モブドラゴンの、エキストラな日常。
何も考えずに、軽く読んでくださいませ!
ファンタジーや異世界系の作品における「ドラゴン」って、どんな存在を思い浮かべるかな。
ハイファンタジーでよく見かける主人公の相棒?
異世界恋愛で多いヒロインの恋愛相手?
邪竜みたいな悪役とか、世界の神様の位置にいる場合もあるよね。
まあ多岐に渡るけど、今挙げたのには、どれも共通点があるって気付いてた?
それは、ドラゴンが主役や準主役級扱いである、ということ。
だけどさぁ、ドラゴンもピンキリなんだよ。
そこそこ体が大きくて、厳つい顔付きしか取り柄のない、僕みたいな無名ドラゴンの場合は、大体単発の端役ばかりで……。
*****
「ふはははは、勇者よ。よくここまで辿り着いたな」
「魔王!」
ベッタベタにベタな、魔王と勇者の最終決戦が、今まさに始まろうとしている。
さて、今回の僕は魔王の側で勇者を威嚇するドラゴンだ。特に魔王とのエピソードはない。今回のためだけに呼ばれた。
グルルウウウウ……と歯をむき出して睨むと、恐い顔がより強調される。
「ふっ、コイツの餌になる準備はできたか?」
「ドラゴンに守られて余裕ぶっているのも、今のうちだ!」
ちょっ、ダメダメ! そんな煽らないで! この魔王様、めっちゃ気が短いんだがら!
魔王は勇者の言葉にピクリと反応し、威圧を更に強めた。
「何ぃ? 余がこのトカゲもどきよりも弱いと申すのか?」
申してない申してない! 僕と魔王様を比べた訳じゃ……あーもーだめだ。今回はまず僕が勇者と戦って頃合いを見て逃げる、楽な方の仕事だと思ったのにぃ。あのパターンになっちゃったよ……はあ。
「人間ごときに、見くびられたものよ……はああっ!」
残忍な笑みを浮かべる魔王様の手のひらに、まばゆい光が集まる。そのまま僕の左前足へ押し付けると。
ギャアアオオオオ!!!!
断末魔の叫びのように、苦しみながら吠えまくった。実際は全然元気だけど。
いてて……こういう見せしめ的な扱いの仕事が一番きついんだよ……ドラゴンからすれば、これくらいの怪我なんて大したことないよ? それでも血は出るし痛いしさ。しかも見せ場もなく、早々に退場だ。
僕は体全体を使って暴れまわる。もちろん、魔王様や勇者を避けながらだ。ここを邪魔したら、物語の進行を妨げてしまうからね。そして、できるだけ隅の方でゆっくりと大きな音を立てて倒れる。
はあ。次は異世界転生系の、駄女神に突っ込みを入れる飼いドラゴン役とかこないかなぁ。
色々詰め込みたかったけど、1000文字以内という制限ががが……!
恋愛系に強いドラゴンは美形な人型になれるのが前提条件とか、
子竜から成竜に変幻自在だと役の幅が広がってレギュラーになりやすいとか、
東洋の龍と西洋の竜はさしずめ関東と関西のノリの違いとか……
小ネタが満載だった(笑)
楽しんで書けたので、楽しんで読んでくださったなら、とても嬉しいです。