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狂気に笑うもの  作者: 耳の缶詰め
4/7

仲間

 人は本来、群れて生きる生き物だ。それは、社会が形成されるよりも前からそうだ。集団で獲物を狩り、子供を産み、また集団を作り上げる。その繰り返しの結果、人という種族は大きく繁栄していった。


 誰かと共に生きるのは、その社会を生きていくためには必要不可欠なことだ。しかし、常識が変わればその考えも正しくなくなる。少なくとも、この世界で仲間なんてものを作れば、自分が死ぬリスクが高まるだけである。

 

 敵は四人。いや、正確には二人と二人。彼らはそれぞれ、二人一組で行動していた。二対二のチーム戦というのは、私も初めて目にする。子供が遊び回るのには十分なこの公園は、滑り台や中央のタコを模した遊具などがあるが、連携によって動きが変わるかもしれない。


 少しだけ興味を惹かれた私は、公園の入り口にある自動販売機に身を潜めながら、その様子を見届けている最中だった。土管裏に隠れる二人。互いに中年の女性に見えるが、中々動きが若い。何かスポーツをやっていたようだ。反対側の大木の裏には、もう一つの二人組。成人になりたてだろうか。とても若く見える。運動能力こそ相手より劣っているが、互いに互いの動きをよく見ている。おかげでフォローに回るのが早い。

 

 しばらく銃声が鳴りやんでいた公園。その沈黙を先にやぶったのは、中年チームだった。一人が土管から飛び出して走り、もう一人が成人チームがいる大木に向かって、ハンドガンを二発発砲する。牽制射撃は見事なもので、成人チームが撃ち込む隙を与えなかった。そうして走り出した中年女性が、公園の真ん中にあるタコに入り込むと、吸盤の代わりに空いた穴に成人チームの注意を引いた。


 どちらもそのまま動かないまま、また沈黙が流れる。中年チームも有利な状況を作ったとはいえ、一つの失敗が死につながることを知っている。うかつな行動をするより、相手の動きを待っている状態だ。対して成人チームは、作戦でも話しているのか、小さく話し合う声が聞こえてきた。内容まではっきりとは聞こえない。だが、最後に「ちょっと!」という言葉が聞こえたかと思うと、突然大木の裏から、一発の銃弾が土管に向かって放たれた。土管の裏にいた中年女性は慌てて身を引く。すると、発砲していた成人女性は土管に向かって走り出していった。


 その行動は、どう見ても無謀だった。タコの中にいる中年からは丸見えだからだ。私の予想通り、タコの中にいた中年が発砲すると、走り出した成人女性の首に穴を空けた。大量の血をまき散らしながら体が倒れる。勝負がついた。誰もがそう思った瞬間、もう一発の銃声が鳴り響いた。銃声が鳴った方向に顔を向けると、それは大木に残っていた成人女性のものだった。タコの遊具から顔をのぞかせた中年女性。その額に銃弾が撃ち込まれた跡が残っていると、そのまま背中から倒れていった。


 「けいこ!」

 「りん!」


 生き残った二人は、それぞれ人の名前を呼んで仲間の元へ駆けつける。既に亡骸となった体を抱きかかえると、彼女らは思い思いに涙を流し始めた。今振り向けば、互いに相手を殺せる絶交のチャンス。だがしかし、彼女たちは死体を抱きかかえたまま泣き続けていた。これがこの戦闘の終わりなのか。やがて、中年女性がハンドガンをいきなり掴んだかと思うと、それを自分の顎下に当てて引き金を引いた。その後まもなく、成人女性の方からも銃声が鳴り響いた。

 

 仲間なんてものは作るべきではない。この世界で仲間なんてものを作れば、自分が死ぬリスクが高まるだけである。私は自動販売機から体を離し、そのまま公園の中に足を踏み入れていった。

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