第109話「悪役令嬢ト神々之戦イ」
「ちょっとー!あーしらやる事無いなぁと見てたけど、なんかとんでもない事始まったんですけどー!? ヾ(°ω。ヽ≡ノ°ω。)ノ゛」
フォルトゥナが驚くのも無理はない、眼の前で黒いデコトラ『スサノオ』は周辺のコピーデコトラを吸収して人の形に巨大化したのだ、その全高は100mに達するのではないかとも思える。
真っ黒な古代の戦士風の金属鎧に包まれた人型、腕は6本、長い黒髪が背中を覆わんばかりに伸びている。手足は太く、全身全てが鉄で出来ていた。
そして、ここが重要なのだが、デコトラを素材にしたせいか、全身にデコトラのような装飾がてんこ盛りになっていて、神々しさというにはちょっと違う絢爛豪華さだ。
その全身から放たれる威圧感と圧力はすさまじく、周囲の空間が歪んですらいる。
【ご案内します。繰り返しますがあれはもはやデコトラではありません。デコトラの中で神格として眠っていた存在が実体化した、限りなく神に近い存在です】
「というか、ウチの国の神じゃぞあれは、長らく封じられておったが、その本質は荒ぶる暴風神じゃ、まともな戦いにはならん」
「おいおいおいおい、とんでもない事になるにしても程が無くないか?」
「遺書を書いておくべきですかねぇ」
この状況に対して、今まで黙ってた面々が声を上げていたが無理もないな、俺様もさっさと回れ右して逃げたいくらいだ。
「おいリア、こいつはどう考えてもまずい、一旦逃げるぞ」
「ダメ、逃げない、今こいつを放置したらどう考えても大変な事になる」
「だからってあんなの相手は無理だろ!相手が大きすぎる上に神様みたいなもんだぞ!」
「みたいな、でしょ? 【ガイドさん】!ヴォーパルソード!」
【了解いたしました。『武装:ヴォーパルソード』顕現率100%にて起動、抜剣します】
ガイドさんの声と共に、車体の前に巨大な剣が出現した、長さは2~30mは無いか?今の俺様は巨大な腕になっているのでそれを苦も無く握る。
「完全な神じゃないっていうなら、これなら殺せる! かも!」
リアはアクセルを踏んで巨大神の懐に飛び込んだ、相手は巨大なだけに剣を降るだけで当たりそうだ。リアがハンドルを回すと剣が振られ逆袈裟に切り上げる。
だが相手も黙っては斬られない。6本腕は手に何も持っていないはずだったのに、瞬時に古代の剣が出現して俺様の持つ剣と斬り結ぶ形となった。
鍔迫り合いになって拮抗した状態に、とか悠長な事は言っていられなかった。他の5本の剣が俺様を襲ってきたのだ。
「えい」
リアはハンドルを思い切りブン回して俺様の車体ごと剣を円盤のように回転させてその剣を迎え討った。
ガギギギギギィという音と共に剣がぶつかり合う。相手は身体があるけど俺様の方は腕だけだからな。当たり判定の面積が全く違う。
これならいけるか?と思ったが甘かった。相手は腕に持つ6本の剣だけではなく、周辺の空間に無数の剣を作り出してきた。ちょっと待て100本はあるぞこれ。
「これは……、ちょっと無理かなぁ?」
「あ、さすがのリアさんも現実が見えた」
「ボケっとしとる場合か! 『神威招聘:フツノミタマ』! 『神威招聘:フツヌシ』!」
レイハが叫ぶと、2本の巨大な神剣が出現した、加勢してくれるのか!
神剣は空中を飛ぶと巨大な神に直接斬りかかる。だがその斬撃は周辺に集まって来た敵の剣に阻まれる。だがおかげでこちらは若干手薄になった!
「三重招聘は経験が無いが、お相手が『スサノオ』様ゆえご助力の程を!『神威招聘:タケミカヅチ』!」
レイハも必死なのだろう、額に脂汗を流しながら神々に呼びかけていた。
呼びかけに応えたのは、いつか見た事のある『スサノオ』にも似た姿の古代の戦神だった。
『タケミカヅチ』は『スサノオ』を睨みつけるように対峙し、その名の通り雷を纏わせた拳で殴りかかる。
『スサノオ』も手に持った剣で斬りかかるが、その攻撃は互いに反発しあい相手に届く事は無かった。
そのまま2柱の神々は殴り合いを始め、俺様達はその側で剣を必死で振り払うというかなりカオスな状態になった。
「まずいな、一見互角に見えておるが、”受肉”しておる『スサノオ』と違い、ウチが呼び出したのは神格に過ぎぬ。この世で行使できる能力に限界があり過ぎる」
レイハが何を言っているかはよくわからないが、とにかく不利なのは理解できる。せっかくの加勢だけど楽観できないようだ。
リアは必死にハンドルさばきで剣をいなしているが、いつまでも耐えきれるとは思えない。
おいおい、こんなのもう人の領分超えてないか?
【ご案内します。ジャバウォック様の思われている通り、もはや人の領域の戦いではなくなっております】
「【ガイドさん】、正直こんな状況俺様達の手に余るんだけど!?もうデコトラどうのの話じゃないだろ!」
「ウチも同感じゃ、兄上がきっかけとはいえ、このような形でウチの信仰する神とは戦いたくはないのじゃが」
【ご案内します。いえ、むしろよくここまで持ちこたえ、今この時この場に『スサノオ』をこの世に引きずりだしてくれました、これで現状は神々の戦いと識別され、この世界に干渉する権限を大幅に取得する事ができます】
俺様は混乱した、さっきから【ガイドさん】が何を言っているのかまったくわからない。先程は俺様の質問に応えてくれなかったのに今度は権限がどうたら言い出した。
【ご案内します。レイハ様、『アマテラス』を呼び出して下さい】
「はぁ!?よ、四重じゃと!?ちょっと待て、さすがのウチもそれは無理じゃ、死んでしまうやもしれぬ」
レイハはこないだ二重の召喚すら経験が無いと言ってたもんな、何だかんだで実際の年齢を超えて数歳ほど年を取ってしまったし、その倍ともなると死んでしまうと危惧するのも無理はない。
【ご案内します。現状”彼ら”は自分の意志でこちらに顕現しております。レイハ様の呼びかけはきっかけに過ぎませんので、負担はかなり抑えられております、問題ありませんので呼びかけて下さい】
淡々とした口調でそう告げられても、【ガイドさん】が一体何を考えているのかがわからない。
「ガイドさん、一体何をさせようって言うんだ。さっき呼び出してもらった神様も、よくわからないけど実体が無いようなもんなんだろ?仮に呼び出したとしても勝てるかどうかわからないんじゃないか?」
【ご案内します。デコトラコアにはデコトラコアです、『神格:アマテラス』をデコトラコアとし、あちらと同様に受肉させます】
「ちょっと待て!何を罰当たりな!そんな事が許されるわけがないじゃろう!」
【ガイドさん】の作戦? にレイハが食ってかかった。罰当たりというのはよくわかる理屈だが、俺様には他にも気になる事があった。
「なぁ【ガイドさん】、あっちは同じような事をしたら主が、多分皇帝が主なんだよな?そいつが主導権奪われて暴走したように見えるぞ?こっちも同じ事にならないか?」
【ご案内します。確かに現状、フォルトゥナ様とのツインコアドライブ程度では同じような事になるでしょう。お二人では対象との格が違いすぎます】
「だったら」
【ご案内します。ですので、『スサノオ』と同等のコアをまず生成いたします】
「えっ?(੭ ᐕ)?」
「えっ」
「ねー! 何をごちゃごちゃ言ってるの! そろそろ限界なんだけどー!」
この答えには俺もフォルトゥナも思わず間抜けな声を出してしまった。なお、リアはいっぱいいっぱいなようだ。
【ご案内します。コアとなるのは私です、この時、この状況になりようやく私の権限が開放されました】
「おい、【ガイドさん】、お主、何者じゃ?」
レイハの疑問は俺様も同様だった。フォルトゥナには【ガイドさん】のような存在がいないし、ずっと旅をしてきたのに、そういえばどんな存在なのか知らなかったのだ。
【ご案内します。私の名はアデライド、”外なる神=アデル”の化身体です】
え?その名前って?あれ?
次回、第110話「悪役令嬢ト究極形態」
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