もののけの1 序章?
「ひぃぃぃっー!!」
俺は目の前に広がっている信じられない光景に腰を抜かしてしまった。
異形のそれはじりじりと距離を詰めてくる。
『&#*./@%?!』
口を開けて何か叫んでいるようにも見えるが、何を言っているのか聞き取れない。
「なんで、なんでこんなことに…だ、誰か助け…」
逃げようとするが一気に距離を詰められ異形のそれに肩を掴まれる!!
「あああぁぁぁーーーーー!!」
最後の力を振り絞りその手を振り払ったと思った瞬間…
バシャーン!!
「もう…ダメだ……」
俺はそのまま意識を失った...
・・・
・・・・
・・・・・
聞き覚えのあるメロディーが流れてくる...
《トンボのめがねは 水いろめがね 青いおそらをとんだから とんだから…… 》
・・・・・さかのぼること数時間前
小野太陽は、昔から幼い頃から幽霊や妖怪などのいわゆる「この世の物ではないモノ」が視えるという特異な能力を持っていた。幼い頃からその能力のせいで、怖がりで臆病な性格になり常に影響を受けてきた。友達からは「お化け少年」「太陽なのに発電力が低い」「絶叫マシン、太陽・オブ・テラー」などとからかわれ、家族からも心配される幼少期を送っていた。
そんな彼が社会人になり、普通の会社で働くことになったのは奇跡に近かった。
しかし、太陽の怖がりな性格と「この世の物ではないモノ」が視える能力は、仕事においても災いをもたらした。
ある日の朝、オフィスのエレベーターに乗り込んだ。ドアが閉まる寸前、ふと視線を感じて振り返ると、そこには白い服を着た女性の霊が立っていた。驚いた俺は思わず声を上げ、エレベーターのボタンを連打してしまった。
「おい、小野!何やってるんだ!」同僚が怒鳴り声を上げた。
「す、すみません…」顔を真っ赤にして謝ったが、心臓はまだバクバクと音を立てていた。
その日も、仕事中に何度も霊の存在を感じ、集中力を欠いた。重要な書類を紛失し、クライアントとの電話会議で言葉を詰まらせ、上司の指示を聞き逃すなど、ミスが続いた。
「小野君、ちょっと来てくれ」上司からの呼び出しだ。
「はい…」
重い足取りで上司のデスクに向かった。
「君の最近のパフォーマンスについて話がある。正直に言って、君のミスが続いていることは会社にとって大きな問題だ。何か理由があるのか?」
正直言葉に詰まった。どう説明すればいいのか分からなかった。霊が視えるなんて言ったら、ますます信じてもらえないだろう。
「すみません…ただ、少し疲れているだけです」
「そうか。でも、試用期間中にここまでミスを積み重ねられると我々としてもさすがにこれ以上は難しい。申し訳ないが、今日で君を解雇することに話がまとまった。理不尽だとは思うだろうがそこはいい大人なんだから分かるな?あと、社員寮も近日中に引き払ってくれたまえよ。」
頭を下げ、デスクに戻って荷物をまとめた。心の中では、いつかはこうなるとは思っていたが、これで終わりではないと感じていた。
いや、ただ単にそう思いたかっただけなのかもしれない。
「とりあえず仕事と住むところを探さないとだな・・」
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実家に帰るわけにもいかず途方に暮れながら大通りに目をやると、ふと街頭アンケートが目に入った。アンケートを求めているその女性の年齢は同じくらいか...ふわふわとした巻き髪のような髪の毛は一つに束ねられていて、まさにこれぞポニーテールって感じだ。しかもスタイルが良くて顔もカワイイ。
男どもは立ち止まり我先にとアンケートに答えてちょっとした列をなしている。
その横では彼女の同僚だろうか、小太りでメガネをかけた男の人が汗を流しながら色々な人に声をかけている。
さすがにこっちは誰にも相手にされてない。
俺はふたたび女の子の方に目をやった。
「あんな子と仲良くなれたら人生楽しいだろうな…」
そんなことをつぶやきながらも、俺は知らず知らずのうちに見つめていたようで、こちらの視線に気付いた彼女が会釈をしてくる。
・・・?!
気付いたときには目が合っていた………
女性に対する耐性がほとんどないので、かなり焦ってしまったが、さすがに無視するわけにはいかないので、戸惑いながらも俺は彼女の元へと向かった。
「こんにちは!」
笑顔で挨拶をしてくれる彼女。
近くで見るとさらにかわいい。
「ふふ、ありがとうございます。簡単なアンケートにお答えいただいてもよろしいでしょうか?」
ん?思ってることを無意識に口にしていたのかな・・・?
そんな俺の思いをよそに何事もなかったかのように彼女はバインダーを渡してくる。
普段はこの手のアンケートは断るようにしているのだが、今日は何かをしていたいという気持ちもあり、アンケートに答えることにした。
「こちらをご覧になっていただけますか?」
ポニーテール女子から渡されたバインダーに目を通す。1枚のプリントが挟んであった。
「なになに、見える色の所に丸印をつけてください、、、か。」
色覚検査のようなものなのか、色の付いた四角がいくつも並んでおり、その横に丸印を付けてチェックする形式になっている。
俺は丁寧に確認し、一つ一つに丸印を付けていく。ていうか全部普通に見えてるんだけど。これが一体何のアンケートになるんだろうか、、、あれ?
俺は一番下の隅に今まで見たことがないような色の四角があるのを見つけた。
なんだろ?この色??見たことがない色だな。不思議な、、、なんだろ虹色っぽい、、、
でもまぁ、
「「白色って200色あんねん」」
って誰かが言ってたのを聞いた事があるし、普段見たことがない色があっても不思議ではないか。
丸印を付けるところもないし、単なるミスプリントだろう。
そう考えた俺は、とりあえず一通りチェックを終え、早速結果を渡すことにした。
ポニーテール女子にバインダーを返却しようと近づくが、相変わらず男どもが列をなして群がっている。かくいう俺もその一人なのだが、、、
「すみません、、、」
声を掛けるも届かない。。。
「あのー、すみません」
再度声を掛けるも列に並んでいる他の野郎どもは一斉にこちらをにらみつけ、
《貴様は黙ってろ!!》
と言わんばかりの視線の集中砲火を浴びる。
「うっ、、、」
悲しいかな。陰キャの俺はその視線に耐えられる度胸も、そこからさらに声を掛けに行く勇気もない。
仕方がないので、バインダーを台の上に置いて帰ることにした。
「ここに置いておきます、、、」
消え入りそうな声でつぶやくとポニーテール女子がこちらに気付いて申し訳なさそうな顔をして会釈をしてくれた。
まぁ、ほんの少しの時間とはいえ、あんなかわいい女の子と関われたことは非常にラッキーだったな、と前向きな気持ちに切り替え、俺は家路に着くことにした、、、あ、そうだ。一応ミスプリントのことも伝えないとな。
そう考えた俺はさっきの台の所へ戻り、
「さっき回答したプリント、ミスプリントなのか、一番下の隅っこにも色がついてましたよ。」
バンッ!!
俺のその言葉を聞いた彼女は手に持っているバインダーを地面に落とした。小太りメガネの人も、こっちを見ながら目を見開いて固まっている。そして、、、
「ちょっと待ってください!帰らないで!!」
慌てた様子でポニーテール女子が俺を呼び止める。そしてアンケートをしている他の野郎どもに向かって
「すみません!!まことに勝手ながら本日のアンケートはこれで終了とさせていただきます!!」
大声でそう言いうと、群がっている男どもを散り散りにし、ポニーテール女子がこちらへズンズンと近寄ってくる。
「とりあえず私に着いてきてください!!詳しくは着いた先でお話をしますので!!」
「あ!私は佐鳥美咲と言います。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「・・・・・・・はっ!ごめんなさい。俺の名前は小野太陽です」
勢いに戸惑って少し間が空いてしまったが、お互いに軽く自己紹介を済ませた。
「太陽さんですね!すごく素敵な名前です!!さぁ、行きましょう!!」
慌てた様子でそう言うと彼女は俺の手をとって歩き始めた。
「えっ?えっ??」
どうやら俺に拒否権はないらしい、、、一体どこへ向かうのか、新手の詐欺?それとも別の何か?
騙されたりしなければいいんだけど、、、
色々と考えを張り巡らせていると
「大丈夫です!そんな騙しとか一切ないので!」
なんで思ってることが伝わってるんだ??
そう考える暇もほとんどなく、
「ワンさん!あとお願いしますね!!さぁ、乗ってください。」
彼女は小太りメガネの人にそう伝えると俺を無理やり車に押し込み車を走らせた。
読んでいただきありがとうございます。
なにぶん、執筆は初めてなものでお見苦しい点が多々あるとは思いますが
この作品を読んで少しでも、楽しく、温かい気持ちになっていただければ幸いです。
ご意見等、ありましたら何なりとお申し付けください!
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今後ともよろしくお願いします。