退魔の盾 (シリーズ第1作完結)
作者さま:鷹樹烏介
キーワード:伝奇 異能バトル 殺人鬼 警察 書籍化作品
あらすじ
連続殺人犯として死刑を受けた主人公だったが、気付くと秘密裏に蘇生されていた。訓練のあとに引き合わされたのは退魔の力を持つ女性。古くから日本を守ってきた一族のお姫様らしい。社会の裏にうごめく闇の存在と、それに立ち向かう警察特殊組織の戦い。
感想
何と言っても主人公が殺人鬼なのが個性的。独自の哲学と、何度も出てくるヒロインへの殺害願望。やべー奴だからこそ良い味してる!
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凹レンズ状に窪んだ、老人の口を覆うラップ。
大きく見開かれた老人の濁った目。
生命にしがみつこうとする、枯れ木のように痩せたわななく彼の手。
動かないはずの足がばたついたとき、感動のあまり涙がこぼれたのを覚えている。
やがて老人は小さく痙攣して動かなくなり、ボクは長年の念願だった死の瞬間を見ることが出来たのだった。
ああ……何と素晴らしい経験だったことか。まるで、全てが黄金色に輝いていたかのようだった。
もっと、もっと殺したい。もっと、もっと、もっと、もっと……。
『死』に触れ、生命の煌めきが消えるその瞬間を見たい。
その時、ボクが思っていたのはそんなことだった。後悔などカケラも無かった。
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これが主人公とはね(笑) 序盤から一気に引き込まれますね。ありきたりな作品じゃないとすぐに分かる。23人も殺してる超危険人物で普通なら完全に悪役。
獲物を苦しめたいのではなく、死の瞬間にこそ輝く生命の尊さを探求している。思考もきっちりと筋が通っていて、非常によくキャラ立ちしてます。
ヒロインの「奈央」さんと組んでからも、しょっちゅう「今ここで殺したらどんな顔をするのかな?」とか考えちゃうんだから(笑)
そして、その奈央さんも実に魅力的なキャラ。強くてかっこよくて優しい! 加えて、怒ると古語が出るのもグッと来ます。いいですよね素が出ちゃうキャラって
ストーリー、設定も練りこまれており重厚。出てくる悪役たちも、主人公に負けず劣らずの「危険性」「嫌な空気」がしっかり書かれている。他にも過去の殺人鬼たちが使っていた呪いのこもった武器とかそれっぽくていいですよぉ。格闘技および銃器に対する知識も深いようで丁寧で鋭い描写は迫力があります。
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一瞬、ボクは躊躇した。
的を撃ったことはあっても、生身の人間を撃つのは初めてだった。
こんな簡単に、撃っていいのか? という思いがあった。もっと、こう味わうように初めての射殺を行うべきではないかのかと感じていたのである。
狭い室内で、重い撃発音が響く。大口径拳銃特有の、大太鼓を叩いたような轟音だ。
二百四十グレイン(約十六グラム)の弾頭が飛び、銃を握った右手は上に跳ねた。
ボクの放った銃弾は、わずか五メートルほどしか離れていない男の胸骨を粉砕し、肺と心臓を破裂させて背後に突き抜ける。
男は不可視の巨大な手で弾き飛ばされたかのように後に吹っ飛び、壁に叩きつけられて動かなくなった。
やっぱり、この死に方はつまらない。
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主人公がやべー奴なんですよねぇ(再確認)。
味の濃いキャラクター、見事な描写力。さすがに書籍化も納得の面白さ。
この「退魔の盾」自体は完結表記になってますが、物語としては途中。続編を予定されているようですね。
状態:シリーズ第1作完結
文字数: 146,357文字
作品URL
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