新しい旅の始まり
翌朝ブラッディストーンの4人は2体目のボスのクリスタル報酬を貰いに冒険者教会に来ていた。
「ブラッディストーンの皆様ですね。別室に案内します。付いてきてください」と受付嬢が言う。カイト、アル、サラ、リサの順でついて行く。
「こんにちは。ブラッディストーンの皆様方。私は帝都冒険者教会の会長をしているカトラと申します。」と50歳くらいだろうが歳のわりに筋肉が服越しにも分かるほどある男が自己紹介をした。
「ご丁寧にありがとうございます。ブラッディストーンのカイトと申します」とカイトも答える。
「2体目のボスのクリスタルの件だが、あれは前例もなく特殊個体であることが分かった。そこで2体目のボスのクリスタルは金貨100枚で買い取ろう。それと同時にカイト、アル2名をBランク冒険者とする」と冒険者教会会長が言った。カイト達はもともとこのクリスタルの価値が分からないのだ金貨100枚の価値が付いただけでもありがたい。それに1回のクエストでCランクからBランク冒険者になれるなんて異例だ。ありがとうございます。とカイトが言う。話が終わりカイト達は金貨100枚を貰って部屋を退出する。
「僕たちがBランク冒険者だって、やったなカイト」とアルが言う。
「まさか1回のクエストで上がるとはな。嬉しいが実感が湧かないな」とカイトが言う
「そんなものよ。これで私達は対等ね。元々対等のつもりだったけど」とサラが言う。
冒険者ランクが上がったカイトとアルの冒険者カードを更新した4人は冒険者教会を後にし、帝都からサリークへと帰還することにした。
馬車で3日揺られてブラッディストーンの4人はサリークに到着していた。リサが得ていた情報は本当だったようで、すでに戦争から逃げるために冒険者達が別の都市に移動しておりサリークの冒険者の数は激減していた。冒険者教会がまだ機能しているか気になったためカイト達は急いで冒険者教会に向かった。冒険者教会に着くと受付嬢の数は半分以下になっていたが冒険者教会はまだ機能しているようだった。冒険者教会に入るとSランク冒険者カエサルが話しかけてきた。
「やあカイトくん、帝都でのクエストはどうだった」と聞かれたので特殊個体を倒したことでBランク冒険者になったことを伝えた。
「もうBランクか。俺の目に狂いはなかったな。これからどうするつもりだ」とカエサルが言う。どうやら戦争のことを言っているのだろう。
「サリークから拠点を変えるつもりです。場所はまだ決定していないのですがケルン王国に行こうと考えています」ケルン王国はハンブルク帝国から西に向かったところにあり、メイデン国との国境に魔物が生息しているため、ハンブルク帝国とメイデン国が戦争状態になってもある程度の仕事はあるだろうとカイトは考えていた。カエサルさんは戦争に参加されるのですかとカイトは聞いてみた。
「私は人殺しは苦手でな。君たちが帰って来たら君たちと一緒に冒険しようと思っていたところだよ」とカエサルは言う。
「そういえば約束していましたね。ではケルン王国に一緒に行くのはどうでしょうか」とカイトが尋ねる。そうするとカエサルは首を横に振った。
「あそこはCランク冒険者の行くところだよ。君たちの行くところではない。カイトくん、君は私の後継者になる男だ。私と一緒に来て修業をしないかね。もちろんパーティーメンバーのアルくん達も一緒にね」
「分かりました。パーティーメンバーの意見を聞いてからでもよろしいでしょうか。」とカイトが言う。
「いいよ。行先はミラノの首都ジュノヴァだ。そこのダンジョンを攻略する」とカエサルが答える。カイトは後ろにいた3人にどうするか尋ねる。全員がカエサルと一緒にジュノヴァに行くことに賛成した。カエサルに同行することを伝えると明日に出発だと答えた。
カイトは加速スキルを使用してハイデ村に向かっていた。カエサルとの約束は明日だハイデ村まで加速スキルを使えば6時間で着けるとは言え、戦争のことを知っているのか、逃げる準備はできているのか、シズとツカサが心配になって急いでいた。カイトはハイデ村に着くとアルのお父さんの家に向かった。そこにシズとツカサがいるからである。カイトが着くと夕食の準備をしていたツカサが慌てて迎えてくれた。シズはどこにいると尋ねたが、まだ帰ってきていないようだ。
「カイトお兄ちゃん。久しぶり14歳の誕生日おめでとう」ツカサのお言葉に動揺する。言われてみれば今日はカイトの誕生日だ。
「ありがとうツカサはもう11歳だったか。誕生日を祝ってあげられなくてすまない」とカイトは謝罪する。カイトが家の入口で立ち話をしていると背後から殺気が迫ってきた。後ろを振り向くとそこにいたのはシズだった。
「カイト兄帰ってきたの。よかった」とシズが言うとシズから放たれていた殺気が消えていった。どこに行っていたのか聞いてみたがシズは答えてくれなかった。そして、そのままお風呂場の方へと歩いて行った。
「ツカサ。シズがどこに行っていたか知っているか」とツカサに尋ねる。
「本当は内緒なんだけどメイデン国との国境まで行って魔物を狩っているの」とツカサが答える。メイデン国との国境は弱い魔物だとDランク強いとCランクまでの魔物が存在する。シズは冒険者でもないのに魔物狩っている。理由としては剣の修業だろう。前回村に帰ったときに教えたのをカイトは後悔した。しかし、教えてしまったのはしょうがないとして後でシズと話をすることにした。
「ツカサハンブルク帝国とメイデン国が戦争するのは知っているか。逃げる準備はできているか」とカイトが尋ねる。ツカサは頷く。どうやら大丈夫そうだなとカイトが安心しているとアルのお父さんがカイトを手招きする。アルのお父さんの方にカイト行く。
「ツカサちゃんとシズちゃんには逃げるように言ったのだが聞いてくれなくてな。カイトくんから逃げるよう言ってくれないか」とアルのお父さんに頼まれる。ツカサもシズも逃げる気がないのか。アルのお父さんと話しているうちにご飯ができたのかツカサが呼びに来る。
夕食を取りながらカイトがツカサとシズになぜ逃げないのか聞いてみる。答えは行く当てがないからだと言う。だがカイトは反論する。
「シズは魔物を倒せるくらい強くなったんだろう。だったら冒険者としてやっていける他の国に行くんだ」とカイトが言うとシズが強く反発した。
「冒険者としてここから出るならカイトと出たい。カイトと一緒はだめなの。それに私が剣術を覚えたのは逃げるためじゃない。戦うために鍛えたの」とシズが答える。カイトはすぐに答えることができなかったツカサとシズのことを考えるなら一緒に村を出てケルン王国に行くのがいいだろう。だがカイトはメイデン国との戦争に兵士として参加することも考えていたため答えることができなかった。その代わりに別の言い訳を話す。
「俺はSランク冒険者とジュノヴァに行ってダンジョン攻略をしなければならない。だから一緒にはいけない」とカイトは言う。
「カイトに私達を連れていけない理由があるように私とツカサがここを離れない理由があるの。カイトが一緒にこの村をでない限り私達もどこにもいかない」とシズが答える。
カイトはシズの強い意志を曲げることはできないと考え、村から他国へ逃がすことを諦めた。まだ戦争は始まっていないしハイデ村が戦場になるとは限らないとカイトは思うことにした。ハイデ村で久しぶりにシズとツカサ、アルのお父さんと夕食を取った後カイトはサリークへと向かった。
翌朝サリークからジュノヴァに出発した。ジュノヴァに着くまでには半年ほどかかる。カエサルはその間に修業をつけると提案してきた。カイトは移動中に修業をつけてもらえるのは好都合だと考えありがたくその提案に乗った。アルもカエサルのパーティーメンバーである狩人のツバサに修業をつけてもらうことになった。サラとリサは神官のフィオナに簡単な回復魔法を教わっていた。
こうしてSランク冒険者カエサルが率いるパーティーは半年かけてジュノヴァに向かうことになった。途中ワイバーンと戦闘があったが修業の成果がでて無事倒せることができた。
この状況を見たカエサルが君達はA級冒険者になるべきだと言いジュノヴァに着いたらすぐに手続しようと言った。