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吸血鬼のクリフト

我はクリフト、吸血鬼である。吸血鬼も生きていくには大変なのである。

この都市では、吸血鬼は亜人の一つとして扱われている。地方によってはモンスター扱いだ。


 吸血鬼は不死者と呼ばれている。老衰で死ぬことはない。ただ、ずっと生きていくと人生に倦んでしまうらしい。我はまだ90歳なのでそうでもないが、我が一族の長老などは1400歳ぐらいらしく、生きる気力があまりないそうだ。吸血鬼がモンスターと呼ばれるのは、人生に倦んだ吸血鬼が自分も周りも壊してしまいたくなって暴れる事があるからではなかろうか。

 本来の吸血鬼は理知的で思慮深い生き物だ。長生きしすぎると多少の刺激では何も感じず、ただただ思い出の中で生きているらしい。一方、吸血鬼はプライドが高いので自分の過去のダメなイベントが心を蝕むらしい。長老は黒歴史が溜まっていく困った人生だったとこぼしていた。


 そう!吸血鬼はプライドが高い。なかなか難儀だ。吸血鬼は血を吸うが美しい女性の血ばかり吸うと言われる。あれはカッコつけているだけだ。血が足りない時は不男の血でも動物の地でも飲みたくなるのだが、プライドが邪魔して美人の血しか吸わん!と言って我慢してしまうのだ。正直、青白い顔色の美人より健康的に肌が焼けた少しふとましい女性の血の方が美味しいと思うのだ。

 血の代わりに赤ワインを好むというのもカッコつけているだけだな。赤ワインと血は別物だろう。赤ワインをワイングラスで揺らすのがかっこいいと思っているだけだ。

 今日もカッコつけてここのバーの奥のVIPルームを借りて冒険者パーティの皆を連れてきておる。外の普通のテーブルでもかまわぬのだがな。自称吸血鬼の伯爵家跡取りとしては会員制高級バーは無理でも普通のバーの特別な個室ぐらいは使ってみせたいのだ。我が冒険者パーティは付き合ってVIPルームに来てくれるぞ。ただ生暖かい笑顔やしょうがないという顔で部屋に入ってくるのが少し気になる。我を哀れんでおるのか?

 プライドの高さで装備も選り好みをしてしまうな。高い防御力より吸血鬼としてふさわしいタキシードなどを選んでしまう。防御力の高い魔糸やスパイダーシルクを使えばよい装備になるのだが、貴重な糸のうえにオーダーメイドになってしまい非常に高価になる。装備として作られたタキシードなど普通は無いからな。

 あと戦闘前にかっこいいセリフを言わねば気が済まぬ。「フハハハハ、我が魔法によって灰になるが良い!」と言っている間に戦闘が始まっておる。仲間からは「スライムや植物系モンスターにセリフ言ってなんの意味があるのか」と怒られる。がだ言わねばうずうずするのだ。言わないままだと集中力が下がり、魔法の威力が下がるのだ。

たまに言い返してくれる高知能モンスターに出会う。そのような者とはちょっと握手したくなるな。


 吸血鬼は魔力も身体能力も高く、多彩な特殊能力をもつ。しかし、役に立つ能力が少ないのだな。蝙蝠に変身できるのだが使い道が少ない。逃げる時に使えるが、逃げる必要が無いように強くあるべくだろう。どこかに侵入するときに使えるが、こそこそ侵入したり逃げるスキルって誇り高き吸血鬼としてどうなのだ?霧にも変身できるが、霧になっている間は攻撃できないしな、これも侵入用か逃げる用だろうか。。

蝙蝠などを操ることもできる。敵地に侵入させてこそこそと情報収集させることができる。催眠術も使えるが自分より精神力が弱い相手にかぎる。これも情報収集に役立つ。

なんだか我ら吸血鬼は、盗賊や忍者などの調査や斥候活動を得意とする職業があっている気がしてきた。もっと堂々とした職が良いのだがな。

 他の能力として、血を操る事ができる。血を操作して剣を作って闘う吸血鬼がいるそうだ。ただ、血は我らの力の源、剣にして血が減ったら弱るのでは無いか?試しにショートソード作ってみたが、結構きつかったぞ。小さいもの、例えば鍵なんかを血でを作るぐらいならいいかもしれん。ドアを開けるて侵入する時に役役立ちそうだ。また、これも盗賊系の能力か!

 波立っていない水面であれば歩けるというのがあるな。ダンジョン内の水はほとんど静かな水面なので、これは使えるな。

 正直にいうと特殊能力を使うより普通に高い魔力を使って魔法を使った方が強いな。


 吸血鬼の弱点と呼ばれるものがある。日光に弱い。日光を浴びると灰になるというのは嘘だ。空のあるフィールド型のダンジョン階層は苦手であるな。ずっと日が照っている階層があるのだがとても困る。日傘とストールと手袋で身を守りながら戦わねばならん。日傘がタキシードと合わず優雅でないし、パーティに迷惑をかけておる。強者であるべき我が弱者である仲間に助けられるとは困ったものだ。

 ニンニクや香草のたぐいも苦手だな。ニンニクや香草がない肉料理など普通はないし、使わないように頼んでもフライパンについた匂いが移ってダメなので、肉はそのまま生で出してもらっている。肉に合う赤ワインを好むと言われながら肉料理がダメだというのは格好がつかんな。マスター!血の滴る牛肉を生でな、赤ワインを添えてな。

 あと、杭を心臓に打ち込めば死亡するというのがあるが、普通の生き物は死ぬでろう。何をいっているのだ?


うーむ、館を構えて優雅に過ごす吸血鬼には苦労がないかもしれぬが、人との付き合いが好きな我のような吸血鬼にはいろいろと苦労があるのだ。

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