖でしかない。


《ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!》


心臓の鼓動が更に高鳴る。自分の中で命の危険が迫っている恐怖と、この場所が醸し出す得体の知れない恐怖がピークに達したと同時に視界が歪んできた、、、


とてつもなくまぶしい光に襲われ思わず目を閉じる・・・

やがて光が収まったように感じながら目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた...



そこは立派な会社のロビーのようだった。受付と思われる壁には会社名だろうか、大きな金の立体ロゴであしらわれた


【妖精商会(Fairy & Co.)】


という文字が見て取れた。


「妖・・精・・商会??」


不思議な気持ちで壁に書かれているロゴを読み上げていると


「そうです!妖精商会ようせいしょうかいです!」


元気よく彼女が答え・・・!!??


「えっ?」


俺の手を掴んでいたはずの彼女の手が、いつのまにかふわふわとした毛だらけの手になっていた。恐る恐る顔を上げその姿を確認すると、ウサギのような長い耳をした全身毛だらけの生き物だった・・・


「ウワアァァァーーーーーーー!!!」


思わず大声で叫んでしまった。


「きゃっ!!」


その声に驚いたのか、俺の手を掴んでいたその生き物の手が離れた。

俺は一瞬のスキを突きその建物から逃げ出し無我夢中で元来た道を駆け出した。


「待って!待ってください!!」


後ろから俺を呼び止める声が聞こえる。明らかにさきほどの彼女、佐鳥美咲の声であるが見た目は違う。

振り返ることなく俺は走り続けた。


時間にしてそんなには経ってないだろう、しかし恐怖で時間が長く感じる。


「早く!早く逃げなきゃ!!」


トンネルをくぐり抜ける為に走り続ける。


「・・・・・?!長い!!出口がない?!」


来た時よりも明らかにトンネルの距離が伸びていた。暗闇の中をひたすら走ってもなかなか出口にたどり着けず、息も上がり限界が近づいていた。


『ハァハァ・・・ダメだ・・・。もう走れない・・・』


そう思っているとうっすらと明かりが見えてきた。


「・・?!出口だ!!」


最後の力を振り絞りトンネルの出口にたどり着くことが出来た。

後ろを振り返る余裕はなく、そのまま橋を渡り車を停めた付近まで来ると1台のスクーターがやってきて駐車場のところに停まった。


「ハァ・・ハァ・・た、助かった」


助けを求めるためにバイクに近づき声を掛けようとしたまさにその時

ヘルメットを脱いで振り向いたその姿をみて愕然とした・・・


それは、


豚の顔をした人型の生き物だった・・・・


「あれー?さっきのおにいさんだねー。どうしたのー?」


間延びしたように俺に話しかけてくるが、気持ち的にはそれどころではない。

俺は必至に来た道を戻るように無言で再び走り始めた。


「ちょっとちょっとー、ぬーがや?佐鳥さんやいびーが?」


彼女の名前を言っているところは聞き取れるが、何を言っているのかわからない。いや、そもそも今の俺にはそんな余裕がない。さっき全力で走ったせいか、足がもつれる…


「あっ!!」


案の定、俺は激しく転んでしまった。幸いケガは無いようだが、腰が抜けているのか、なかなか立ちあがることができなかった。逃げようと必死にもがいているところにさっきの化け物が近付いてきた。


ガサッ!ガサッ!


足音がどんどん近くなり、間近まで迫ってきた。

相手との距離を測るために恐る恐る振り返ると・・・


化け物はしゃがみ込むようにこちらを見ていた...

そしてこうつぶやいた...


「にーにー、だいじょうぶやみ?かたかしーねー?」

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