森蝕時代のオーク鬼たち (完)
作者さま:へびさんマン
キーワード:ファンタジー SF マンドラゴラ 植物 シリアス クトゥルフ
あらすじ
意思を持ち巨大な樹海と化したマンドラゴラ「森の王」、その恵みを享受し崇め共生するオーク鬼たち、そして死の森の拡大に対抗する人間。連作短編の群像劇。
感想
まず、植物であるマンドラゴラを中心に据えているのが個性的で良い。多くのファンタジーだと動物系のモンスターばっかり注目されますからねぇ。
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「オークとマンドレイクの同時侵攻だと?」
その報告を受けて、大佐は急いで砦の上へと登り、遠眼鏡でその様子を見る。
遠眼鏡の先では、目に見えて分かる程の異常な速度で森林が広がっていっていた。
まるで時間を加速したかのように樹々が育ち、森の領域が広がって押し寄せてきている。
――『森蝕』である。
森と開墾地の境では、前進する騎士鎧姿の樹木モンスター――森の尖兵と呼ばれるモンスター、マンドレイク・ナイトだ――が、次々に膝を折り、そこから根を張り枝を広げ、みるみるうちに巨大な樹木に姿を変える。
マンドレイクたちは、ニンゲンが砦の周りに開墾した土地を、こうやって森林化しながら制圧前進しているのだ。高速で森林化しながら前線を押し上げるこの手法は、マンドレイクの侵攻の常套手段だ。
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意思を持ち、拡大し続けようとする巨大な森と戦う。これは一般的な動物系モンスターと戦うよりも圧迫ありそうです。
そして、剣と魔法のファンタジー……かと思っていたら、中盤から空間・時間の両面で加速していくスケール感がすばらしい。SFとクトゥルフ神話のエッセンスを取り組みつつ、壮大な物語に仕上がっている。
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彼らは種を蒔く。
いつかここではない場所で、自らの血脈を継ぐものが生まれるようにと祈って。
この宇宙を自分たちの――いや、森王の因子で犯すのだ、蝕むのだ。彼らの神の意志に応えるために、広大無辺な宇宙へと彼らは踏み出したのだ。
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私はこういう「ファンタジーに見せかけてSF要素あり」とか「小さな話から始まって時代を超えて拡大していく」タイプ、好きですね。
個人的に、この作品の本領発揮は7話「ラストマンとオーク鬼」からだと思います。ここからのスケールアップ、話の広がりはすごい。初めて読んだときは困惑しつつもワクワクしました。
最終話の締め方も印象に残ってますねぇ。この感じの終わり方も好みなんですよ。ぜひ自身の目でお確かめあれ。
状態:完結
文字数:114,104文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
作品URL
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