魔族史 (完)
作者さま:クロル
キーワード:ファンタジー 創作歴史 文化 戦争
あらすじ
人類と魔族、2つの知的生命体が進化した地球。人類はアフリカ・ユーラシア大陸、魔族は南北アメリカ大陸で発展。魔族文明の変化と近代以降の世界大戦を解説。700万前の人類と魔族の生物学的な分化から始まる大スケールで厚みのあるファンタジー。
感想
本格的な創作歴史。魔族の生態と文化にとてもリアリティがある。こういう作風すごい好き。
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魔族は白い髪と肌、赤い目を持つ。血は赤く、寿命は人族と同じ。顔立ちも人類のものとよく似ているため、ちょっとした変装をすれば容易に成りすます事ができる。そのせいか魔族は人族の近縁種だと勘違いされがちである。しかし、遺伝子的には人族とチンパンジーほどの差がある。人族とチンパンジーが子供を作れないのと同様に、人族と魔族も子供を作れない。
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火や金属の代わりに魔族の文明・文化を支えた物こそが「球体」である。魔族の学名がマレフィカ・オービス(球体魔法使い)と名付けられたほど、球体は魔族を体現したモノだ。
魔族の歴史は球体の歴史である。魔族はテレパシー以外の魔法は球体が無ければ使う事ができない。人族がより高温の火、より硬く軽い金属を求めたように、魔族はより完璧な球体、より巨大な球体、より透明な球体を求めてきた。それがより強力で便利な魔法の、ひいては文明の基礎となったからである。
木や石を削って球体を作った木石時代から始まり、水晶時代、ガラス時代、アクリル時代と続く魔族の時代区分は、その時代に普及していた球体の材料に由来している。人族にも石器時代や青銅器時代という区分がある。それと同じだ。
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「人類は猿から進化した」というフレーズは誰もが聞き覚えがあるだろう。これは魔族にも当てはまる。700万年前まで、人族と魔族は全く同一の種だったと言われている。両種族の祖先の化石の年代を遡っていくと、両者の違いは次第に少なくなっていき、700万年前の化石で同じ物に収束する。サヘラントロプス・チャデンシスである。
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球体を使って魔法を使うというファンタジー的にも面白い設定。そこから球体の材料によって時代を区分するという考古学的な発想……ものすごく良いですね! 各時代の魔法文明の風景を想像すると、何ともステキ。
さらには700万年前の生物学的な進化から扱うってんだから、この手の創作歴史の中でも本格的で厚みがある。生態と文化を内包した種族全体の進化。魔族文明史ではなく、まさに「魔族史」と呼ぶににふさわしい内容でしょう。
センスある設定と細かく深い描写。高品質なファンタジー作品です。
状態:完結
文字数:58,841文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
◎ 高い完成度!
☆ 私の特に好きな作品です!
作品URL
小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n7031dt/