博士とセーラの交換日記 (完)
作者さま:もちもち物質
キーワード:SF アンドロイド ほのぼの シリアス
あらすじ
1人の人間と1体のアンドロイドによる日記。成長していくセーラ、資源の限られた地下都市の生活、ゆっくりとだが進行する地上の再生。はたして結果は?
感想
日記形式なのがセンス抜群。基本的にほのぼの。文章力があって「日記」な雰囲気が上手く出てます。
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そうそう、そういえば昨日は流星群の日だった。
観測はできなかったけれど。
折角の機会だから、セーラと天文学の勉強をした。
セーラは凄いね。みるみる学習して、どんどん賢くなっていく。
彼女を見るのが最近の楽しみの1つだ。
……って、あれ。
そろそろ1ページ埋まってしまうな。
……なんだかしまらないけれど、まあ、日記だしこんなものでいいか。
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良い表現力! 書いているキャラの感情がよく伝わってくるというか。
そして、厳しい状況も徐々に明らかになっていく。どうやら地球とは別の星であり、しかも地表は汚染されている様子。
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なんて言ったらいいのかなあ。
5年。5年経った。けれど僕らは、まだ空から遠い場所に居る。
今8歳の子供は、空を覚えていない子が多い。今5歳の子供は、そもそも空を見たことが無い。
それから、γ地区の一角に、黒い布が垂らしてあった。誰かが亡くなったらしい。その誰かは、空を再び見ることなく亡くなった訳だ。パーティに来ていた人達も、何人か、それをとても悲しんでいたよ。
『再び空を見ること』は、ここに居る全ての人達の願いだ。
それは僕も知っていたつもりだ。
けれど、『初めて空を見ること』すらしていない人が居て、そして、彼らがそもそも、『初めて空を見ること』を望むことすら知らない、という事は、初めて知った。
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リアリティのある描写ですねぇ……過去との断絶、文明の崩壊がものすごく伝わってくる。
壮大な世界観、その切り取り方がすばらしい。人々の地下都市での生活を詳細に書けば、いくらでも話が広げられそうな設定。途中で結婚式の様子とかも出てきて、厳しい状況でもまだまだ人々が生きてることが感じられる。でもそれは語られない。あえて2人の日記だけに限定してある。
広い世界を少しだけ見せてるんですよね。残りの部分は読者の想像に任せる、読者に想像の余地を残す。
終盤になって明らかになる真相もそうだけど、情報の出し方がめっちゃめちゃ上手い。
優しく温かい雰囲気とSFならではの重苦しい展開が見事に同居している作品。
状態:完結
文字数:50,407文字
作品URL
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