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あなたの未来を許さない  (完)

作者さま:Syousa.

キーワード:SF 未来 デスゲーム 能力バトル 主人公は無能力 レズ イラスト


あらすじ

根暗な女子高生「御堂小夜子」。彼女はある晩、27世紀の未来人から大学授業の教材として殺し合いの【対戦者】に選ばれてしまう。小夜子の監督者は「キョウカ=クリバヤシ」。

能力が1つだけ与えられるはずだったが、まさかの外れで能力無しに!? 知恵と工夫のバトルアクション。


感想

イラストも含めて、総合的な完成度がとても高い良作。


まず、SFとして独自理論などがしっかりしている。

タイムマシンを持つ27世紀の未来人たちが企画したデスゲーム。教育運用学の試験として、人間を上手く操縦する方法の学習と極限状態に置かれた人間の観察を目的とする。ついでにテレビ局協賛のエンタメ番組でもあるという外道っぷり。

「過去の人間を殺し合わせるとかタイムパラドックスが起きるんじゃないの?」という話になりますよね。

そこで本作ではコンピューターの計算によって、未来にまったく影響を与えたなかった人間を選んだ、という理論が説明されています。


~~~


生物としての血脈は勿論、関与した事柄が僕達の現代まで何も繋がっていないことが、歴史上の事実として明らかになっている。これは学校の天体量子コンピュータで手間をかけて検証し計算したものだから、間違いない。


~~~


歴史および時間の流れにおいて完全に無意味な存在。だから、干渉して改変しても問題ないという理屈。う~ん素晴らしい。

また「無意味な存在と言っても、殺し合わせるとか人権上どうなの?」という突っ込みもありますよね。

それに対する回答としては、社会貢献する可能性が0なら人権は与えられない、という説明。


~~~


いいかい、【人権】っていうのは、その人間の【将来的な可能性】を担保にした保護なんだ』

(中略)

『だから君達みたいな「存在する意味が無いことが確定している人間」には、【人権】は適用されないんだよ』


~~~


なるほどなぁ、一理あるって感じですよね。選ばれた方はたまったもんじゃないけど(笑)

こういった説得力のある独自の理屈がでてくる作品は良いものです。世界観に厚みが増しますよ。特にSFの要素がある作品は、説明・理論の説得力と面白さこそが見せ場だと思いますし。


そして、1つの特殊能力が与えられるはずの対戦者たちの中で小夜子だけがまさかの能力無し、ここが本作の面白いところであり上手い部分。

まず、作品の中心であるバトル描写。能力者に対して、能力のない常人が知恵と工夫で戦っていく。弱者が強者を倒す、まぁ割とスタンダードな路線では。

もちろん、この部分も高水準ではあります。小夜子のとっさの戦術と諦めない執念は緊張感と迫力満点。


しかし、私が上手いと思ったの直接のバトル以外の部分。まず、小夜子は現代人同士で話し合って引き分けのまま企画を終わらせようと考える。平和的で現実的、たぶん私も同じ状況なら同じことを考えます。

そして対戦相手との会話に成功。自分の能力を聞かれても素直に答える。自分は能力無しです、と。それに対する相手の反応は? 「嘘つくなよ!」

そりゃそうですよね~(笑) 能力を隠してるようにしか思えない。この状況で本当に能力が無いなんて信じる方がおかしい。

能力無し、ゆえに相手から信用されない。平和な交渉ができない。殺し合うしかない。無能力だってことが平和な交渉を自然に禁止して殺し合いへと物語を誘導していくわけですよ。リアリティのある展開。小夜子に能力があれば、きっと話の流れは変わったでしょう。


また、能力無しになった原因も上手くストーリーに組み込んでいるし、終盤の展開が良い! 重大なネタバレになるから避けますが、読んでて「なるほどな~!」と感心しちゃいましたよ。ここにきて無能力が「弱さ」から「強さ」に変換されるカタルシス。

バトル以外でも無能力であることが展開に活かされているわけで。無能力の弱さの側面だけを見るのではなく、それを多角的に利用。作者である「Syousa.」さまは上手いですねぇ。


あと話はズレますけど、本作「あなたの未来を許さない」では途中でタイトルが回収されます。タイトルが回収される物語は良作の確率大! これはみなさん経験している法則じゃないですかね?

最後に、この作品は挿絵も大きな魅力。作者さま本人ではなく「jimao」という方が描いているとのこと。

これがとっても良い感じ! 白黒ながらキャラクターの雰囲気がかなり上手く表現されています。文章による描写とまったく違和感が無い、まさにぴったり。

イラスト計画が始まった経緯までは知りませんが、初めからではなく完結後に挿絵の提供が始まったようです。jimaoさんが本作を読んで気に入ったのでしょうか、けっこう愛を感じるイラストで本当に良い。


「小説家になろう」の作品を評価する時にイラスト、しかも作者以外のイラストレーター制作、を考慮するというのはやや邪道な気がしないでもない。

でも、コンテンツとしては文章だけよりイラストがあった方が良いに決まってます。すばらしい物語に、すばらしいイラスト。総合評価としては私の読んできたweb小説の中でもトップクラスの完成度です。


注意点としては主人公の小夜子が重度の変態レズであり、また1度だけですが性的暴行シーンが出てくるのがやや読む人を選ぶかも。しかし、作品のクオリティは非常に高いと思いますね。

この記事を書いているのは2018年5月25日だけど、イラストはさらに追加予定とのことですごい!

なお、イラストがあるのはなろう版のみ。カクヨムにも掲載されてますが、なろうで読んだ方がより楽しめるでしょう。


状態:完結

文字数:261,905文字


個人的高評価ポイント

◇ アイディアが良い!

◎ 高い完成度!

☆ 私の特に好きな作品です!

作品URL

小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n0100dm/

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054881650773


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