転生 〜前世回想〜
※ 一行をパソコン版の最大文字数に
合わせて改行していますので、
スマートフォンの方は縦読みよりも
横に傾けた方が読みやすいかもしれません。
ー …暗い
見えてはいる。だが、見えるのは闇。
ー ひどく冷たい…
全身が冷水に浸かっているかのように。
ー 身動きが、とれない…
押し固められているように。
ー でも、漂う様な感覚がある…
冬夜の海底のように。
ー 何が起こっている…? ここは一体…
刹那ーーー
ー …ッ!? グォォァアァァッ!?
強烈な力で無理矢理に引き上げられる感覚。
否、上がっているのか下がっているのかは、はっきりとはわからない。
だが、とにかく強烈な負荷が体に掛かる。
冷たさも感じず、むしろ燃え盛るかの様な熱さを感じる。
火炙りにされたまま、馬車で引きずり回されるかのように…。
ー …ッぐ! ガアァァアアァァァッ!!
なお続く強烈な負荷の感覚。
暗い視界に光がチラつき始める。
星の光が次々と自分に向かって降ってくるかのように、
視界に光量が増していき、
そして ーーー
ーーー 荒い呼吸と共に目を覚ます。
「ガッ、ァァ゛ア゛ッ…ハァッ…ハァッ…!」
俺は俯けに寝そべる形で、滝のような汗をかきながら倒れていた。
「……ハァ……ハァー…、……スゥー……フゥーーー」
呼吸を整えてから首を起こし、周囲を見渡す。
所々に『発光している結晶のようなモノ』が生えた、
岩か石らしきものでできた、少し濡れた表面をしている、
不規則で緩やかな凹凸のある地面と壁面。
恐らくここは洞窟か何かのようだ。
「何処だ、ここ…。
なぜ、こんな所にいるのやら…。
…そもそも、俺は何者だ……?」
色々ぼんやりしている。
少しずつ、こうなる前の事を思い出して整理する。
ー 確か……
ー
ーー
ーーーー
俺は原初の竜人族でありながら竜王であった。
また、とある国の国家元首、詰まる所は国王でもあった。
その国は、ヒト型種族と竜型種族とが対立する世界で唯一の「連邦共和国」。
それをよく思わない周辺の国は、
国家元首かつ竜王である俺に対して戦争では勝てないと悟り、
軍事的な面ではなく経済や政治的な面での攻撃を開始し、
民衆への煽動など幾度となく我が国の秩序を乱そうとしてきた。
俺は神の定める世界法則に、
このことに対しての対策の項目を組み込もうという結論に至った。
効果は絶対的なものではあるが、
これを行う為には神域に立ち入って神と直接交渉する必要があり、
当前だが全くをもって簡単ではない。
けれど、国民のため、国のため、と行動し続けた結果…
ー ー ー ー ー
「…あ、貴方が、創造神様であらせられますか…?」
「おや…?これはこれは〜♪
予想してたより早く来たね〜。
流石は、ボクの唯一の竜人種!
ようこそ神域へ、どんな用事かな?」
そう返事をしたのは、
神服らしき純白の衣を纏い、
全てを見透かすように澄む、水色に金の差し込んだ瞳を持ち、
黒銀色の髪と、中性的な見ためをした、
ヒト種で言う少年と青年の中間ほどの、ヒト種の姿をした『神』だった。
俺は最終的に神との対面を果たしたのだ。
「…えーと……『完成品』…とは…??
いやその前に、神様の威厳が無さ過ぎやしませんか!?」
予想もしていなかった対応をされて、普通にツッコんでしまう。
「ん〜、別に敬語じゃなくても良いよ?
君はボクらと同格に成り得た存在、なんだからね〜♪」
どこか、ウキウキしたような様子でそう語る創造神。
「いやいや、創造神様に対してタメ口など…
…………え?神と同格…?」
またもや予想もしていない発言。
ー 一体どういう事だ? 俺が…同格??
タメ口を許すこともそうだが、色々と頭が追いつかない。
戸惑っている俺に対して、創造神が口を開く。
「言った通りさ。
ボクは世界とボク以外の神を含んだ生命を造った。
その中で唯一ボクが完璧と思え、手元に置いときたかったのに
不注意で下界に落っことしちゃったのが君さ。
…ところで、何か用事があったんじゃないのかい?」
「『同格』とか言われてた割に、扱われ方が何とも言えないッ!
…確かに本題はそちらではないのですが…」
俺は先の出来事を話し、
今の世界法則に「我が国の国民と領地に適用される新たな項目」を
組み込んでほしい旨を話した。
項目の内容は大きく三つ。
1,『国の秩序を乱し、国民の平和を害する行為の禁止』
2,『国内での、能力を含んだ手段による、
「魔物・動物を除く全ての生物」への一切の殺傷行為・破壊行為の禁止』
3,『「差別」を代表とする、
種族の違いによって誰かが不利益を被る言動や行為の禁止』
これらによって、今後起こり得る差別などによる問題はほぼ全て防げる。
そうすれば『共和国』として『完全な共和』が存在し、
国民が安心して平和に暮らせる。
だからこそ、何としてでも世界法則を創ってもらわなくてはならない。
そう思っていたのだが……
「いいよ〜」
緊張感の全く無い『許可』の意の返答。
「………ふぇ?」
拍子抜けして変な声が出た。
ー 今、「いいよ」と言ったよな…?
絶対に渋ると思っていたんだがこうも簡単に?
「ほ、本当によろしいのですか…?」
「うん。ホントによろしいんですよ?」
『なにか問題が?』といったような様子で創造神はそう答える。
ー か、軽すぎないか…??
「他にはないのかい? もっと言ってもいいんだよ? さぁさぁ…!」
困惑する俺の目の前にズズイと迫り、少々食い気味で聞いてくる創造神。
圧がすごいので素直に怖い。
勢いに押されつつも俺はなんとか尋ねた。
「で、でしたら……他の国にも先の世界法則を適用する、というのは…?」
「うぁーー、それか……。 うーーーーーん…
聞いといてなんだけど、それはボク自身が変えたくない設定だから無理だね」
「と、言いますと…?」
「それを変えちゃって国同士とかで争いごとが無くなると、
君みたいに『新しい思想を持って神域に来ようとする』、
そういう者がいなくなっちゃうんだよ」
「な…なるほど…?」
ー …つまり、この世界で『種族間で争いが起きる』というのは、
俺のように『それ』に対して疑問を持ち、神に会おうという結論になって
神域へ至る者を作る為と……結局何がしたいのか全く分からん。
暇つぶしか?神サマの暇つぶしなのか?
「他に願いたいこと、無いかな?」
「…確認したいのですが、
この願いが叶えられるということは、俺は命を差し出す必要がある、
という認識でいいんですよね?」
「…そうだね、いくらボクが丹精込めて造った
君といえど神様に願い出てるわけだからね…
単純に話すだけなら何も無いけど、『意見を通す』となると話は別。
君はそれ相応の代償を支払う必要がある…」
「…つまり、俺はこの後『死ぬ』という訳ですよね?
となると神域での決定事項を俺が下界に伝える方法がない。なので、
…無茶だとは分かっていますが、世界法則改変の宣言を貴方にお願いしたい」
「世界法則の宣言なんて……ボクが世界創造した時以来だよ?
というか、君が伝えることもできるよ…? って、あぁ…なるほど。
『これから死にゆく提案者』が伝えるよりも、
創造神が『宣言』という形でもって、
『決定事項』だと伝えればハッタリだと疑う者は出ない、ということか…。
わかったよ。 それで最後かな?」
「えぇ、ここまで聞き入れてもらえるとは思っていませんでしたけれど、
全てが叶えば、国民は安全、国は平和になる。
なら、もう何もありません」
「そう…。なら、もうお別れだね」
「そうですね。貴方に会えたこと、嬉しく思います」
ー 正直、神様と同格などと言われた時には
戸惑いまくったものの、それだけだ。
自分一人の犠牲だけで国が平和ならそれでいい…。
「それではさようなら、創造神様」
「…うん、またね………。 .…!-“:””#=\%]:!)/,.?+$:~…。」
創造神は最後に何かを呟いたようだが、内容も、その表情も判らなかった。
そして意識は薄れ、体から力が抜け、俺は倒れ、視界が暗転し…
ーーーー
ーー
ー
ー …そうして死んだハズなのだが、どうして目覚めるんだ…?
生きていると思い込んでいるだけの、死後の世界というやつだろうか?
それにしては、濡れた岩らしき壁とそこに生えた結晶のみの空間とは、
随分と何もないのだな…
ぐるぐると思考が回り回る。
ー とにかく、ここが死後世界だろうと来世だろうと、
創造神が関係しているのは、理由はわからないけれども間違いない。
そうしていろいろと悩むこと十数秒。
徐々に、悩めば悩むだけ無駄(というより面倒)に思えてきたので、
ひとまず、『俺は今生きている』と仮定して、
「ここは安全なのか」。
「自分自身に何か変化はあるのか」。
という、この二つの確認をすることにした。
どうも初めまして。
もしゃもしゃ、と申します。
今回、初めての小説執筆をしました。
まだまだ勉強不足であるが故に、
表現の誤りや不足、誤字等々、色々と問題が起きるかもしれません。
そういったものを、どんなに些細なことでも構いませんので、
感想や誤字報告等で伝えてくださるとありがたいです。
投稿はかなり不定期になると予想されます。ご了承ください。