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一億分の一の小説  作者: 成瀬諒太
一章 『此処から』
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5話 『運動後の運動』



近づいていくと香るいい匂い、そこにどんなものがあるのか想像が胸を膨らませる

いつものように黄色に輝くそれは今日はどんなものなんだろうか、期待が俺の足を動かした


運動した後、ましてや朝食前にあんな激しいことをするとお腹はぐ〜という悲鳴をあげていた

まぁ、シャルと勝負っていうか朝の体操?っていうのかなんていうのかそれは楽しかったし、今から彼女の作った朝食を最高の状態で食べることができるのはとても嬉しいことだ


右の角を曲がって、そこにそれはあった



「うぉーー!?」



ただの一般的な朝食だ。鮭の塩焼き、白ご飯、味噌汁、お母さんが作ってくれるごく普通の朝ごはんだというのに、ここにあるものはそれとはまた別物だった


どれもが美味しそうで輝いて見える。鮭のいい感じに焼けた姿、煙を漂わせる熱々のご飯、いい香りのする味噌汁、どれもが食欲をそそるものだった


シャルだって毎朝しんどいだろうに、毎日人数分のご飯を作るのはかなりの重労働だろう。

まぁ、一様もう一人手伝ってくれてる人がいるんだけど、ほぼそいついらずの朝食だ



「おぉ、大和。どうや俺が作った朝ごはんは。ついつい声を上げてしまうほどの輝きを放っとったようやな」



関西弁かおるしゃべり口調と、ニタニタとした笑い顔とともに一人の青年がそう言った

黒と茶色のツートンカラーの髪型プラスに青い眼鏡、それを見るとどっから見てもアホそうな顔つきだ

なのに、なんでこいつがシャルと一緒に毎日三食ご飯作ってんだよ!



「んなわけないだろ拓人!お前一人が作ったならまだしもシャルがいたからこそ作ることのできたものだ。必ずしもお前に感服したわけではない!」



「なんやねんそれ。言うておくが俺とシャルが作ったからこその絶品というわけではないんやぞ」



苦笑いしつつ、相手を挑発しているような口調で拓人はそう言った



「何が言いたいんだよ」



すかさず俺はその挑発にのりつつ問いを返す



「俺がおるからこそのこの朝食なんや!」



「 なんだとてめぇ!」




たかが朝食だけに、ましてや少しの会話だけで喧嘩になるとは周りにいた子供達も想像がつかなかっただろう

レーンは取っ組み合いになっている大和と拓人の姿を見て何もないかのように白ご飯を口に運ぶ


ミツキは若干イラつきながら二人の様子を見て今でも爆発しそうな感じだった



「シャルが作ったからこそのこの朝食なんだ。ましてや俺は今猛烈に腹が減っている、お前と遊んでいる暇はないんだよ!」



「そんなん知らんがな。なんや、お前は俺が作ったやつも入ってるくせになんの言いがかりや!」



大和のいう言葉に対して拓人の反論が入り、拓人のいう言葉に対して大和の反論がかえる

もうどっちつかずだ

二人の言い分は他者から聞いていると何を言っているのか理解ができないことだ


いや、正直言って悪いのはほぼ大和の方だというのは明白だった

だって、作ってもらったくせに言いがかりをつけるの失礼極まりないものなのだから


でも、拓人も拓人でもっと大人の対応をとるべきだった。一様大和よりも年上なんだし、自分が朝食を作ったというのに拘る必要もないんじゃないのだろうか


これ全てが今シャルが考えることそのものだった



「あーもういい加減にして!」



食堂に入ると見えた光景にシャルは何が起こっているのか大体は理解した

二人に対して言う言葉も考えた


そして、二人の口論が悪化するにつれて怒りが爆発した



「シャ、シャル…」



いきなりの大きな声に大和は小さく息をこぼすように声が出た

拓人は無言に彼女の姿を見つめる



「何を話してるのかと思ったら、朝食が美味しそうでそれを作ったのは私と拓人で、それが気に食わないっていうことなのかしら」



「え、いや、な、そういう意味じゃないんだよ。なんていうのか拓人が作ったのも美味しそうだよ。でもなんかよくわからない気持ちになってさ」



「よくわからない気持ちって何よ」



シャルは淡白に問いを返す

拓人はそんな大和とシャルの会話を見てなぜが嬉しそうに笑みを浮かべていた


あれだ。『大和のやつ怒られてやんの』なんてそんなこと考えてるんだろう

なんとも腹が立つやつだなこいつは



「よくわからない気持ちっていうのはね……」



なんて言ったらいいのかよくわからなくなって曖昧な言葉で隠したっていうのに、やっぱりシャルは鋭い

どうやって言えばいいんだ?拓人が一緒に作っているっていうのに腹が立ったて言ったらいいのか?


そんなの俺が嫉妬しているみたいじゃないか。拓人に対して何故そんなに腹が立ったのか、自分でもよくわからなくなってきた


たから、やっぱり、思ったことは言うことにした。

はっきししない気持ちとともに



「拓人に腹が立った!正直言ってなんでこいつがシャルと一緒に作ってんだよ!って思った。しかもうまいからなおさら腹が立った、そんな気持ちだ」



「え……それって」



シャルは小さく言葉をこぼす。若干顔を赤らめて、小さくうつむいて



そんなことなんておかまいなしに拓人は笑いながら言葉を放った



「え、なに大和。もしかして俺の料理の良さに嫉妬しちゃってたやつ?まぁそれなら俺も悪い気にはならないけど…」



「んなわけないだろ!」



「じゃあなにに腹が立ってんだよ!」



「お前にだよ!」



大和は拓人に言葉をぶつけることで気恥ずかしさを紛らわせた。

口論なんてしているうちに朝食はとっくに冷めきっていた









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