有象無象にエレナを取られてたまるか
クリス様、いよいよ糖度マックス。
エレナのダンスパーティーのパートナーになることが決まってから、僕はエレナと何回もダンスの練習を積み重ねた。
エレナはダンスがとても上手で、僕達は練習だというのにすごく楽しくて時間を忘れて踊り続けた。
そして、ダンスパーティーでエレナが着るドレスと装飾品とダンスシューズを贈る。
当日のメイクや髪型も準備したかったが、それは遠慮された。ちょっと残念。
そして迎えた当日。きっちりと準備をして、かっこよく正装に着替えてエレナを迎えに行く。そして僕は現れたエレナに思わず見惚れてしまった。
ー…美しい。
やっと意識が現実に戻ってくると、僕は微笑んで控えめにエレナの頭を撫でる。そして、マックスに促されて馬車に三人で乗り込む。
マックスにも結婚を促すが、マックスは頑なに拒否。そしてさらっとエレナにアピールする僕。
顔を赤くして僕から逃げるように視線を彷徨わせるエレナが可愛い。そんなエレナを見つめる僕にマックスは何かを悟ったらしく驚いた表情を見せて、微笑んだ。
入場すると、先に入場していた奴らが一斉にこちらを向く。噂話をしながらエレナを値踏みしているらしい。
ふとエレナが僕を見上げた。おそらく噂話の出所が僕かなと気付いたんだろう。にこりと微笑んでごまかす。
そしてエレナとファーストダンスを踊る。世界が今、この瞬間だけを切り取られているような不思議な感覚。
ただエレナだけを見つめて、ダンスだけに集中する。その短い時間が永遠に続く錯覚を受けた。
けれど、時は誰にでも平等にやってくるもの。ファーストダンスは終了して、僕はエレナと一緒にマックスの元へ戻る。
お兄様は踊り疲れただろう僕達のために、シャンパンを貰っておいてくれた。エレナと共にシャンパンを飲んで喉を潤す。
ほっと一息をついて三人で話していたところで、エレナのクラスメイトが近寄ってきて、そのままエレナにダンスのお誘いをする。
…させないよ?
「ごめんね。この子は僕だけの特別な人なんだ。他を当たってくれるかな」
僕はそう言って、エレナを抱き寄せる。
「く、クリス様!」
「し、失礼しました!」
その様子を見ていた貴族女性達の、きゃーきゃーという黄色い声があちこちから聞こえる。マックスは頭を抱えていた。
「ごめんね、エレナ。君を他の男に取られるのは僕には我慢ならないみたいだ」
エレナの頬にキスをすれば、それを見てさらに会場中から大歓声。マックスは困り果てた様子でため息。仕方ないじゃん。エレナが可愛いんだもの。
すごい騒ぎになったが、大人しくしていれば騒ぎにも収まって、いつもの二人とも合流した。
マックスと彼女達は和気藹々とした雰囲気。僕は除け者かな?その後いつも通りわちゃわちゃと騒いだ。やっぱり楽しいな、この二人。
クリス様、次回がんばる。




