第86話「悪役令嬢ト潜入」
「何教、じゃと?」
「デコトラ教団、そう名乗っておりましたな」
話を聞いていた子爵の息子クリスティアンはレイハの質問に答えてくれるけど、あーあー聞こえなーい。
「ごめん、何教、って?」
「デコトラ教団、そう名乗っておりましたな」
リアの質問にも律儀に答えてくれてるけどわざとだろ、それ以上デコトラ教団を推すな。
何なんだよこの世界は、古代デコトラ文明とか、デコトラ教団とか、デコトラを何だと思ってるんだ。
「何なんだよそのふざけた教団の名前は」
「お主がそれを言うな、自分でデコトライダーと名乗っておいて」
「俺様の場合は良いだろ!」
最近俺様がデコトラの姿になってる事が少なすぎるから、アイデンティティの危機ですらあるんだよ、せめて名乗らせろよと。
「お主が名乗ったからこういう輩が寄ってくるのではないか?」
「デコトラはデコトラを呼ぶのかもねぇ」
しかし女性陣二人のコメントは容赦無い、酷い。
何故かクリスティアンが俺様の肩をポンと叩いて慰めてくれた。くそうこいつ顔と同じく行動までイケメンだなおい。
「あー、まぁこの国はデコトラに関する事柄がそれなりに知られておりますからな、憧れを持ちやすいのでしょう。
貴公の鎧がデコトラを模しているのもそういった流れなのであろう?」
「……」
俺様は正真正銘のデコトラなんだから、このデコトラを模した鎧姿は何の問題も無いはずなのだ。はずなのだが、これ以上ややこしい事にはなりたくないので黙っておこう。
「デコトラに対してそのような意識があるというのか?1000年以上前の代物じゃぞ?」
「この国では先ほども言ったように、デコトラ文明の遺産を解析した技術が多数使われている。
ならば過去の偉大なる存在を崇め、復活させたいと願う者たちも出てくるだろう」
おーい俺様より過去に送られた同胞たち、なんか後の方の歴史で色々おかしな事になってるぞー。
俺様は平穏無事に暮らしたいと思っているのに、過去の方からそういうのがやってくるというのはどういう事なんだ。
「ふむ……、少し確認させてもらうぞ?」
レイハは何かを思いついたようで、懐から取り出したものをクリスティアンに近づけた。
あれか、闇の魔力が封じられているという勾玉だっけ?それはクリスティアンの顔に近づくとほんの僅か反応を示した。
という事はこの一件、闇の魔力が関わっているって事になるのか。
「な、なんだこれは」
「やはり反応があったか。なに、お主のような者に対して調べる為の物じゃよ。
これで完全にウチも見て見ぬふりはできなくなった。魔王薬が関わっておるようじゃしな」
レイハの旅の目的が闇の魔力というのは知っていたが、他にも魔王薬についても何らかの目的があったらしい、つくづく秘密が多いな。
「一体、どうするつもりなのだ」
闇の魔力が関わってると知ったレイハの表情があまりに物騒なので、子爵が不安そうに聞いてくる。
まぁわけのわからない事ばかりだもんなぁ。不安に思うのも仕方ない。
「この国の貴族連中にも同様の者がおるのかも知れんのじゃろう?根絶やしにしないと碌なことにならぬぞ」
「ね、根絶やしとは穏やかではないな。いやしかし私の息子だけではないというなら、それこそこのまま放置するわけにもいかぬか」
レイハの極論に親子は少し顔を引きつらせているが、事が国の上層部に及んでいる可能性がある以上無視もできないのはレイハと同様だ。
国を支配する層が入れ替わるなど、この国がどうなるかわかったものではない。
「ふむ、ではどこか貴族が多数集まりそうな所に心当たりは無いか」
後日、俺様達はとある貴族のタウンハウスで開催された仮面舞踏会に出席していた。
もちろんフィッシャー子爵の紹介によるものだ。
身分を隠しつつ、できるだけ多くの貴族を確認したいという事で潜り込んだのだ。
リアは本来参加できる年齢ではないが、俺様が仮面になって顔を隠しているのと大人びたドレスを着てごまかしていた。
レイハは見た目的に参加は問題ないがリアのドレスを着られる体格ではない、しかしどこからか東方風のドレスを調達してきていた。
この辺では見ない形式の和風ドレスで、仮面は女性の能面で口元が見えるものを着用しているので目立ちまくっている。
これならリアが目立たなくて安全だろう。
「むぅ、私が目立たないんだけどー」
いや目立っちゃダメだからね?
次回、第87話「悪役令嬢ト侵入者」
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