扉繋ぎのウォルト (完)
作者さま:三原雪
キーワード:ファンタジー 童話 旅 幻想風景 連作短編 時々シリアス
あらすじ
独立した空間が扉によってのみ接続されている世界「エル・ワトランディ」。記憶を失う代わりに行きたい場所に扉をつなげる異能力もつ少年「ウォルト」と、有名な魔術師「ラギ」の2人旅。
感想
幻想的な世界と、そこで暮らす住人たちの連作短編。絵本のような風景が頭の中で広がります。どの場所も、とても美しく魅力的。
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感嘆の声など出ない。声にならない。
ついさっき、無数の星を見たなどと思わなければよかった。
何しろ無数より多い数の表し方を知らない。無数の二倍はなんと言えばいいのだろう?
空がもう一つ、眼下にあった。
眼前に広がるのは湖。対岸が見えないのはそれだけ大きいからか、それとも暗くて見えないだけか。
その終わりの見えない湖。
明鏡止水。揺らがない水面は鏡となって満天の星空をもう一つ眼下につくりだす。
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「あの釣糸の先を見てろよ」
言われてウォルトは水面に視線を向ける。
しばらくして引き上げられた釣糸の先には、見事な輪郭の細い月が引っ掛かっていた。
空に浮かぶはずの――月が。
困惑して視線を空にあげると、月は変わらずそこに浮かんでいた。
「あれは水面の光を光凝固剤で固めてとってきただけだ。月そのものじゃない」
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湖に映った星の光を吊り上げる、なんとロマンチック! 他にも巨大な図書館の塔、はてしなく広がるひまわり畑、井戸の底にある森、雪の中でもバラが咲き誇る館などなど……どこもステキ。
扉によって別々の場所がつながっている世界、楽しそうです。あと住人たちは人間だけでなくしゃべる動物も多いみたい!
しかし、話によっては重い展開も……理想郷ではなくキャラクターにとっては現実なんですね。
私の好きなエピソードは光採りの森、向日葵畑で待ってる、緑の井戸、歌うオーケストリオン、秘密の花園に咲く、でしょうか。
キャラ・ストーリーの両面で少し描写が薄く、説明が足りてないのがやや気になるところ。だけど、エル・ワトランディは旅してみたくなる魅力的な世界です。
状態:完結
文字数:155,238文字
掲載場所:小説家になろう
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
作品URL
https://ncode.syosetu.com/n6074ch/