第106話「悪役令嬢ト勝機」
「おのれええええええ!!!」
「おいおいおいおいおいおいおい!いくら何でも多勢に無勢じゃないか!? あ、リアさん、女の子はお上品にね?」
俺様は車体全面からレーザー、バルカン砲を撃ちながら敵の群れに突っ込んでいく。時に荷台の天面を開いてミサイルを発射し迎撃するが相手もデコトラ、なかなかに固い。
当然相手も攻撃してくるので飛び回って回避しまくっているが周囲はデコトラだらけだった。
こちらは多彩な攻撃を持っているがあっちはレーザーのようなものを撃ってくるだけでそこまで種類が無いのは幸いではあるが、手数では圧倒的に相手のほうが多い。
「姫君、私はこのような場では役に立ちそうにないので失礼します」
「ああ、どこへなりと行くがいい」
俺様達が決して有利ではないと見たのか、レイハに付き従っていたはずの忍者さんが姿を消した。レイハも別にそれをとがめる様子はなかった。
まぁいくら何でもこの状況で忍者さんが戦力にはなりそうにないもんな。とはいえこちらのDEだって限りがある、まだ一台も向こうのデコトラを破壊できていないのだ。
俺様の車体に衝撃が走る、ついに被弾したらしい。
「【ガイドさん】!被害はどうなってる!」
【ご案内します。問題ありません、損害は軽微で既に修復済みです。しかし何度も受けていては無事を保証いたしかねます】
「【ガイドさん】!正面!デコトラドリルで突っ込めー!」
「リアさん?一応被弾したんだから俺様の心配してね?」
俺様の全面から円錐形のドリルが展開しながら出現し高速回転を始める。そのまま前方の一団に突っ込み何台かの敵デコトラにダメージを与えた。
「やったか!」
「リアさん! それ俺様の前世では負けるから言っちゃダメなセリフ!」
【ご案内します。損害を与えたデコトラは既に修復が終わっております。DEを削る事には成功いたしましたが、DEの総量はあちらの方が遥かに多いので戦法としてはおすすめいたしません。デコトラコアを直接破壊して下さい】
このまんまではジリ貧って事かよ。いっそ敵将とも言える『スサノオ』を直接狙いに行きたいところだが、ずっと後方に退避してやがる。
その横にいるデコトラは大公爵のか?こういう場合にボスが前線に出てくるなんてお約束なんて守られるはずはないわな、つらい。
攻撃力が控えめとはいえ70台のデコトラはまだ全然減ってもいない、どう考えてもこのままではまずい。
「ねぇ、もっと強力な攻撃とか無いの? 全然減らないんだけど。いっそ巡航ミサイルで」
「あんなの撃ったらこっちもダメージ食らうってば! けど今持ってる武器じゃ限界あるよなぁ」
「うーん、ねぇ、こないだやったみたいに、殴って転移させちゃえば? 別の時代に飛ばせば良いんじゃない?」
おお! 意外と良い案では? と思ったが、その言葉を聞いてレイハから否定的な意見が返ってきた。
「ちょっと待てリア、あんなものが突然現れたら、その時代の者が迷惑するであろう、誰も手がつけられんぞ」
さすがにレイハは皇女なだけあって広い視野でものを考えていた。俺様達の時代だけ良ければ良いってわけにもいかんのだよなぁ。
ならばいっそ一網打尽にしたい所なのではあるが、堂々巡りになるだけだった。
よし、困った時はこれだ。
「【ガイドさん】! 助けて!」「お主いつもそれじゃの」
【ご案内します。先程の主様のご意見から有効な案が導き出されました。『装備:デコトラナックル』を装備】
俺様の車体の両脇に巨大な腕が生えた、腕の生えた空飛ぶデコトラってどうなんだろうな……。
同時にリアの座っている椅子が操縦する部屋の真ん中に移動し、他の皆は邪魔にならないようにか後ろに下げられた。
リアの腕にデコトラガントレットだけが装備された。これまたドレスにデコトラガントレットだけというなんとも言えない状態だ。
【ご案内します。主様、ぶん殴って下さい】
「おっけー!」
リアはためらいもなくアクセルをベタ踏みし、敵デコトラをすれ違いざまに巨大な腕でぶん殴った。
殴られたデコトラは一瞬でその姿が消える。おい、これまずいんじゃ?と思うと、かなり離れた所の敵デコトラが突然爆発した。しかもその規模はかなり大きい、周囲のデコトラも巻き込まれたようだ。
「え? 何? 今の爆発した?」
「お主が殴ったから爆発したのでは無いのか?」
「でもだって、結構離れた所だったよ?」
【ご案内します。先程のは物質融合による爆発です。詳細は説明すると長くなりますが、物質が転移した先に別の物質が存在していた場合、重なり合う事で大爆発を起こします。
意図的に一部が重なるように、転移距離と重なり合う量を調整する事により爆発量の制御が可能となります】
怖っ、そりゃ空中に転移させたがるわけだわ。もしもデコトラそのものが完全に重なったらどうなるの?
【ご案内します。その場合、手のひら大の物質が完全に重なり合うだけでも、この辺りが見渡す限り焼け野原になります】
「おい……、大丈夫なのかそれは」
【ガイドさん】の説明にレイハがドン引きしていた。ちょっと待て、リアさんどうして目をキラキラさせてるの、そんな目初めて見たんだけど。
「ふ、ふ、ふふふふふふ。殴るだけで大爆発……」
「おい、リア……?」
リアさんがちょっとうつむいて変な笑いし始めた、レイハも引き気味だ。あ、これダメなやつだ。
「【ガイドさん】、殴るのはちょっと性に合わないので、デコトラ自体をデコトラガントレットに変更して」
【ご案内します。形態変更と組み合わせて実装いたします】
俺様のボディの両サイドに出てた巨大な腕が消失し、キャビン部分が変形して巨大な手となって握りこぶしを形作った。……なにこれ。
リアの腕に装備されていたデコトラガントレットも消えて普段通りの運転席状態になった。
【ご案内します。それでは御注文通り、デコトラそのものを巨大な腕へと変形させました。ご存分にどうぞ】
俺様、空飛ぶロケットパンチになっちゃった?
「ふ、ふ、ふふふふふふふふふふ」
「リア? おいリアさん?」
「お、おい、リア、どうしたんじゃ? ……あ。」
レイハがリアの様子に何かに感づいたような表情をした。そういえばしばらく俺様デコトラの状態になってなかったっけ。
フェルドやマクシミリアンも、今まで見た事の無いリアの様子に訝しげな顔をしていた。
ハンドルを握るリアの目が獣のそれになる。空中で空ぶかししたエンジンは獣のうなりのように響き、空間を震わせた。
今ならばいくら跳ね飛ばしても良い。今なら周囲は敵しかいない。そして今は上空高く浮いているので邪魔をするものはない。
そう、リアの暴走を。
「おほほほほほほほ!あーーーっはっはっはっははっはっは!」
リアは高笑いすると同時に、アクセルを思い切りベタ踏みした、蹂躙の時間だ。
次回、第107話「悪役令嬢ト合体」
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