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50/103

魔王少女と呼吸の生徒会  (完)

作者さま:インク

キーワード:ゲーム 高校生 シリアス? 性描写あり


あらすじ

とある出来事がきっかけでスピーチの練習をすることになった主人公。美少女な生徒会長に手伝ってもらうはずが、彼女がゲームをしようと言い出し……? 重なり合う物事、それらの真相とは。


感想

ゲーム中の謎めいた空気が独特で魅力的。お互いを魔王と勇者に見立て、スマホゲームの指示を実行。それを成功か失敗で評価していくのだけど……?

混乱、怒り、楽しさ……主人公の気持ちが上手く書かれていて読み進めてしまう。


~~~


『ゆうしゃ の こうげき ゆうしゃ は まおう の むね を さした』

 読み間違いを期待して、もう一度読み返してみたものの、淡々とした単純なひらがなの列にあやまりなどなかった。

 なぜわざわざ部位を指定してくるのだろう。胸じゃなくて、せめて肩や腕ならよかったのに。

 いや、理由は何であれ女の子の体に勝手にふれて許されるわけがない。

 僕は笑い声を作って彼女を見た。人が悪いですよ生徒会長、もう僕の負けでいいですから、二人だけでスピーチの練習をはじめませんか、そんな言葉を伝えようとした。

 視線がぶつかる。闇色とでも名づけたくなるほど黒い瞳が、僕の喉の奥から声を奪う。

 魔王のように冷徹な視線が、僕から『逃げる』の選択肢を奪う。


~~~


僕は鼻から大きく息を吸って、イメージを固める。

 ここはゲームの世界。僕は勇者。目の間には魔王。

 そしてゲームのキャラクターのように、メッセージに表示されたことを忠実に実行する。

 僕は魔王に近づき、魔王の体に両手をまわして、強くしめつけた。

 その刹那、嗅覚が刺激された。キャンディーの詰まった(びん)(ふた)を少し乱暴にあけたみたいに甘い女の子の匂いが鼻孔に飛び込んでくる。

 次に肉体の感触が伝わってくる。モデルみたいに細い体、でもそこにある確かな柔らかさ。

 無意識に僕はしめつける力を強めた。

「────っ」

 魔王はダメージを受けている。

「あ、ごめん」

 僕は手の力を緩めた。

「ダメよ」厳しい声が上がる。「それは認めない」


~~~


序盤はほぼ2人のやり取りだけで進行していくのだけど……何ともミステリアスで一気に引き込まれてしまう。美少女と2人っきりで遊ぶ、ラッキーな状況のはずが? 逃がさない生徒会長と逃げられない主人公。たった2キャラだけでここまで展開を膨らませられるとは、作者さまの構成力は相当なものです。途中でエロいシーンがあるのは注意。

また主人公が勇者あつかいされている理由と、真相を知っている彼自身の内心の葛藤も丁寧。予想外の展開で勇者になってしまった気分とは。

「ゲーム」の使い方もめちゃ上手い。物語は『ゆうしゃとまおう』というスマホゲームを利用して進んでいくし、過去編に出てくるRPGの使い方にもうならされます。すごいセンス。

そしてオチが良い。賛否両論ありそうだけど、私はかなり好きなタイプの終わり方。読者も登場人物たちも気付けていない。シンプルながら強烈な余韻がある。

全体を通して、ものすごく上手い。小説を書く能力が高くないとこの物語は作れませんよ。


状態:完結 

文字数:106,036文字


個人的高評価ポイント

◎ 高い完成度!

作品URL

小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n9144bi/

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054885361300

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