クロノメーター・クロニクル
作者さま:むらむら
キーワード:架空戦記 ファンタジー マスケット銃 前装砲 帆船 海戦 クロノメーター
あらすじ
16世紀の初頭、魔物の軍が突如として地球に出現した。彼らの強大な力によって人間領域は100年たらずでヨーロッパと、一部の地域にまで追い詰められていく。マスケット銃、前装砲、帆船、城塞等の17~18世紀頃の技術を駆使して、魔物の軍団に挑む物語。
感想
船と海戦を中心に書かれているのが個性的ですごく良い! 描写は細かく丁寧、表現には勢いがあり迫力満点。
船って、兵器武器の中でも地味めで題材になりにくいんで貴重な作品。なろうでもファンタジーと言ったら基本的に地上を歩いて旅する感じだし。
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ガンデッキに波が流れ込む。ハード号が波によって浮き上がった瞬間を見計らって、掌砲長が号令をかけた。
「いまだ!門蓋を忘れるな!押し出せ!」
掛け声とも唸り声ともつかない声を上げながら、砲手たちが大砲を押し出した。
掌砲長は刻々と変わるレイチェル・ハード号の傾きを見定め、号令を発する。
「撃てーっ!!」
片舷十二門のカルバリン砲が、一斉に爆音を轟かせる。炎を吹き出した大砲は、勢いよく下がり、固定ロープによってガツンと止まる。衝撃波は、クオーターデッキのアリソンの額を軽く平手打ちして、ビリビリと船体が振動する。
派手な黒煙は、風に流されるまま甲板を通り過ぎていった。
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まぁ、ある意味でガチすぎるというか、かなり細かい部分の名称・専門用語もバンバン出てくるので少し読みにくいと感じる人もいるかも?
全部を理解できなくても十分に状況は分かるので楽しめるとは思いますが。私もまったく知識がないけど楽しめてますしね。
タイトルにもなっている人間側の秘密兵器が、「クロノメーター」という地味な計測器なのも最高に海戦物語ですばらしい。
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取り出したのは小さな機械だった。
装飾が細かく美しいく輝いており、見る人を魅了する輝きを放っていた。
それは、貴族の道楽などで作られる、ブレスレットウォッチや懐中時計と呼ばれる物だった。
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価値とは、このクロノメーターと太陽さえあれば、大海原のど真ん中にいても、自分が地球上のどこにいるか正確に知ることが出来るという能力のことだ。
これは「武器」と言っても大げさではない。
大西洋のような海原を航海する場合、艦隊で固まって出発したとしても、天候不良でバラバラになったり、針路がずれて目的地にたどり着けなかったりする。
だが、このクロノメーターがあれば、海上で無理に艦隊行動しなくとも、敵地手前の安全な海域で再集結することが可能だし、同じく敵前に補給基地を作っても、そこに安定して補給物資を運ぶことができる。
陸から見えない海域を航海することで、魔界軍に発見されることのない安全な航路が確立し、中国やインドとの連絡航路を繋ぐことも可能になる。
クロノメーターは時間という定規を使って海を支配することが出来る、ということだ。
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直接に敵を攻撃する新型の大砲・銃・船ではなく、海での移動を最適化する計測機こそが逆転の秘策! いいですね~、リアリティで説得力のあるアイディア!
また船以外にもマスケット銃、前装砲などが大活躍。これ系が好きな人にはたまりません。
注意点としては、本格戦記ものの系譜なんで専門用語と登場人物が大量に出てきます。特に、1人1人のキャラ描写はかなり薄めですね。
いわゆるキャラものライトノベルとは真逆なので……読む人は選ぶでしょう。
しかし、戦記物としてはすごく高品質でワクワクドキドキさせてくれる作品。船と海戦に興味がある人はぜひぜひ読んでみるべきですよ!
状態:連載中
文字数:221,079文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
作品URL
https://ncode.syosetu.com/n2282dm/