ダンジョンのエレベーターボーイ (完)
作者さま:ツングー正法
キーワード:近代ファンタジー エレベーター ダンジョン
あらすじ
都市の地下には巨大なダンジョンがあった。冒険者を送迎するのは昇降機を操作する専門職「エレベーターボーイ」たち。しかし、権力者たちが圧力を強めてきて……ダンジョン関係者の自由は守れるのか?
感想
中世ではなく産業革命以降の近代ファンタジーと言うべき世界観。設定にセンスを感じます。
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暗黒のダンジョンの底目がけ、エレベーターの籠は恐ろしい落下を続けた。いよいよ暗さはその深みを増し、大地の奥底でうめきを発する地獄へと到達するかと思われる寸前、エレベーターの鋼鉄の箱は減速した。
金属がこすれ、火花が飛び交う。その甲高い音にエレベーターの籠の中の人間の腸がよじれた。籠は骨格を大きくふるわせ、完全に停止する。エレベーターの籠は疲労したかのように、鋼鉄の皮膚に空いた体腔から熱い蒸気を吹き出した。だが、エレベーターの操り手はその白いもやもやしたものに一切かまわず、腕を伸ばしてがらりとエレベーターの籠の格子扉を開けた。
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ダンジョンに縦穴エレベーター! 便利そうです。実際、地下10階とかまでいちいちフロアを横切って階段で降りていくのは大変でしょうし。
そして、職業名がそのまま呼び名になってしまった男「エレベーターボーイ」と、管理を強めようとする企業組合の対立が話の中心になります。
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「まあ、とにかく、企業組合は近いうちにダンジョン管理の改革に乗り出すつもりだ。おまえの力も大いに借りるつもりだぞ、エレベーターボーイ」
「改革か」
エレベーターボーイは不機嫌そうに吐き捨てた。
「冒険者たちはおまえたちがやることを喜ばんかもしれんな」
マスターは唇に薄く笑みを広げると言った。
「例え彼らが喜ばなくても、企業組合がダンジョンから十分に利益を回収することができれば私は満足なのだ」
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ダンジョンを題材にしつつも、中ではなく外を舞台にする。これも珍しい方向な気がします。個人的にはもうちょい直接的なダンジョン関係者に話をしぼってる方が好みだけど、こういうのもリアリティがあって良い。ダンジョンに潜るもの、潜らないもの。それぞれの立場と考え方の違い。
個性が光る中編ダンジョンものです。
状態:完結
文字数:43,742文字
作品URL
https://ncode.syosetu.com/n2512j/




