一日目
よろしくどうぞ
私は小野ヒカゲ、春から東京の高校に通うべく一人で上京してきた田舎者女子高生である。
昔は東京に住んでいたけど、両親が所謂転勤族で、ついこの前までは福島に住んでいた。
別に転勤族の娘に不満はなかったし、スマホを手に入れてからは、各地でできた友達と連絡は取れたから、そこまで寂しいと言うこともなかった。しかしである。父の次の勤務先があろうことか海外、それも英語だけではどうしようもないフランスだった。確かに芸術の国フランスに興味はあったが、流石に怖い。母も父について行くと言っているので、高校生になるタイミングで一人暮らしをしてみることにした。
私だって女子高生、いやJKの端くれ、東京での青春に憧れもあったし、良い機会だと東京の高校を受験。まあまあ偏差値は高かったけど、少し頑張って無事に合格した。
さて、合格したはいいものの、一人暮らしには何かと出費が嵩む。食器や包丁など実家で使っていて、両親が持っていかないものはそのまま使う予定だが、一番大きいのはやはり家賃だ。
一人暮らし、いくら東京とはいえ抑えようと思えば、どうにか予算内にはできる。しかし、若い女の子一人となると、オートロックなど充実したセキュリティーが欲しいところだが、やはりそうなると高い。そこで行き着いたのが『事故物件』である。
基本的にオカルトチックな理由で避けられる物件だが、そこに目を瞑ればスペックに対して値段が圧倒的に安いことが多い。私は幽霊とか信じてない訳ではないけど、結局、どこぞの変態に襲われるよりは可能性が低いと思って、事故物件に住むことにした。
今日からここに住む訳だが、正直に言えば、怖い。下見で一回きたけど、案内してくれたお店の人もどこかソワソワしていて、早く帰りたそうだった。
「、、、ガチャッ」
「、、、」
「、、、」
な、なんか勝手にドアのオートロックが開いたんだけど?
え?大丈夫?故障?え?
「、、、キィー」
「、、、」
今度は勝手に開いたよ、、、え?そういう仕様?家主が帰ると勝手に開いてくれる仕様?最近トイレでそういう機能ついてるの多いけど、その類?大丈夫?
よし、大丈夫。覚悟を決めろ。確か、ネットでは幽霊は自分のテリトリーを犯す外敵を攻撃するって書いてあった。だったら、最大限、礼儀を尽くして御供物とかやってれば大丈夫なはず!
「し、失礼しまーす、、、」
「、、、バタン」
「ヒッ、、、わ、私、本日からここに住まわせていただく小野ヒカゲと申します。よ、よろしくお願いします」
「、、、」
よ、よし。大丈夫。まだ問題ない。今のうちに祭壇用意してお供えしよう。
そう思って、あらかじめカバンに入れておいた和菓子やらお茶やらを準備しようとする。しかし、、、
「あれ?なんで?ない?あれ?」
カバンの中に入れておいたどら焼きが!!お茶も!!!なんで?ないの?
半分パニックになりながら、辺りを見回す。すると、、、、いや、めっちゃ普通に浮いてるじゃん。なんなら袋から取り出されて食われてるじゃん。あ、お茶の蓋が開いて?そのまま傾いて?中身が少しなくなって?蓋しめて?あ、もう一口どら焼き、、、いや、めっちゃ普通に堪能してるじゃん。どうよ?美味しい?いや、別に元々あなたに上げる予定だったから問題ないけどさ、、、
「えっと、、、よろしくお願いします?」
「、、、」
うん。一旦無視しよう。訳分からんけどとりあえず今は無視だ。さて、荷解きしていきますかね。
えっと、まずは服とか出しておかないとか、、、よし、まあ今は一旦出しておくだけでいいだろう。、、、よしできた。えっと次は、、、
トントン
「!?、、、あ、え、どうしました?」
フヨフヨ
なんか綺麗に食べ終えたゴミが浮いてるんだけど、、、脳がバグりそう。えーと?なんだ?あ、、、
「えっと、もしかしてゴミはどうしたらいいか聞いてます?」
「、、、」
「えっと、ゴミはじゃ、この袋の中に入れといてください」
ガサッ
どうやら本当にゴミはどうすればいいか聞いていたらしい。マジで意味わからん。さて、気を取り直して作業に戻りますか。えっと次はパソコン類かな。高校生になり1番の変化といえばやはりパソコンを各自で用意しなくてはいけない点だろう。少なくとも私の入った学校ではパソコンを使う課題も多いみたいで、せっかくだからと、両親が窓のマークのデスクトップとリンゴマークのノートパソコンを買ってくれた。配線とかどうしよう、、、てか意外とモニターも重いな、、、やべー、これ明日じゃだめかな、、、
そう思って早速挫折しかけていると
フヨフヨ
あ、なんかモニターが浮き出したよ、、、お、そのまま机の上に置いて?あれ?もしかして手伝ってくれる感じ?あ、そこじゃなくてもうちょい端でお願い。おーマジでやってくれてるよ、、、よし次は配線か、、、これわけわかんないんだよね、、、どうしよう、、、ってあれ?なんかどんどんやってくれて、、、いや、うん続けて?お任せします。
いや、めっちゃ手際いいじゃん。おー、ちゃんとコードがまとめられてる!これで、とりあえず今日やんなきゃいけないことはおしまいかな、、、なんか今日はびっくりしすぎて疲れたな、、、寝るか。
「あ、私このまま寝ちゃいますね。おやすみなさい」
「、、、ピッ」
あ、電気消して暖房弱くしてくれた。至れり尽くせりでもうなんかどうでも良くなってきたな、、、おやすみ〜