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妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ  作者: 下菊みこと


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無事で良かった

次はお兄様視点

僕はすごく後悔している。父上と母上の言うことを聞いておけばよかった。


放課後、エレナがいつまで待っても来ない。迎えにいくともう教室を出ていた。真面目なエレナが皇太子妃教育をさぼるなんてあり得ない。


まさか誘拐か?僕は自分が青ざめるのがわかった。とにかく落ち着いて、冷静にならないと。


僕はマックスの元へ急いだ。


「マックス!エレナは帰ってきていない!?」


「帰ってきていません!エルが魔力不足でぐったりしたのでエレナの兄である俺の魔力を与えました。エレナからの魔力の供給が止まっています!ただ、エルが消滅していないので無事だとは思いますが…」


とりあえずエレナ本人は無事なら良かった…本当によかった。はやく探し出してあげないと。でも、突然エルに魔力の供給が止まるなんて…何があった?


「本人は無事なのに魔力の供給が止まる…魔力封じか!魔力膨張症の危険があるな…一応エレナは父上から魔力膨張症の際に飲む薬は貰っている。僕は追加で父上から魔力膨張症の薬をもらってくるから、マックスはエレナを探して欲しい」


「もちろんです。エル、エレナの匂いを辿れるか?」


「みゅう!」


エルがいて本当によかった。エレナの無事はエルの存在で確認出来たし、匂いも追ってくれるし。


「じゃあ、僕は急いで皇宮に戻る。すぐに薬を持ってくるから。マックスはまずは学校内から探して欲しい。頼めるかい?」


「わかりました。私も急ぎます」


「頼んだよ。…ごめんよ、不甲斐ない皇太子で」


「何をおっしゃる。エレナの選んだ男です。今からでもエレナを救ってくださると信じていますよ」


「それはもちろんさ」


僕は急いで皇宮に戻る。父上と母上はすでに僕についている影から連絡を受けたらしく、魔力膨張症の薬を持ってきてくれた。


「父上、母上。やはり、お二人の言うことを聞くべきでした。エレナの自由を尊重するあまり、選択を間違えました。申し訳ございません」


「クリス。今はとりあえず余計なことはいいから、エレナを助けることだけを考えなさい。あとで幾らでもお話はできるからね」


「エレナはきっと心細い思いをしているはずです。母はクリスがエレナの心を救うのを信じていますよ」


「…はい。お任せください」


魔力膨張症の薬を預かって、急いで学園に戻る。マックスがちょうど旧校舎から出てきたところだった。


「皇太子殿下。魔力封じの魔道具の効力を打ち消すための、別の魔道具をセバスチャンから渡されたので持ってきました。これですぐにエレナを助けられます」


「君のところの使用人は本当に優秀だね」


「調べましたが、新校舎にも旧校舎にもエレナはいません。学内にいるとするなら、後は体育館くらいかと。学園には事情を話して鍵は預かっていますので、行きましょう」


「ありがとう。こっちは魔力膨張症の薬を預かってきた。すぐに対処できると思う」


「みゅう!」


体育館に向かう。中に入るとエルが鳴き出した。


「みゅう!みゅう!」


そして真っ直ぐに倉庫に向かって飛ぶ。その様子に僕とクリスはここにエレナがいるのだとすぐにわかった。


「マックス!」


「はい!」


マックスが倉庫の鍵を開ける。真っ暗なその中にはエレナがいた。マットの上でブランケットを掛けて、ぐったりしている。


エレナに駆け寄ると、意識はまだあった。そんなエレナに薬を飲ませる。


そして、マックスが魔力封じの魔道具の効力を打ち消すための、別の魔道具を使ってエレナを解放する。これでもう大丈夫だ。


そうすると、安堵からか泣き出すエレナ。お礼を言われたが、僕がエレナに影をつけることを反対したせいで起こったことなのでいたたまれない。


それでも、ここでそんなことを言っても仕方がない。エレナの涙を僕のハンカチで拭って、安心させるように微笑んだ。


生きていてくれてありがとう。これは紛れもなく本心だ。


お姫様抱っこでエレナを連れて帰り、マックスの屋敷に戻ってエレナを自室のベッドに寝かせる。


「マックス、こんなことになったのは僕の責任だ。本当にごめん」


「いえ。エレナも皇太子妃教育を受けている以上、覚悟はしていたでしょうから。大丈夫です」


「それでもごめん」


「…エレナが恨んでいないのに、私が皇太子殿下を恨むはずもありません。許しますよ」


マックスに、子供の頃のように頭を撫でられる。


「本当は皇太子殿下も不安でいっぱいだったのでしょう?よく頑張りましたね」


「…僕は自分が不甲斐ない」


「大丈夫です。皇太子殿下がエレナのために心を砕いたのは、私が誰よりも知っていますよ。皇太子殿下は本当によくやってくださいました」


こういう時にはやっぱり、マックスが幼馴染でよかったと思う。


「…マックス。エレナに皇室の影をつけようと思う。エレナにも目が覚めたら直接僕が言う」


「ええ。わかりました。あまり気負う必要はありませんからね」


「ありがとう、マックス。エレナの目が覚めるまでお邪魔していいかな」


「もちろんです」


すかさずエレナのベッドのすぐ近くに、二人分の椅子が置かれた。僕とマックスはそれに腰掛ける。


「エレナはいつも、笑顔で皇太子殿下とのお茶会の話をするんです。皇太子妃教育を受けるのも楽しいようで、いつもご機嫌で帰ってくるのですよ」


「ふふ、エレナは本当に新しいことを知るのが好きだよね。お茶会の時なんて好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと。なんでも聞いてくるよ。それだけ僕に興味を持ってくれてると思うと、悪くはないけどね」


「うちの妹のそういうところがとても可愛いと思います」


「僕もそう思うよ」


僕達はエレナが目覚めない焦りを会話で誤魔化した。エレナにはやく目を開けて欲しい。

クリス頑張りました

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