戦の始まり 〜猛将の集い〜
大友国境付近まで進出してきた今泉軍は2万の兵の行進を止める
理由は当然立花軍がいるからだ
「今泉は予想通りきたか…」
ー こちらに転生者本人が来ていないのは聞いているけど…
「油断は禁物ですな。ましてや兵数では劣る。各陣に徹底させましょう」
心の声を聞いたわけではないだろうが副将の家忠が発言する
「とりあえず大筒の設置を進めてくれ。どうなるかわからないからな」
「すでにはじめさせています」
重政が答える
根来出身の若者で本陣付きを担当している彼は周りからすれば大出世に見えるだろうが史実を知る統虎と重朝はその利発さ等をとても高く買っている
間違いなく名将となる人材だ
陣幕の中へ兵が入ってきて正恒に耳打ちする
「龍造寺の方を調べさせていたものからです。組織だった抵抗が始まっているようです。各地で龍造寺の血を引く者がそれぞれ戦っていると」
「そうか…ならば我々は戦わずして引くことになるかな?」
「追撃はしないのか?」
「誾千代も島津の話は聞くだろう?追撃でも手痛く叩かれかねない。当然何も考えず追撃したら…だけどね」
周りを見渡し下知する
「家忠、例の部隊を試してきてほしい。副将として一豊、重政は本陣大筒隊指揮…と言っても今回は使わない可能性が高いかな」
「やはり攻城兵器ですから」
「というか今回は大筒を使う策ではないってだけさ。野戦でも使えるという俺の意見は変わらないよ」
「同感ですね」
現代的感覚を持つ転生者の二人はそう答える
「さて、敵は間違いなく引き上げる。彼らの後方からの反撃は対して驚異じゃないだろうが対応を間違えると今泉の評判が落ちるからな」
「追撃戦か…」
「ただし敵には島津がいる。撤退戦も気が抜けないだろうね」
「策が必要ですか…」
「立ててある。爺」
重光に地図を出させる
広げた後重光から紅茶を受け取り一口飲む
「追撃が始まれば敵はおそらく街道を塞ぐように広く殿を展開するだろうね。山に挟まれた道だからそんなに広くない。可能だからそれが普通だ」
「その通りですな」
「そしておそらく釣り野伏だろう。故に一手打つ。おそらく野伏隊は街道が山道になる前の茂みにいる。山道に伏せるのは予想しやすい。からその前の油断しやすいポイントに置く」
「同感ですな」
「それを襲撃する。戦闘開始直後に潜ませていた騎馬隊を茂みに突っ込ませる。指揮は忠興だな」
「その後は?」
「誘引を防ぐため乱戦に持ち込み、引いて射撃を繰り返す。追撃としては少々甘いが安全に行きたいからね」
「御意に」
「家忠、まだあれだけの部隊は完成していない。通常の騎馬隊と混ぜて使ってくれ」
「かしこまりました」
「明日朝は霧が出そうだ…諸将気をつけるように伝えてくれ」
「なぜ夜は仕掛けない?さすがに主力は夜のうちに退かれてしまうぞ」
「だとしてもあの島津に夜仕掛けるのは避けたい。朝は…無傷で送るわけにいかない以上霧が濃くても追撃する」
護衛と同時に楠木衆の取り次ぎ役を担当している正恒が一人の男を連れてくる
「旦那様」
「首尾を聞こうか」
翌朝
「予想通り霧が濃いな…」
「伏兵の発見が遅れるな…」
「天候は変えられないさ。仕方がない」
「…鉄砲の音がするな。追撃が始まったようだ」
誾千代と敵陣の方角を見つつ話し合う
本陣の陣幕から少し出たところにいた彼らは高速で近づいてくる騎馬武者を見つける
サラブレットに乗った伝令だ
「申し上げます」
声を聞き家忠、一豊が陣幕から出てきた。重朝は中からだがこちらの様子を注視している。重政は大砲の様子を見に行っている。そして重光は馬の調子を確認中だ
「小野鎮幸様より報告です。敵軍2万全軍が撤退せず陣を敷いております。すでに各陣で開戦したとのことです」
「何だと!?」
誾千代が声を上げる
そのほか武将達もほとんど驚きの色を隠せない
しかし家忠だけは冷静だった
「裏をかかれたのでしょう。我らを蹴散らすのは容易い。故に一戦交えてから退くということでしょう」
すぐに統虎たちの頭も回りだす
「まずい…追撃戦に備えて忠興殿がすでに例の茂み付近に近づいている。孤立させてしまったぞ、統虎!」
「家忠、例の部隊を先鋒と合流させろ。忠興は指揮が上手い。前線を優位に進められればそこを抜けて戻ってくるだろう」
「すぐに出立しましょう」
百戦錬磨の猛将は立花の秘密兵器ともいえる部隊とともに前線へ向かう
「長秀と連貞へすぐ後詰めできるようにと伝えろ」
「少数であろうと我ら立花は負けない。そのためには常に主導権を握らねばならん」
「ああ、策では完敗したが戦には俺たちが勝つ」
「これはやられたな」
忠興は騎馬隊250とともに潜伏していた
しかし霧が薄まって見えたのは万全の体制で構える今泉軍
そのど真ん中にいるのだ
「忠興様!いかがなさいますか!?」
「ううむ…」
ー すでに先端は開かれているようだ…
俺の軍へ心配無用ときちんと言い渡しているが俺が孤立していることがわかって士気が下がっているだろう
軍の指揮官が奇襲するつもりが敵中に取り残された。さらに当初の策は破綻し大軍相手に真っ向勝負するという状況
細川軍の士気低下を心配する忠興
「まあ、どうにもならんな」
馬首を立花側へ向ける
「今泉の陣を突破し当家の軍と合流する!」
猛将細川忠興は合流に向かう
唯一の幸運は今泉家は彼らに気づいていなかったし予想もしていなかったことだろう
「これは仕方があるまい」
前線で槍を振るいつつ鎮幸がつぶやく
誰もが撤退すると思っていたのだ
むしろ念のためと統虎が放たせていた楠木、雑賀の乱波が朝方に気づき知らせてくれた。十分すぎるだろう
「どうにも統虎様は相手が悪い」
先の戦でも従軍した鎮幸だが彼は婿入りした彼を認めていた
初陣でも手柄を立てていた若き当主は人生二回目の戦で見事な撤退戦を指揮している
「本当は我らが厳しく指導するつもりじゃったがな。我らの予想以上に優秀で必要がなかった。嬉しい誤算じゃ。故に…」
槍を一閃して一気に二人を討ち取る
「あそこまで優秀な統虎様と誾千代様に連続で負けの屈辱を与えるわけにはいかんな」
今回敵の動きを見抜けなかったのは彼らのせいではない
自分たち歴戦の家臣が気づかなければいけないことだったと恥じている
「親方様、申し訳ございません。ご息女と婿殿の経験不足を補うには不足でありました。しかし…」
道雪へ謝罪の言葉をつぶやく
しかしその顔は笑っていた
彼のやる気がよくわかる
屈強なアラブ種の馬
統虎が連れてきた素晴らしい馬だ
従来より速く、強く、怯えない
彼は素晴らしく気に入っていた
そんな愛馬もやる気十分だ
「なんとしても勝ちを献上して見せましょう。素晴らしき主君に恵まれたのです。ここで勝って帰らねば留守居や他方面の者に示しがつかぬわ!!」
強兵同士の戦いが始まった




