死神を食べた少女 (完)
作者さま:七沢またり
キーワード:戦記 女主人公 ファンタジー 書籍化作品
あらすじ
戦乱で人々が苦しんでいた時代。お腹が減って死にかけていた少女の前に、大鎌を持った何かが現れる。その結果は……!?
強くて腹ペコな主人公「シュラ」が、国同士の戦争の中で深い考えもなしに大活躍していく物語。出世すれば美味しいものがたくさん食べられる!
感想
不利な状況になっていく血みどろの戦争と、楽しそうなシュラさま御一行が面白い。ファンタジーと言っても魔法はほぼ出てこず、血みどろの接近戦。
シュラがとても良いキャラをしていて、敵には容赦がないが部下は大事に。約束は守り筋を通す、好感が持てるタイプの人間性。魔性のカリスマを持ち、
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「手当たり次第に殺せ! 誰だろうと問答無用だ! 反乱軍は全員殺せっ!」
死神の号令の下、騎兵達の蹂躙が開始される。武器を持たない民間人は逃げ惑う。貧弱な装備の民兵は抵抗するが、馬上から繰り出される槍に突き刺され、死んだ。
シェラは雑草を刈り取るかのように、敵陣で殺戮を行った。大鎌を左右、水車の如く回転させながら、手当たり次第に四肢を引き裂いていく。勢いは止まらず、陣中程まで一気に雪崩れ込んだ。
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シュラの魔性のカリスマと、それに魅入られたシュラ隊の不気味な描写もすばらしいですねぇ。読んでてゾクゾクしてきます。
シュラは決して分かりやすい「ヒーロー」ではなく、人間の一線を踏み越えてしまった化け物である。そしてシュラ隊も外から見ると理解できない恐怖の軍勢と化している。
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大鎌を肩に担ぐと、先頭を駆け始めるシェラ。その後を、無言で白いカラスたちが追い始める。槍を斜めに掲げ行進を始める。恐怖の感情がなくなったのだろうか。騎兵達の目から光が消えている。ただ、上官であるシェラの指示に従うだけ。不安の声を漏らすこともない。規則正しく、馬を前へと進めていく。前方の闇を見据えて。
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敗残の騎兵達はその全てがシェラ隊から引き抜かれた者達であり、まるで死神に魅入られたかのように、シェラの野営地に一直線に落ち延びてきた。
ヴァンダーは絶句し、背筋を凍らせていた。そんな馬鹿なことはありえないと。敗残の兵が、どうやってこの場所を知る事ができるというのか。常識ではどうやっても考えられない。場所など知らせていないし、篝火など焚く訳がない。目立たないようにジッと息を潜めているのだ。何故? どうして? 疑念に包まれる。
――そして、一番恐ろしいのは、誰一人としてそれを疑っていない事だ。
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いわゆる普通の戦記物とは一味違った空気です。主人公たちも正義の味方とは全く言えそうにない(笑)
そして、本作のもう1つが深みのあるストーリー展開。主人公たちが戦いに参戦し不利な状況を大逆転! 敵の軍勢をぶっ倒す! ……みたいなテンプレ展開とは全く違う。
個人としては最強でシュラは大暴れしますが、基本的に負け戦のままで物語は進行していくんですよ。普通、主人公は勝ち続けるものだけど本作だとそうはいかない。これがすごく好み。
敵である解放軍の指揮官の方が有能で、準備も周到。そもそも反乱は王国が民を圧制しすぎ結果、大義名分と国民の支持は解放軍の方にある!
なろうのスタンダードなら、主人公シュラは解放軍側に参加しているはず。しかし、本作では崩れ行く王国側の兵として戦い続ける。
はたして、その結果は? 解放軍は本当に正義の軍隊なのか?
重苦しく厚みのある展開。すばらしい。作者さまの感性にめちゃめちゃ共感します。こういう話が読みたかった! 特に、第30話と最終話は締めにふさわしく何度見てもいい。
脇を固めるキャラたちも良い味出してます。みんな大好きヤルダー閣下。個人的にはディーナーさんも好き。
バトルものとしての戦闘描写、軍記ものとしてのストーリー展開、それぞれのキャラクター描写。圧倒的な完成度でしょう。
それゆえに最初から評価は高く、今さらこのエッセイで紹介するまでもない有名作ですが。
2018年5月11日現在で、ブックマーク25,768件、総合評価81,165pt。私の記憶では最高で累計30位前後までは行っていたはず。
なろうのランキングは信用できない! という意見はよく見ますし、私自身も割とそう思ってますけど、さすがに超高評価の作品にはそれだけの質があるものですね。
状態:完結
文字数:335,278文字
個人的高評価ポイント
◎ 高い完成度!
☆ 私の特に好きな作品です!
作品URL
小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n5240bc/