第107話「悪役令嬢ト合体」
俺様の周りの空気が震える、リアが獣の目でアクセルをベタ踏みしっぱなしだからだ。
リアは高笑いしながらハンドルを握ると、アクセル全開のままデコトラを敵陣に突っ込ませた。
「うおお!ちょ!リアさん!?」
「あははははははははははははぁーーー!」
リアのテンションがおかしい、完全に暴走している。そしてそのまま敵デコトラに激突した。
「うおおお!あぶねええ!」
その瞬間、敵の姿が消えて後方で大爆発が起こった。敵の群れの一角に大きな空白ができている。
その周辺のデコトラは大きく車体が欠損し、中には墜落していくものもあった。
「さぁ!次行ってみよー!」
リアの暴走は止まらない。再びアクセルベタ踏みで敵陣に突っ込んでいく。今度は敵も散開して回避行動を取るので間隔が広くなり空振りしてしまう。
だがリアは即座にサイドブレーキを引いてカウンターを当てて車体を横滑りさせて軌道を強引に変更させた、空中で。
……ちょっと待て、今空飛んでるよね?ロケットブースターか何かみたいなので、操作方法との関連性どうなってるんだ。
「おいおいおいおいおい!乗ってる者の身にもなってくれえええええええええ!!」
フェルドから苦情が出るように、リアが強引に飛んでる方向を変更したために車内は物凄い事になっている。
いくらこの中が重力制御で揺れを抑えられているとはいっても限度というものがあるのだ。
「あー、お茶が美味いのぅ」
そんな中、レイハはこの状況の中で、どうやって淹れたのかお茶を飲みながら現実逃避していた。バランス感覚良いね。
「むうぅぅぅぅん!」
レイハは全身で踏ん張りハンドルを思い切り回して、車体を高速回転させ始める。そのままの勢いで敵の一群に突っ込み弾き飛ばした。
周辺で多数の爆発が起こり一気に敵の数が削られた。やっと3割くらいを減らせたってところか?
リアはブレーキを踏みハンドルを逆回転させて車体の回転を止め、大きく弧を描くように旋回し始める。
「次行くよ!」
「ちょ、リアさん!? 待て待て待て!」
俺様が止めようとしたが時既に遅し、リアの暴走は止まらない。相手がミサイルやらレーザーやらを放ってきても、無敵のロケットパンチと化している俺様には効かない。
なにしろこっちに当たった瞬間に転移してしまうのでダメージを食らう事は無いのだ。無敵過ぎて怖いなこれ、相手が多ければ多いほど有利だし。
【ご案内します。DEは消費し続けるので現状が不利な事には変わりません。早急に終わらせる事を推奨いたします】
「言うのは簡単だけどさぁ!」
「むー、まだまだ多い」
敵の何割かを削ったとはいえ戦力差が不利なのには変わりがない。まだ50台程は残っているからだ。それだけではなく奥の奥には『スサノオ』まで控えてやがる。
「よし、じゃぁ、DE無くなるまでに全部ぶっ壊せば良いだけよね!」
「リアさん、話聞いてた?」
リアは再びアクセル全開で敵陣に突っ込む、急旋回や宙返りなどをするものだからもうめちゃくちゃだー。
「お茶が美味いのぅ」
レイハは絶賛現実逃避を継続中だった。
それでもやけくそとも言える攻撃が功を奏したのかじわじわと数は押し返してきている。
「おい、そろそろそちらも限界が近いのではないか?」
突然、フロントガラスの隅っこの方にダルガニア皇帝陛下の顔が控えめな大きさで表示された。さっきボロカスに言われたのが効いたのか配慮したらしい。
「邪魔、消えて」
当然、リアは容赦なく塩対応だ。さっきと違って映し出されている顔の大きさが小さくて迫力も無いもんなぁ。
「これはお互いの為の提案と思って欲しい。ここは手を組もうではないかと改めて言っておるのだ」
それでもこちらにむけて交渉したいというのは本当なようで、皇帝陛下はリアの塩対応にもめげずに続ける。
「リアー、そやつがこちらと話し合おうというのは、あっちは追い詰められとるからじゃぞー」
「なるほど」
レイハがお茶を飲みながら指摘してきた。言われて見ればそうである、自分が有利なら見てりゃ良いだけだもんな。
リアも目をキラリと一瞬光らせ表示されている皇帝の顔を挑戦的に睨みつけた。
「おい、ちょっと待て、話を聞け」
さすがの皇帝も慌てた様子で止めに入るが、リアは聞く耳持たずアクセルを踏もうとする。
「相変わらず行動が読めぬなお前は、つくづく面白い女だ」
助け舟を出そうとしたのか、今度は大公爵まで出てきやがった。こいつら戦闘中に暇な事してんな……。
だが、その大公爵の登場にフェルドが噛みついた。
「おいアルフォンゾ!お前昔から何考えてるかよくわからん奴だったけど、本当にいい加減にしろよ!」
「ふっ、お前のような不肖の弟に理解されようとも思わんがな、私はもうこの世界に飽き飽きして「えい」
リアは兄弟の口論を無視してデコトラで攻撃を続行中だった。
「えい、えい」
「おいちょっと待て、人の話を無視して戦闘を継続させるな」
「おい、リア、一応兄弟で大事な話してるんだけど?」
空気読まない行動に、大公爵もフェルドもリアに抗議するがどこ吹く風だった。
「あーもううるさい、そっちフェルドのお兄さんだとか言う人の事情なんてどうでもいいでしょ!」
「いや私は出生のだな、恨みがだな」
「みんな人生だいたいそんなもんよ!何があったか知らないけど結局拗ねてデコトラで悪さしようとしてるだけでしょ?聞くだけ時間の無駄」
「おい私の人生をそんな簡単にまとめるな」
リアにかかれば大公爵の動機は物凄いしょーもない事に聞こえてくるな。
よくアニメとかで最終話になったらラスボスとペラペラと口論しながら戦ってたりするけど、リアはそんなセオリーに従ったりはしない。
むしろ呑気に会話してる間にも攻撃を続けていたのでついに相手の戦力は1/3まで減少していた。
「よーし、このまま一気に行っちゃおうかー!」
「やれやれ、相手がこちらの思い通りに動いてくれるわけが無いでしょう?」
おい、今度は3人目にフレムバィンディエンドルクとかいうエルフの顔が映し出されたぞ。
窓の隅っこに2つも3つも顔が表示されるとさすがに邪魔だな……。みんな口々に好き勝手なを事言ってるし。
「どうも、せっかく私が開発したものをこうも壊されていくとさすがに見ているだけにはいかないのでね、介入させていただきますよ。『スサノオ』」
突然、奥で控えていた黒いデコトラの車内で何かが光り始めた。あれはデコトラコアか?
「このままですと、我々の方が不利になる一方ですのでね。力をまとめさせていただきます」
『貴様!儂の存在をこんな塊に押し込めよって!天罰が下るぞ!』
【ご案内します。個体名:フレムバィンディエンドルクは『神』を圧縮してデコトラコアを創造した模様です。現状考えうる限り最も強力なコアですので、かなり膨大な制御が可能となります】
制御って何?と聞くまでも無く、眼の前の敵デコトラ達に変化が起こり始めた。多数のデコトラが黒いデコトラ『スサノオ』に向けて飛んでゆく、車体に突き刺さって行ったのだ。
同士討ちか?と一瞬思ったがそうではない、それらのデコトラがどんどん『スサノオ』に吸収され始めたのだ。
元々巨大だった黒いデコトラは、その姿を更に大きく、変化させていくのだった。
次回、第108話「悪役令嬢ト最終決戦」
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