第一話、手紙を拾う
春休みが終わり、高校二年生へと進級した俺春日谷優は久しぶりの登校日学校へと急ぎ走っていた。
こうなった理由は元々セットしていた時計のアラームが何故か鳴らずにいて、そして両親は今日入学式である妹と一緒に俺の事も起こさず先に家を出ていっていた。そのせいで起きた時には既にギリギリの時間でありこうして遅刻しないよう学校まで走っているのだ。
「あっぶね」
校門前で予鈴がなった時はもう間に合わないと考えたが教室に着いてもいまだ新しいクラスメイト達は静まらず話し込んでいたのを見て間に合ったと考えたが。
「新学期早々、間に合ってホッとしてる君に残念なお知らせだが遅刻だぞ」
「うげぇ、まさかまた一年あんたと一緒なのか」
いきなり声をかけてきたのは一年の時に俺のクラスの担任だった水瀬夏帆先生だ。ここにこの人がいて声をかけて来たって事はどうやら俺はまた一年この先生に教えをこうらしい。
ここに来る前に急いで校舎前に張り出されていたクラス表を確認したが担任の名前まで見てる余裕はなかった。
「はは、今年もよろしく頼むぞ不良少年」
「そのあだ名いい加減やめてくれ、今は真っ当に高校生活を楽しんでいるんだから」
頭をわしゃわしゃとしてくる水瀬先生は俺の過去の秘密を知る数少ない人物である。
「それじゃ遅れてきた君に今から重大な事を任せよう」
「重大な事」
「あの教師重大な事って言うからなんだと思ったらただの荷物運びじゃねぇか」
俺は心の中で叫ぶ。水瀬先生からの頼み事は二年の学年全員に配るプリントを他のクラスの教室まで運ぶようにだった。しかもそれは往復を何回もしないといけないとんでもない量なのでとてもじゃないが俺一人で運べなかったのでクラスメイトからもう一人水瀬先生から駆り出され俺と同行している。
「えっと春日谷君。今年も同じクラスだねよろしく」
プリントを運んでいる途中に隣から声をかけられた。水瀬先生と一緒で去年同じクラスのクラスメイトでありその時はクラス委員でもあった女子生徒の確か名前は。
「深水さんだっけ、ごめんそんな話した覚えないからあいまいで」
「うん、深水歩だよ」
別に俺はぼっちとかではない、一年の時から仲のいい友人も数人いる。だが深水さんは俺とは正反対の人物でクラスメイトやクラス以外でも学年で数十人の友人と話しているのを一年の時から見ていた。俺も話しかけられた事は数回あるが女子と話すのは少し苦手だったので俺の方から少し距離を置いていた。
「いやぁ、それにしても春日谷君と同じクラスになれるなんて嬉しいなぁ」
ニコニコ笑顔の深水さんの隣を歩きながら教室に戻る道中に俺は痛い視線を浴びているのに気付く。
実は深水さんは学年問わず男子からの人気も高く告白されてそして振っている男子は数多く存在すると一年の当時友人から聞いた覚えがある。
「春日谷君どうかしたの」
「いやなんでも、それよりも一つ聞いておきたいんだけどなんでさっき水瀬先生の頼み事率先して出てきたんだ」
水瀬先生は手伝えるかクラスメイト達に声をかけたが深水さん以外誰も率先してやりたいなんて言わなかった。
「だって春日谷君一人じゃ大変だと思ったから、それにこうでもしないと春日谷君と話す機会なんてないし」
まぁ俺の方から距離を置いている以上話す機会なんて早々にないか。
深水さんと一緒に運んだおかげでプリントを運び終わるのに四回の往復で済んだ。これが俺一人だった場合八回も往復することになるのであの教師には恨みしかでてこない。
「深水さんありがとう君のおかげで体力も時間もそんなに使わくてすんだよ」
「えへへ、これくらいなんてことないよ。それで春日谷君はこれからどうするの、今日はもう授業と部活もないし」
「とりあえず教室に戻って鞄とか取ってから、ちょっと会いに行かなきなきゃいけない奴がいるから。そいつの所にでも行くかな」
「会いたい奴」
「ああ、俺の妹がここに入学したんだよ。だから今日はここの案内を頼まれていて」
「へー、春日谷君に妹さんがいたんだ。それじゃ教室までは一緒に戻ろうよ私も鞄とか取りに行かなきゃダメだし」
そして深水さんと一緒に教室に戻ると、騒がしかった教室は静まりかえってクラスメイト達も全員教室からいなくなっていた。
机の上に置いていた鞄を取ると何かが落ちた拾うとそれは便箋のような封筒に中に手紙が入っていた。誰かが間違いておいたのかもと宛名があるか確認すると春日谷優さんと俺宛で間違いなかった。
「それじゃあ春日谷君、私は行くねまた明日」
「ん、ああ今日はありがとう、また明日」
深水さんは最後に挨拶をして教室から出ていく。今ここで手紙の中身を読んでもいいが俺も予定があるので帰ってから読もうと鞄の中にしまって、携帯で妹に連絡する。