私が憧れの魔法少女!?2話
教室の自席に座った時、小さな違和感があった。あ、美由ちゃんがいないからだ、すぐに気づく。いつもは私よりも早く教室に着いていて、私が席に着くと同時に
「綾乃ちゃん、おはよう。昨日の『2人はプリキュア』の再放送見た?」
と話しかけてくれる。中学に入学して約3ヶ月。その長い期間で唯一出来た、私の友達だ。美由ちゃんだけが私の魔法少女趣味に共感してくれて、気兼ねなく自分の妄想や、ノート裏に書いている好きなアニメの二次創作小説について話せる。クラスの子たちは既に4~6人ほどのグループで行動していて、正直私たち2人は浮いている。でも、たった2人だけでも十分学校生活は楽しい。それに、クラスの人は苦手だ。特に『1軍女子』の子たちとは絶対にわかりあえない。ボカロのこと何も知らないのに、ティックトックではボカロ曲を無断で使用しているし。普段転生系のアニメとかは馬鹿にしてくるくせに、その時流行ったアニメだけはちゃっかり見ているのも気に入らない。そもそも、自分のことしか考えていないんだよ。この間だってそうだ。2日前の昼休みのことを思い出す。
「クラスのみんなで、連続変顔やってくよ~!」
クラスで一番目立つ永瀬花音が、自身の最新スマートフォンに向かって話しかけていた。スマートフォンからは人気韓国アイドルグループの曲のサビが流れていて、ティックトック用の動画を撮っていることはすぐわかった。
「は~い、じゃあ次は伊藤ちゃん!カメラに向かって全力変顔、1、2、3!」
いきなりスマートフォンを向けられて、思わず固まってしまった。急に?そもそもまともに話したこともないのに。私が固まったまま何もできないことに気づいたのか、永瀬さんはため息をついて言った。
「あー、伊藤ちゃんってこういう時ノリ合わせられない系?めっちゃしらけてて萎える。」
は?何なの?別に、ノリとかないじゃん。そっちが勝手にやっているだけで。そんなことを思っても、口には出せなかった。
「今伊藤ちゃん変顔してなかった?え、普通に真顔か(笑)てかこれは花音が悪いよ~!人選おかしいって!普通にいじめになっちゃうからやめたげて(笑)」
横から入ってきた別のクラスメイトの一言が気に入ったのか、永瀬花音は
「確かに(笑)伊藤ちゃんごめんね~。」
と笑いながら教室を出て行った。
何回思い出しても腹が立つ。私のことを舐めていることが、永瀬さんの態度からありありとわかる。でも。もしも、もしも私が魔法少女になれば。全部が変わる。今の日本では、害獣を駆除する魔法少女は英雄のような扱いだ。テレビの広告やバラエティに出ている魔法少女だっている。以前は漫画やアニメの中でしか存在しない架空のキャラクターだったが、今では中高生の選ぶ憧れの職業ランキングで5年連続1位を独占している。私が魔法少女になって有名になったら、みんなどう思うんだろう。芸能人の友達ができて、国民全員から感謝されて、もしかしたらドラマとかにも出たりして。無理だってわかっているけど、美由ちゃんがいなくて暇なこともあり、魔法少女として生きる自分の妄想を一日中していた。




