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祇園守紋を掲げよ 〜立花家戦記〜  作者: ワールド
歩みを進めたとき歴史は変わる。歩みを止めたとき歴史は終わる
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内助の功と忍びたち 〜古からの腕利き忍者〜

部屋に入ると平伏している男女が一組いる


「顔をあげてください」


山内一豊と妻の千代

正直どうしてもほしいのは奥さんの方だ

有名な器量人だし誾千代のそば付きにしたい

しかし、あまり評価の高くない一豊自身も俺は買っている

確かに土佐一国まで上り詰めたのは妻の器量や知恵あってのものかもしれないのは事実だがその世渡り術と卓越したものはないものの安定してきちんと物事をこなす武将として決して無能ではない

天才ではなかったが十分優秀な将だろう

当然だ

後年、明治維新にも参加し新政府の中心の一つとして力を持った土佐藩の元を作ったのだ

そうそうできることではない


「一豊殿は現在浪人とお聞きしました。しかし、あなたのような将が浪人などもったいない。仕官していただけませんか?一族郎党を全員受け入れますし千代殿には誾千代の補佐をしていただきたい」


ー 史実とは違い浪人している点はラッキーだったな。奥のことは誾千代にはできないし…千代殿に補佐役にまわっていただきたいな


「わ、私が奥方様の補佐をですか!?」


「統虎様!誠ですか!?」


「ええ、千代殿のその才覚は存じ上げておりますよ。一豊殿も良き将ですがあなたも素晴らしい」



謙遜する山内夫妻に誾千代の補佐をどうかお願いしたいという話と一豊にはやってほしい仕事があると熱弁を振るった



「…というわけだ。どうか当家にその才能を使ってくれませんか?」


「…」


「…千代」


「ええ」


改めて二人が体制を整える


「これより我ら、統虎様にお仕えさせていただきます」


「ありがとう。明日の夜堺から船で九州に戻る。大変だろうけど準備を頼む」


二人が揃って礼した横を通り部屋を出た

次は下間頼廉だ


彼は本願寺の僧でありながら武芸、政略両方に優れ織田信長を苦しめた名将だ


しかし当然顕如にたいする忠誠故に難航していた


「申し出ありがたきことですが拙僧は本願寺がためにここにおります。顕如殿のもとを離れるわけには参りませぬ」


「頼廉、私のことは気にしないでください。九州ではキリスト教が勢力を伸ばしているとのこと、本願寺の教えを広めるべきだと思いませんか?」


「私は顕如様にお仕えするのみです」


同席してもらっていた顕如も首を横に振る


ー どうやら失敗のようだな…


「残念です」


「申し訳ないですがお引き取りを…」


ここまで忠誠心を見せられては強要などできない

仕方がないだろう


「失敗か…」


「あってくれただけましだと思うよ」


重朝と軽口をたたきながら最後の部屋へ向かう


「かなり待たせてしまったな…おこってないといいけど」


「大丈夫じゃないかな」


「だといいけど」


部屋に入ると中には一人の壮年の男が平伏している


「遅れてしまって申し訳ない」


一言謝罪して入り上座に座った


「顔を上げてください」


しかし、いまだに顔を少ししか上げず低姿勢のままだ

不安になってすぐ近くに控える重朝に小声で確認する


「彼が楠木正明だよね?」


「ああ、そのはずだよ」


楠木正明

史実には存在しなかった。少なくとも現代には知られていなかった名前だ

接触した理由は初陣の際までさかのぼる


ーーーー


ー なんだ?


なんともいえない感覚を感じて俺は飛び起きた

ここは初陣から帰る途中の宿


「…」


目を閉じ意識を集中させる


「…!」


天井に感覚を感じると常に手元に置いている備前長光を抜き放つ。まだ子供の体では天井には刀が届かない。


「…ふっ!」


抜き放った刀をジャンプしながら天井に差し込む


ー 抜けないか…


足がつかないため力が入らず刀を抜くことができない俺はとりあえず刀から手を離し地面に降りる


ー 宿直は何をしてる?これだけドタバタやってなぜ気づかない?


「少しお話を聞いていただけませんか?」


誰か呼ぼうと声を出す直前に制止が入る

闇の中に誰かいることはわかってもどこにいるかはわからない


「どなたかな?深夜に来客があるとは聞いてないけど?」


声の聞こえた方向へ笑顔を向けそううそぶきつつ人影を探す

しかし全くわからない


「私、乱波楠木流頭領、楠木正明の弟。楠木正恒です」


「用件は?」


近くにおいてあった脇差しを引き寄せつつ答える


「兄上にあっていただきたい」


「仕官したいということかな?」


「ええ」


「来年紀伊へ行く。そのとき会おう」


「お待ちしています」



ーーーー



たったそれだけの会話だった

互いに疑問もたくさんあったし聞きたいことはたくさんあったのに何も聞かずそのわずかな会話のみ

だが俺は絶対の信頼を置いている

まだ無名の若者に遠いにもかかわらず会いに来た彼らを信じると決めたのだ

だから与えたのはたった一言だった


「召し抱える、領地は千石。活躍次第で加増する。どんなに目立たない陰の仕事も評価する。立花の乱波として恥じぬ働きをしてくれ」


彼は静かにそして落ち着いてこう言った


「ついに我ら楠木が表舞台に戻って参りました。それもひとえに統虎様のおかげです。我々が何代にも渡って語りつぎ、そして腕を磨いて待っていたのはこのときのため。全てを統虎様に捧げます」


ー 表舞台に戻れるかどうかはまだわからないけどな


と内心苦笑しながら一言


「おまえたちには立花山城天守付近に館を与える。いざというときには立花の当主が逃げることができるようにあらゆる工夫をせよ。」


「かしこまりました」


ー 正明は全く顔色を変えない。しかしさっきより心なしか笑顔だ。正恒は笑顔を見せてくれている。明るい性格なのだろうな


などと思っていると重朝が彼らに問いかける


「ところで楠木と言えば我々が知っている当代の楠木は楠木正虎殿。貴殿らとは関係が?」


「我らの弟です。あのような文化人として情報収集に回っています」


ー 彼は忍びだったのか。文化人にして内政官。素晴らしい書道家。位にしか思っていなかった…


「正虎は羽柴にて情報を集め続けることとなります」


「そうか、では他の者達は?」


「こちらですでに任につかせているものがおります。彼らはそのまま情報収集を続けることになります」


ー 忍者も用意できた

これは俺たちにとって強みになる

雑賀、根来の引き抜き組にも伊賀崩れの雑賀流忍者と根来流忍者が結構いる

彼らも楠木に預けよう


そんな中、重朝配下の雑賀忍が駆け込んでくる


「若様!例のお方が襲撃されました!」


統虎一行の旅は佳境を迎える

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