内政と紀伊行き ー立花家本当の船出
天正10年11月
初陣より一年が経った
「今年はどこも豊作のようでございます」
「鎮幸、苦労」
「鎮幸殿、ありがとう。下がっていいよ」
立花家当主は現在統虎となっている
過去に誾千代が家督を継ぎ立花を名乗り始めたが改めて統虎へ受け継がれ誾千代は妻であり女武将としてその補佐をしている
「義父上に何も言わないで進めていいのかい?」
「家督を継いでるんだからかまわん」
ーそういうものなのか?
立花家の改革は功を奏していた
農業においては統虎が神に頼んだ物の一つ
現代の種もみを用いた稲作によって病気に強く、味もよく、稲一つあたりからとれる米の量も増加している
ー まあ品種改良されている米の方がこの時代の米なんかより優秀だからな
ー 水田への鯉の放流、塩水での種もみの厳選方法や揚水機の開発と設置も順調か…
この時代の収入は基本米だ
小説などでありがちな
戦国時代に来ちゃったから硝石と石鹸と椎茸栽培で大儲けしつつ米の収穫高を増やします!
なんてのは現実問題不可能だ
硝石は制作可能だが制作に4,5年かかる上に少量しか取れず鉄砲を大量使用する場合売る程多くは作れない
石鹸は軟石鹸しか作れない上にこれで病気を防げるといってもウイルスや細菌の概念のない戦国時代では定着しにくく理解されないだろう
椎茸はそもそも種菌の制作が不可能だ
農業も当時の脆弱な品種改良のされていない米では通常通り取れる年より凶作の年のほうが多かっただろう
統虎は軟石鹸と硝石を一応作らせたものの領内で拡大させつつ全く違う金策を考えていた
「これがサトウキビだ」
「これを育てろとお命じになられたのは何故にございますか?」
「サトウキビからは砂糖を作ることができる」
「…!!!!!」
「なるほどこれを専売すr…」
「統虎!砂糖だと!?」
「「!?」」
サトウキビの説明をしていた統虎、その説明を受けていた由布惟信も驚く
「ぎ、誾千代?どうしたんだい?」
「何でもない!」
「…」
「…」
「…(退室してもいいのだろうか…汗)」
「…南蛮菓子作ってあげようか?」
「!」
その後カステラを作ってあげたら恩賞にほしがるものが増えた
ー より大規模に作らないと砂糖足りなくなるぞ 汗
そんな生活をしていたある日だ…
「統虎、誾千代、今年の内務見事である」
「ありがたきお言葉」
「父上、兵糧の方も用意できております」
「それは何より」
ー 義父上は隠居なさったというのに戦では現役…さすがだな
しかしいずれなくなる…早急に人材がいるな…
「統虎」
「…は、はい!」
「おぬし南蛮船を作らせているらしいな」
「あ、はい。わが配下唐安に命じすでに完成済みです
乗せるための大筒が完成しておりませぬがいずれできるかと」
「ふむ…それで?」
「は?」
「お主この船を使ってどこへ何をしに行くつもりじゃ?」
「…お見通しでしたか」
現在この世界における畿内は史実とは違う様相を見せている
天正10年6月
本能寺の変にて信長、信忠父子が倒れ山崎の戦いにて明智光秀が羽柴秀吉に討ち取られた
ここまでは史実通りだ
しかし時代は大きく変革していく
その後清洲会議を経て秀吉が信忠の嫡男を担ぎ上げるもののこれを織田信長の3男信孝が討ち取りさらに信雄が仇討ちとばかりに彼をなき者にした
その後秀吉への反発を強め秀吉方と信雄、勝家方へと別れる内戦が起こる
賤ヶ岳にて一戦交えたものの決着はついていない
ー 史実より秀吉は苦戦しているようだ
「…さらにそれだけでなく一部の家臣団はこの権力争いの課程で命を狙われた結果家臣団の列から追われているとのことです」
「それは聞き及んでおる」
「はい、そのために苦境に立たされている。あるいは不利益を被るかもしれないものたちを集めて参ります」
「三島村上と雑賀衆か…」
「いかにも」
「待て。統虎、父上、三島村上は私にもわかる。彼らは羽柴と結んだ毛利に今まで通りついていれば帆別銭の特権を失うだろうからな。
しかしなぜ雑賀衆なのだ?」
「雑賀衆は一枚岩ではない
織田との友好関係を築こうとしていた親織田派と退去してきた顕如を大将として独立を維持しようとする独立派だ」
「統虎の狙いは親織田派の雑賀衆の接収だろう」
これを聞きこれに由布が尋ねる
「しかし大殿(道雪)若殿(統虎)、織田と友好関係にあるのなら織田の元へ行くのでは?」
これに小野、十時等が賛同する
しかし統虎が続ける
「そうはならんさ。織田は傾きつつあるし羽柴がよいかと言えばこちらは正当性がない。利を諭せば勝算はあるさ」
「では紀伊へ行くのだな?」
「はい、義父上」
ーさすがは義父上
飲み込みが早いな
「よかろう、ただし誾千代も連れて行け」
「わ、私ですか!?父上!?」
「そうだ、わしがこの立花山を守る。よく見聞して参れ」
「かしこまりました」
「3月ほどで戻ります。それと…我が弟も連れて行きます」
「うむ、許可する。存分に行って参れ。ただし行くからには必ず先に挙げた新たなる家臣たちを従え参上せよ
できるまで帰ってくるな」
「「かしこまりました」」
こうして統虎、誾千代夫妻の紀伊行きが決まったのだった
そしてここから彼らの波瀾万丈の人生が幕を開けていく…




