転生 〜現状把握〜
※スマホの方は横に傾けることを
推奨します。
〜場所の確認〜
探知・探査・索敵系のスキルを発動させ、
周囲の安全確認のついでに「スキルを発動・使用可能か否か」の確認もする。
結果、問題なく発動し、周囲に生命体はいないことがわかった。
また、ここが山らしきモノの地下深くにあり、
この辺り一帯に広がったアリの巣のような地形であることもわかった。
落ちていた石を拾いあげ、眺めて呟く。
「…特に何の変哲もない普通の石、だな。
で、壁とかの表面は少々濡れていると…。
深さも合わせて考えると、ここは洞窟、かね…」
ー 天然ものの洞窟にしては随分と規模が大きいな…
とはいえ住むには深過ぎて不便に思えるから、人工である可能性も低い…。
っと、それもそうだが…
「この光ってる鉱石は何なんだ…?
あっちの世界では見たことがない。
…やはり、ここはあっちとは違う世界であるのは間違いない…」
ー となると、この世界に魔物や危険生物がいたとして、
俺の基準とは合わない可能性もあり得るな…
〜自分の身体確認〜
現在、俺は竜形態【警戒レベル1】の状態。
これは、『竜形態』と『ヒト形態』を切り替えることが可能な、
竜人族、というよりかは竜族の持つ特殊な能力によるもの。
【警戒レベル】はレベル0から5まで存在し、
戦闘状況に応じてレベルを変更でき、高いほど鱗などの強度・硬度が変わる。
レベル1でもたいていの戦いには応戦できる。
…はずだと、思っている。
先程、一応スキルの発動・使用は確認したが、
他のスキルや能力もきちんと使えるかはまだ不安なのだ。
なので、もしかしたら人になれない可能性もありえる。
「ま、その時はその時で。
さて、スキルとかに変化はあるのかね…」
ー もし、仕組みが同じなら…。
……個体情報、開示。
そう唱えると瞬時に俺の脳内に俺に関する情報が羅列される。
ー 見る方法は同じか…
《個体情報》
名前:クロウ・ミクリネウス=レガセンダ
種族:神竜人族、真天使族
職種:竜王、頂点に立つ者、英雄、平和を求む者、探求者、調停者、神の御使い
スキル:竜王ノ絶対王政、竜王ノ庇護、英雄ノ覇道、剣聖ノ剣撃、探究ノ果テ、
平和主義、神トヲ繋グ者
特殊スキル:魂滅の咆哮、王者の覇気、超速の一閃、一点集中、
竜化・ヒト化、思考高速化、高速演算、並列思考、万物収容、
神の代行、神通力、入魂の神技
サブスキル〔最大lv.15〕:魔力感知 lv.15、魔力操作 lv.15、剣技 lv.15、
鑑定 lv.15、探知・探査・探索 lv.15、統治 lv.10、速読 lv.10、
高速移動 lv.10、器用 lv.9、教授 lv.9、社交 lv.9、 書類処理 lv.9、
仮眠状態 lv.9、家事 lv.9(内訳:調理 lv.8、洗濯 lv.5、掃除 lv.4)
となっていた。
ここでようやく、俺は自分の名前を再認識した。
「そうか、俺、
『クロウ・ミクリネウス=レガセンダ』なんて大層な名前だったか…」
レガセンダとは俺の国の名前である。
元首として、名前にも国の名を付けるべきかと思って付けた。
そう思い返しながら、ステータスを眺める。
「ほとんどは死ぬ前と大きな変化は無いみたいだな。
職種の『竜王』や『探究者』は前からある。
大半が最大lv.に差し掛かりつつあるサブスキル群も変化なし。
…ん?『仮眠状態』なんていつの間に…。」
ー 今はいい、後で確認しよう。
あと、『平和主義』なんてスキル(果たしてスキルといえるのか)、
前まであったか…? いや、それよりも問題なのは…
『ほとんど変化はない』。
そう、ほとんどは。
いくつか身に覚えのないものがあった。
職種『神の御使い』、『調停者』、
スキル『神トヲ繋グ者』、
特殊スキル『神の代行』、『神通力』、『入魂の神技』
これら『神』の名の付くもののことである。
「何なんだこれらは…。詳細はどうなってる…?」
〜職種〜
・『神の御使い』
神と会話し、神と下界との橋渡しを可能にする者。
「…何の捻りもなくそのまんまだな…
割と、いや、かなりの大役じゃないか…?
前世だと『聖女』とかがこういう職だった気がするが、
俺でいいのか…?」
・『調停者』
神の命により、世界の安定を課された者。
「…『課された』ってどういうことだ?俺は何も知らんぞ…。
…まぁいい、今は保留でいこう。
次、スキル」
〜スキル〜
・『神トヲ繋グ者』
職種『神の御使い』たる者が持つ力。
「神の召喚(尚、神の気まぐれによる)」、「神との対話」、
「『神の力』の貸し受け」、「『神の力・加護』の一時的付与」、
「『神の力』による回復・欠損部の再生」、が可能。
想像以上にえげつない内容の代物だった。
ー なんだこれは…容易に表には出せないな…。
てか、何だ『神の気まぐれによる』って。
簡単に会えないのは分かっているけれど
大事な時に使えなかったら意味が無いぞ…
「ただ、『欠損部の再生』は他人にも使えるのなら、役に立つな…。
『蘇生』はできないんだな…。
神の力とやらでやろうと思えば出来てしまいそうだが…。
まぁ、そう簡単には無理か。
『神との対話』…これを使えばなぜ俺がここで生きているのか聞けるな…」
〜特殊スキル〜
・『神の代行』
職種『神の御使い』、『調停者』、
スキル『神トヲ繋グ者』に呼応する特殊スキル。
『神トヲ繋グ者』の制御的スキルでもあり、「神の力」を使用するのに必要。
・『神通力』
種族『神竜人族』、『真天使族』と、スキル『神トヲ繋グ者』に呼応。
神の力によって「物体の浮遊、操作」、
「一時的な時空間操作(使用者以外の全てのモノに対して有効)」が可能。
・『入魂の神技』
職種『神の御使い』とスキル『神トヲ繋グ者』に呼応する。
スキル所持者が造形したもの(素材を問わず)に入魂をすることができる。
尚、入魂する魂の性格等はある程度の調整が可能。(入魂後の調整は不可)
また、一度死んだ生物の魂を回収・保存・保管し、
新たな体に入魂することも可能。ただし、この場合は魂の調整は不可。
これらは先のスキルなどに付随するモノのようだ。
なるほど、改めて見てみると、
確かに種族が『神竜人族』、『真天使族』と見たことのない種族になっている。
『神竜人族』、『神』の字があるということは
種族にも何かしらの神の関係はあるのだろう。
ー しかし…、『真天使族』?
俺の知る『天使』は翼をはやしたヒト型の種族だったはずだが…
今の俺は、竜形態なので、
『天使』のような翼でもなければ、もはやヒト型でもない。
だが、そんなことはお構いなしに種族には『天使』の字がある。
姿には関係ないのか、『天使』の定義がここでは異なるからなのか、
それとも、『真』があるから普通の『天使』とは違うだけなのか。
ー どちらにせよ、今考えても分からんな…。
後で「神との対話」使って聞くときについでに聞こう。
それにしても、『時空間操作』?
本人には効果がないみたいだが、面白い能力だな。
『入魂の神技』か…。あれだな、完全自立稼働のゴーレムとかが造れるな…
どこか、ワクワクした自分がいることが否めない。
ー だがまぁ、今はこれでいい。
ひと通り見たから、確認は一旦終了しよう。
「神との会話」を起動して、もっと詳細を……
突如、
「キャァぁぁあアァァアぁああぁぁ!!」
「「うわぁぁアアァぁあぁぁぁああ!?!」」
壁面に反響し、奇妙なハーモニーとなった絶叫が聞こえてきた。
「おいおい…何だ…? さっき周囲確認した時、
探知系スキルに反応は無かったんがな…」
もう一度、探知系スキルを『発動』。
…反応あり。発声場所はかなり遠い。
ー 言葉で悲鳴を発するということは
知性のある生命体が他にもいたのか…!
これで『この世界が死後の世界である確率』は
ほぼゼロに等しくなったな…
よく耳を澄ましてみる。
ー 響く足音から推測してヒト種。
さっきの声からして、女が一、男が複数…。
洞窟に来るということは冒険者か阿呆か探検家…。
冒険者だとすれば、恐らく討伐任務か何かなのか…?
とすれば、ここは洞窟ではなく天然の迷宮なのかもしれない。
ともかく、
ー 何が起きたってんだ…
大ごとでなければいいのだが…
悲鳴を聞いといて何もしないのは癪なので、せめて確認を、と、
竜王 クロウ・ミクリネウスこと、俺は
のそりと竜の巨体を起こし、動き出したのだった…。