私の町の巨大ネコ (完)
作者さま:かもしか
キーワード:現代ファンタジー 青春 シリアス
あらすじ
中学生になった最初の夏、主人公「ミレナ」は魔女の瞳を開眼する。祖母から受け継いだ目は普通の人には感じられないものが見える様子。そして、どうやら巨大ネコは人間の死に反応するようで……? 少女の葛藤と成長。
感想
ネコ・ヘビ・蝶・ヒトデ・蟲など、人間の状態を生き物で表現するアイディアが面白い。想像すると何とも不気味かつ幻想的でステキ。美しく絵になるシーン多数。
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窓から外を見れば相変わらず空が青かった。
油絵で描かれたような入道雲が遠くにくっきりと浮かんでおり、その下で巨大ネコが身体をウンと伸ばしている。
瞼を閉じ、耳を垂らした姿はネコそのもの。
巨大であること、他の誰の目に止まらないこと、その性質。
異質な要素が絡むネコも、何もなければ可愛いものだった。
風が吹き、木々が揺れる。
ネコのヒゲは風に動かされることなく、ネコの自由意思に従ってピクピクと動くばかりだった。
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彼の手首にはヘビが巻き付いていたが、病院に来ていた人たちは、それこそ多種多様な生物に憑りつかれていた。
ヒトデが頭にくっついた老婆。
カラスが肩に乗った中年の男性。
瞳に蝶がとまっている白杖を持った青年。
レントと同じようにヘビがギプスの付いた足に巻き付いている人もいた。
どうやら何かしらの症状に対して、特定の生物が憑りついているらしい。
レントやギプスをした人から察するに、ヘビは骨折なのだろう。
ヒトデは頭にしかついているように見えない、脳の病気なのだろうか、それとも血管なのだろうか。
蝶は白杖から考えると、きっと視覚障害に関係しているのだろう。
ボンヤリと宙を見つめている中年に止まったカラスは何を表しているのだろうか。
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実にファンタジー! すばらしいビジュアル! 文字を読んでるだけですが、脳内に自然と映像が浮かんできます。特に終盤の場面には感動しちゃいました。
また登場人物もメインとなるミレアと祖母が口が悪いなど個性が出てます。
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「おばあちゃんおばあちゃん、もしくは妖怪クソばばあ」
「なんだい口が悪いねえ、目ん玉くり抜いてしまおうか。……全く誰に似たのだか」
「おそらくきっと、十中八九おばあちゃんの血筋だと思うよ」
到底孫娘に返す言葉とは思えない内容を口にする祖母に、少女は冷静に返す。
少女のツッコミを聞いた祖母は、鉤鼻をハンと鳴らし、グイっと首を傾け少女の目を覗き込む。
「性格が遺伝するわけないだろう。科学的じゃあないねえあんたは」
「いいえ、おばあちゃん。遺伝じゃなくて環境ですよメイビー」
「ならお前の口の悪さはどこで覚えたんだい。学校じゃあ丁寧な言葉っていうやつを教えてはくれないのかい。ええ? どうなんだい」
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こういう会話、いいですよね! 親密な関係だからこそ乱暴な会話ができる! おばあちゃんの強気で芯の通った性格も伝わってきます。テンプレな口調だけでなく、その作品ならではの会話シーンがあるとグッと引き込まれるもの。
敵役となる人物の言葉も、まさに嫌な感じで上手い。現実的な不快さ。かなりウザいので読者としても対峙するミレアを応援しまくっちゃいます(笑)
生き物を使ったインパクトのある描写、それを利用した丁寧で分かりやすいストーリー。作者さまの実力を感じる小説です。
状態:完結
文字数:102,376文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
作品URL
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