私が憧れの魔法少女!?1話
鏡に映った私の濡れた顔には、また新しいニキビができていた。最悪だ。親や「親戚は思春期だから。」「中学生のうちはみんなそうよ。」なんて言う。みんなじゃなくて、今私に起こっていることについて悩んでいるのに。適当にタオルで顔を拭きリビングに向かうと、お母さんが朝食を用意してくれていた。用意と言っても、いつもと同じ焼いただけのパンとジャム、アロエのヨーグルトが置いてあるだけだけれども。朝食のプレートの横には、100均で買った無地の巾着に包まれている弁当もいつも通り置いてある。この巾着もそろそろ変えたい。クラスの人で巾着なんて使っている子はもうほぼいない。みんな英語が書いてあるおしゃれランチバッグだ。
「まだご飯食べてなかったの?時間大丈夫なの?遅刻しないでよ。」
と母が言った。この言葉に「うん、わかっている。」と返せば、これもいつもの会話だ。
「そういえばね、今日学校から帰ってきたら港南台の叔母さんのところ行くからね。この週末向こうに泊めてくれるって。」
初耳だ。
「え、なんで。土曜日に演劇部の休日練あるって言ったじゃん。勝手に決めないでよ。」
「しょうがないでしょう。最近害獣駆除の件数増えているんだし。智恵子叔母さんの方から泊まりに来なさい、って言ってくれたのよ。」
ほら、と母がテレビの音量を徐々に上げると、国営放送のニューストピックは交通事故から昨日の害獣駆除に関する内容へと変わろうとしていた。
「…の午後20時頃、東京都江戸川区にて害獣が出現しました。7月に入ってから6体目の害獣です。体高は約49メートル、体重は5.9トンとされていて、警視庁公安部魔法少女機動隊により駆除されたとのことです。」
テレビには駆除した本人であろう魔法少女2人の顔が映し出された。
(つり目の子の方、よく見る子だ。コスチューム赤色なんだ……。いいな~。私は赤似合わないから、着るとしたら水色とかがいいな。)
「やだ、もう6体目だって。まだ7月……16、いや、17日だっけ?なのにね。お母さんが若い頃はこんなに出なかったのに。」
お母さんが昔話を始めると長い。ヨーグルトを喉奥に流し込み、ごちそうさまと言って立ち上がった。なんやかんやで、あと10分もしない内に家を出ないとまずい。急いでお弁当を鞄に詰め込むと、筆箱についている鏡音リンとレンのキーホルダーに当たって音が鳴った。あ、黄色のコスチュームもかわいいかも。そんなことを思いながら鞄の中を少し整理して、エイトフォーを全身に振りかけてから家を出た。少し湿った、生暖かい風が頬に触れた。いつもと同じように、駅に向かう。隣の家の番犬注意のステッカー、地元の掲示板に貼られたスペイン語教室の生徒募集のチラシ、ずっと閉店しない小さなタバコ屋。目に映る物、聞こえる物全てがいつも通り。ただ違うことは、自分のおでこに大きなニキビがあることぐらいだ。それが私だけ欠陥があるんだと言われているようで、たまらなく嫌に感じた。




