きみは小さな居候 (完)
作者さま:むめみつき梅
キーワード:現代 妖怪 日常 ほのぼの 孤独
あらすじ
久しぶりに訪れた父方の田舎、主人公「柳田真理」は座敷わらしを見つける。どうやら他の人間には見えていないらしい。ようやく出会った自分を見ることができる相手として、座敷わらしになつかれてしまい、気付いたら東京の家にまで付いてきていて!?
感想
男子大学生と少女座敷わらしのほんわか生活。無邪気で子供っぽい、わらしちゃんがとっても愛らしい。
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基本的に、一日一食、ご飯さえあれば満足なようだったが、真理と一緒に食卓を囲むので、座敷わらしも三度三度、おかずも残さず食べている。
食事の支度が苦にならないのは、「美味しい、美味しい」と言って食べてくれる相手がいるからだろう。
「いーたーだーきます」
「めしあがれ」
「ごちそーさま」
「おそまつさま」
こんなやりとりが、いちいち楽しい。
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わらしちゃん、かわいい! しかもちょっとした幸運まで授けてくれるとは……なんという素敵な存在。
しかし、ほんわか日常だけでなく「ほとんどの人間には見つけてもらえない」「遊び相手がいない」という孤独もしっかり書かれています。
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誰にも見られることのない座敷わらしは、ずっと孤独だったのかもしれない。
わらし様と崇められて、おもちゃをたくさん供えられ、だけど、遊んでくれる人はいない。
そんな座敷わらしを見ることができる、唯一の人間が真理なのだ。
「あのね、次に真理が来たら、お人形遊びをしようって思ってたの」
そう言って、おもちゃの山から人形を漁る後姿を真理は黙って見つめた。その小さな背中に比べて、真理はなんと大きくなってしまったことか。
――『次に来たら』って……。そんなこと何年も何年も思ってたのかよ……。
胸が締め付けられる思いだった。
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ああ……子供が孤独を感じる、こういうの個人的には涙腺が緩む。1人で何年も待ち続けるわらしちゃん……想像するともうね。
あと1章のクライマックス、わらしちゃんを見つけて連れ帰るシーンもほんと泣けてつらい。やっぱり「家」に、安心して家族と一緒に楽しく暮らせる場所に帰りたいですよね。
悲しい部分が、日常の幸せを倍増させている。ほんわかした日常はそれだけで幸せであり、そんな日常を手に入れるのは難しい。わらしちゃん、ほんと良かったね……
あと、恵美さんがいいキャラしてる。大学生で縁も無いのにわらしちゃん見えるとかただもんじゃない。
ほのぼのとする生活に、孤独と悲しみをそえて。上質な日常ものです。
状態:完結
文字数:370,725文字
個人的高評価ポイント
◎ 高い完成度!
作品URL
https://ncode.syosetu.com/n6016bv/