小桜さんは義理堅い (完)
作者さま:奈瀬朋樹
キーワード:ラブコメ 日常 ほのぼの ちょっとシリアス
あらすじ
小さな女の子を交通事故から守るために、大けがした主人公。入院していると女の子の姉「小桜さん」がお礼にやってきた。無口で微妙に天然な彼女は何度も義理固く見舞いにきてくれて、2人の距離は徐々に縮まっていく。
感想
セリフではなく擬音で描写される小桜さんがとても魅力的。キャラ設定にセンスが光ってますね。ホラー小説好きの、だて眼鏡女子!
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今日も高校が終わってから一直線に来たと分かる時間に、また来てくれました。
チラッ (こちらを見ている)
「あの、小桜さん。昨日はすみませんでした。だから入ってきてくれませんか?」
朝からスタート中の小説消化が4冊目になった所で、病室の扉がちょっとだけ開き、だけど誰も入ってこないので風かな?と読書を再開しようとしたら、ぴょこっと小桜さんの顔が扉の隙間から半分だけ出てきて、こちらを覗き込んでいる。
じーーー(様子をうかがっている)
「小桜さん。見ての通り俺は動けないので、何もできませんから」
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持参したエコバックの中身をベッド横の机に置き、幾つかの封を開けて、差し出してきた。
「貰っていいんですか?」
コクコク(首を縦にふる)
差し出されたのはビーフジャーキーとエナジー飲料で、普段なら大歓迎だけど、
「すみません。今は食欲が……」
という台詞を漏らした途端、みるみると小桜さんの表情が陰っていき、どよーんとした顔でビーフジャーキーを引っ込めようとした所で、
「いや、やっぱり大丈夫です! 看護師さんからも、もっと食えって言われてますので!」
やべー、ここは男なら死んでも食べなきゃダメな場面だった。そんな自分の鈍さに猛省しつつ、奪い取ったビーフジャーキーをエナジー飲料で流し込む。
「とっても美味しいです!」
ワザとらしさ全開だけど、小桜さんは一安心な反応だからOKだろう。ただ、お見舞いの食べ物がちょーっと独特な気がする。
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この雰囲気、いいですね! ミステリアス小動物系無口ボケキャラ?
話が進んで仲良くなってからも、ほぼしゃべらないんです。これが好き。かなりの筋金入り。無口系キャラのセリフが増えると、印象が変わっちゃいますし。フィクション的には首尾一貫しててナイス。作者さまのこだわりを感じます。
青春ラブコメでありながら学校の外が舞台となるのも新鮮。序盤は病院、中盤からは通学路・それぞれの家など。
小桜さんの家庭事情はちょっと複雑で、その部分で少しだけシリアス要素があり。割とガチに重い。しかし、それによって幸せパートの甘さが引き立っている。
全体を通してテンポ良くサクサク進んでいくし、章分けがはっきりしていて読みやすい。青春ラブコメとして個性のある作品です。
状態:完結
文字数:108,103文字
作品URL
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