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復讐者となりやがて神へ挑む者  作者: 秋 拓斗
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戦闘開始

 ダンジョンに着いた4人はさっそく戦闘態勢で突入した。最前線はカイトその後ろ中衛にサラ後衛にアルとリサというフォーメーションだ。ダンジョンに侵入して最初に遭遇したのはガーゴイルである。ダンジョンにいるモンスター達は一定時間ごとにリポップする。ダンジョンの門番であるガーゴイルが湧いているということはどうやら近くには別のパーティーはいないらしい。カイトは戦闘に入る前に相手を確認した。ガーゴイルは全身真っ黒であることからダークガーゴイルだとカイトは判断した。ダークガーゴイルはBランク相当の魔物だ。ダークガーゴイルは近づくか最初の攻撃を当てないと動かない。カイトは、アル達3人に攻撃しないように手信号を送り自分は戦闘態勢に入った。ダークガーゴイルの弱点は雷だ。カエサルに教えてもらったライトニングソードを使用した攻撃を行った。ダンジョンの室内に光が満ちた瞬間には雷が落ちる音がして部屋中に衝撃が走る。ダークガーゴイルが倒せていなかった場合を考えて2回目の攻撃を準備していたカイトだったがダークガーゴイルの姿はなくなっていた。ガーゴイルにはドロップ品がないのか何もドロップしなかった。おそらく門番にはドロップ品はないのだろうとカイトは考えた。

「カイト、ライトニングソードなんてスキル所持していたか」とアルが聞いて来た。カエサルに帝都に来る前に教えてもらったとカイトが返すと次は僕の番だなとトラップ回避スキルを使用したアルが前進する。戦闘フォーメーションを崩すのは不安だがトラップがある可能性があると考えるとアルを先頭にするのが良いだろうとカイトは判断したため、アル、カイトが前衛、サラが中衛、リサが後衛のフォーメーションに変更した。

 このダンジョンは5階層まであり、その奥にボス部屋があるダンジョンだ。なりたてのAランク冒険者やBランク冒険者が来る場所である。それを考慮するとカイトとアルにはまだ早いはずだが、二人は余裕を持って3階層まで到着していた。

「冒険者教会で聞いていた通り3階層までは下級の魔物しかいなかったな。それもダンジョンの外とほとんど変わらない強さだし」とアルが言う。確かにダンジョンと聞いて苦戦を強いられると考えていたカイトだったが、上級スキルを一回も使わず3階層を踏破してしまった。

「ここからは上級の魔物が出る。だが、ボス戦に備えて上級スキルは残しておきたい。先手を取るのと波状攻撃で倒していこう。相手に先手を取られたら撤退だ」とカイトが全員に話しかける。了解と全員が答える。

4階層に降りるとさっそく上級の魔物であるサイクロプスと出会った。サイクロプスは視界が狭い。まずはカイトの一撃で陽動をかける。その攻撃を見てサラがサイクロプスの背後に回る。そして槍でサイクロプスの腹を背後から突く。最後にアルの弓でサイクロプスの目を射抜く。上級スキルを使わないサイクロプスの倒し方だ。

「うまくいったな。これでサイクロプスは上級スキルを使わずに倒していけそうだ。5層まで無事たどり着けそうだな」とカイトは言う。

その後も上級スキルを使わないままAランク相当の魔物を狩っていく。途中ケルベロスのスピードに対処できず後衛に接近されてしまったがカイトの上級スキルグラビティバインドによって後衛から前衛まで引っ張ってサラの一撃で倒すことができた。

「ここが5層のボスか。上級スキルをほとんど使わずに来れるなんてカイトの作戦は完璧だな。」とアルが褒める。

「全員の実力のお陰だよ。特にサラの槍に助けられたな。貫通力が凄まじい」とカイトは言う。

「カイトの速さと瞬発力の方がすごいよ」とサラが言う。

「ここまで楽させてもらったから次は私の番ね」とリサが言う。

全員がお互いの力を確認しあったところで5層へのボス部屋へと4人は向かった

 ボス部屋は、高さ100メートル面積は1000平方メートルほどあった。ボスは宿屋で情報を集めたときに得ていた情報と同じミノタウロスだった。情報によると瞬発力が凄まじく、後衛を狙ってくるとのことだ。そして、ミノタウロスの大きさは高さ10メートルほどある。一度走り出してしまったら止めることは困難に近い。そこで立てた作戦が全員前衛作戦だ。後衛を狙ってくるミノタウロスの本能を殺しつつ、ミノタウロスの瞬発も殺せる作戦だ。問題なのは近距離戦においてアルとリサが本領を発揮できるかである。

「アルとリサは最悪防御に専念しても構わない。やつの瞬発力だけは殺さないといけないからな」とカイトが言う。するとリサが魔法使いだって近距離戦ができるのよと言い返した。

カイトのツイン・シャドウが戦闘の合図となった。ツイン・シャドウの影の刃がミノタウロスの肩に直撃する。そして、ミノタウロスの前方にカイトとサラ、背後にアルとリサという陣形を作る。背後に向かわれたら陣形が崩れるが、どうやらミノタウロスは前方しか見ていないようだ。カイトとサラに襲いかかる。カイトとサラはファントムソードとファントムデスピアという幻影を見せながら戦う戦法でミノタウロスの一撃を交わしながら戦う。背後からはアルが足や手に向けて矢を射る。リサはライトニングストームを打つタイミングを見計らっている。ミノタウロスの動きが遅くなって回避できなくなったときに打つ算段だ。

アルの弓での攻撃が効いてきたのか手の動きが鈍くなり、攻撃するとき足に力が入らなくなり重心がずれている。カイトがリサに攻撃をするよう合図を出す。その合図を見てリサがライトニングストームを放つ高さ数十メートルからの多数の落雷が降り注ぐミノタウロスは戦闘不能になりクリスタルが出現する。討伐は成功した。

「作戦がうまくいったな。少し物足りないけど」とアルが言う。

「リサの魔法のおかげだ。それにリスクを冒さずに倒すのも冒険者に求められるスキルのひとつだ」とカイトが言う。

全員がボス部屋を後にしようとしたときだった。部屋の中心の地面が青く光りだし、ボス部屋の扉が閉まるダンジョンのギミックだと全員が判断し戦闘態勢に入る。現れたのは先ほどとは違うミノタウロスだ。こんなに早く復活することはまずありえない。明らかに別の個体だ。ヘイトを集めるためにカイトとサラが前へ出る。しかし、それを無視してミノタウロスは後衛のリサへと突進した。ミノタウロスが後衛を狙う習性があるのを忘れていた訳ではないが数歩の誤差にも反応するとは全員が思わなかった。リサはバリア魔法でなんとかミノタウロスの突進を食い止めている。先ほどの戦闘でカイトとサラは上級スキルをほとんど使っている。ミノタウロスを瞬時に倒せる方法はあとひとつしか残っていなかった。バリアの限界がきてリサが100メートルほど吹き飛ばされる。この瞬間しかないとカイトは考えアルに叫ぶ。

「アル。メテオ・ストライクだ」アルも瞬時に今ミノタウロスを倒せる手段がそれしかないことを理解しメテオ・ストライクを発動させる。

2つの巨大な岩がミノタウロスに直撃する。その瞬間光と爆風と熱がボス部屋に充満する。それと同時にリサがカイト、アル、サラに防御魔法をかける。その数秒後閉まっていたボス部屋の扉が開かれる。ミノタウロスがいた位置にクリスタルが出現する。どうやら完全にミノタウロスを撃破できたようだ。だが、メテオ・ストライクに耐え切れなかったのか部屋が崩れ始める。

「まずい。部屋が崩壊する。クリスタルを拾って、ボス部屋を出るぞ」とカイトが指示を出す。一番近くにいたサラがクリスタルを拾い全員がボス部屋を出た。

「なんだったんだ。あれはミノタウロスが2体も出てくるなんて聞いてないぞ」とアルが言う。

「そうだな。それに2体目は1体目以上のスピードを持っていた。メテオ・ストライクを使っていなければ全滅だったな」とカイトが言う。

「メテオ・ストライクってカイルってやつが使っていたユニークスキルだよね。それも二人が同時に使えるなんてどういうこと」とサラが質問してくる。

「確かにSランク相当のユニークスキルメテオストライクそれもカイルを倒した二人が使えるのは不思議だわ。けど私達が助かるにはあれしかなかったわ。ありがとう」とリサが言う。

「これでお互いに秘密ができたわけだ。これからもよろしく頼むぜ」とカイトが言う。

アルがなんのことだろうと考えていたが数秒後宿屋のロビーでの出来事を思い出す。

「やっぱり気づいていたんだ。密告しなくていいの。あなた達の方は誤魔化しができるけど私達の方は密告されたら何もできないのだけど」とサラが言う。

「密告はしない。確かに俺たちよりリサとサラの方が立場的に厳しいのは分かるが信じてくれ。俺たちは仲間、いやリサとサラを裏切ることはない。信じてくれ」とカイトが言う。

「今の言い方だと仲間は裏切るみたいだけど、まぁいいわ。信じてあげる」とリサが言う。

こうして4人の初クエストは無事にクリアされた。

帝都に戻って1日がたった。今日はクエスト達成の報告だ。カイト、アル、リサ、サラ4人揃って宿屋を出た。冒険者教会に行くと視線が集まった。ダンジョンのボス部屋を崩壊させたのだ。注目を集めるのは仕方ないだろう。

「おはようございます。クエストの報告に来ました」とカイトが話す。ブラッディストーン様ですね。と受付嬢が対応する。カイトがダンジョンで採取したクリスタルを取り出してテーブルに並べようとすると受付嬢が慌てて別の部屋へ案内する。どうやらクリスタルの量が多かったようだ。下級の魔物が128体上級の魔物が70体そしてボスが2体合計200体のクリスタルが並んだ。

「このクリスタルは本当にダンジョンで手に入れたものですか」と受付嬢が2体目で倒したミノタウロスのクリスタルを指した。隠すこともないと考えたカイトはダンジョンでボスを倒した後に起きたことを話した。

「ボスを倒した後にボス部屋の扉が閉まって新たなボスの出現ですか。前例がない出来事ですね」と受付嬢が話す。カイトは受付嬢の話を聞いてやはり本来ありえないことが起きたことを確認することができた。

「2体目のボスのクリスタルの換金は明日まで待ってもらってよろしいでしょうか。他のクリスタルにつきましては今換金を行いますね」と受付嬢が話し、換金した金貨300枚を持ってきた。パーティーメンバー一人金貨75枚という大収穫だ。金貨を受け取ったカイト達は冒険者教会を後にして町にでることにした。全員で帝都観光をする案もあったが、それぞれ別行動をして夕食時に集まって一緒に夕食とることに決定した。

 カイトは夕食まで何をするか悩んでいた。まず考えていたのがアルのプレゼントである。前回はアルに金貨50枚のダガーを買ってもらったのに対して金貨1枚のミスリルの弓の矢をプレゼントしただけだからだ。しかし、何をあげたらいいのか全く思いつかなかった。とりあえず様子を見ようと武器屋にいって弓を見たが、スキル不死鳥の弓を所持しているため弓をプレゼントは必要ないだろうとカイトは考えた。前に上げたミスリルの矢を50本プレゼントするというのも考えたが消耗品を50本も同じものを貰っても困るだろう。同じようなものをプレゼントするならミスリルのナイフだろう。だが、カイトは購入前に少し考える。今のパーティーメンバーは4人だ。プレゼントするなら4人に対してプレゼントするのがよいだろうと考えた。そこで全員が所持していて困らないものを探し始めた。アクセサリー関係が良いと考え、ネックレスやペンダント、ピアスやイヤリング、指輪などを見てみる。どれも装備に効果が付属していて予算的に厳しかった。目的は4人で共通のものを着けることなので装備に効果は必要ないと考えカイトは武器屋からアクセサリーショップへと移動した。武器屋のアクセサリーは金貨30枚程度だったがアクセサリーショップは金貨5枚程度高くても10枚程度だった。並んでいる商品を見ていくとなぜか4本のお揃いのナイフがあった。店主にこのナイフが何か尋ねてみた。

「特に効果のないただのナイフだよ。ナイフなら武器屋に売りに行けと言ったんだが武器屋には売れないと言ってね。しょうがなくうちで買い取ることにしたんだよ」ナイフを手に取って確認してみるが特に効果はないようだ。だが刃こぼれがまったくないことから相当手入れされているか武器として使用していなかったことが分かった。カイトはこのナイフが良いと考えまとめて4本を金貨4枚で購入した。

 アルは新しいスキルを手に入れるために帝都にある図書館に来ていた。帝都にある図書館には2種類あり、貴族や皇族が使う図書館と平民が使える図書館である。アルは平民が使える図書館に来ていた。目的はスニーキングのスキルと一撃必殺のスキルだ。前者は狩人として必須級のスキルのため前々から取得しようとしていた。後者はミノタウロス戦においてダメージを与えていたもののカイトやサラに比べて一撃一撃が弱いと感じたからである。スニーキングスキルの方はすぐに見つかった。だが一撃必殺のスキルは中々見つからなかった。見つけたのはライトニングアローという上級スキルである。カイトがカエサルから教わったライトニングソードの弓バージョンである。アルとしては貫通力のある上級スキルを探していたがこれでも十分だと考え本を借りて、帝都の外へ向かいスキルの習得を始めた。

 サラはトリノ国と自分達の情報がどれほどトリノ王国に渡っているのかを調べていた。トリノ王国では王と王女、リサとサラの両親の処刑が実行されたとの情報があった。分かっていたもののサラはショックを受けた。神の指示を受けて動いたのは側近だったリゼルという人物だ。そもそもこのリゼルという男の政策である軍縮をしたことが神の怒りを買いサラとリサの両親は処刑されたのだ。なぜこの男が処刑されずに、むしろ処刑する側に回ったことにサラは強い怒りを覚えた。もしこの男が目の前に来たら殺してしまうだろうとサラは考えた。

 リサもサラと同じく自分達の情報がどれほど流れているのか調べていた。どうやらトリノ国内では総動員して捜索されているようだが、他の国では捜索はされていないようだ。トリノ国とハンブルク帝国は4500キロも離れているし、交流と言う交流はない。あるとしても商人の行き来ぐらいだ。それよりもリサはカイトやアル達にも関係する情報を手にする。それは、ハンブルク帝国が時期にメイデン国に対して戦争を始めるということである。戦争が始まればハンブルク帝国とメイデン国の境界が戦場になるだろう。魔物の生息地域が戦場となるのだ。サリークを拠点としているブラッディストーンにとっては大きな痛手になる。新たに拠点になる都市を見つけなければならないだろう。リサはその情報を入手したことで満足し、喫茶店でお茶にすることにした。

 ブラッディストーンの4人は帝都でも有名な酒場の前に集合した。今日はダンジョンボス討伐成功パーティーだ。

「ダンジョンボス討伐成功、乾杯」とカイトが言い、全員で乾杯する。ダンジョンボス討伐成功とパーティー結成を祝して全員に渡すものがあるとカイト言いアクセサリーショップで買ったナイフを全員に渡す。

「武器屋で買ったの。魔法は使われてないみたいだけど」とリサが質問する。

「アクセサリーショップで買った物だ。アクセサリーショップにおいてある物にしては良い出来だったからな。これにした」とカイトが言うと確かにアクセサリーショップでは普通置いてないよねとナイフを見ながらサラが言う。ナイフが全員にいきわたったところで全員が食事を始めた。そして、今日は何をしていたかという話題になった。

「僕は図書館に行っていたよ。スニーキングスキルとライトニングアローの2つのスキルを習得したよ。本当はもう少し貫通力のあるスキルを覚えたかったんだけど平民の図書館には置いてなかったよ」とアルが言う。

「私は自分達の情報について調べていたわ。流れている情報は性別と髪色、髪の長さくらいね。あとは殺したい男が一人できたってことくらいかしら」とサラが言う。

「私もサラと同じく、自分達の情報を集めていたわ。だいたいはサラと同じね。捜索隊が動いているのがトリノ国内だけだからここにいれば安全でしょうね」とリサが言う。

「あともう一つ重要な話があるわ。いつかは分からないけど時期にハンブルク帝国とメイデン国の戦争が始まるそうよ。だからサリークから拠点を移す必要があると思うわ」とリサが続けて言う。それを聞いたカイトは分かった。考えておこうと返事をした。今日やったことや集めた情報を話し合った後は騒ぎながら食事し、酒場を後にした。

 夕食後宿屋についたカイトはお風呂に入った後考え事をしていた。それはリサがもたらしてくれたハンブルク帝国とメイデン国の戦争の件である。謎の声の主の言っていたことが本当であればレンはメイデン国にいる。自分がハンブルク帝国の兵士となり、メイデン国まで攻め入る兵士の中に紛れ込めればレンの救出ができるのではないかと考えたためだ。カイトはその夜悩み続けたが答えはでなかった。


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