SS ある日の<親指>
(=〇ω〇=)<作者、三が日に風邪でダウン中
(=〇ω〇=)<それでも幕間くらいは書けたものの
(=〇ω〇=)<書いてみたらわりと番外編というか
(=〇ω〇=)<普段店舗特典SSで書いてる感じの内容になったのでこっちで投稿
(=〇ω〇=)<読む場合は本編の七章一四七話まで読んでから推奨です
■某国某所
「うーん……、うーん……」
「フシュシュ。“事故死”殿よ、どうしたので?」
それは過去。
“毒殺”の【猛毒王】アロ・ウルミルが<IF>に出向するよりも以前のこと。
彼は暗殺教団の中核となるアジトで何やら頭を悩ませている同僚……“事故死”の【金剛力士】ゴゥルを見かけた。
余談だが、この大柄な新幹部を迎えるにあたって下部組織を動員して大規模な改築が行われたアジトである。
「鎖陣に、宿題、出された」
「“封殺”殿に?」
<親指>が一本、“封殺”【鎖縛王】鬼庭鎖陣。
元は天地の【征夷大将軍】直属の忍者だったが、今は抜け忍となり死神に仕えている異色の経歴の持ち主だ。
ゴゥルの次に若い<親指>である鎖陣は、この新たな<親指>の面倒をよく見ていた。
「自分の硬さ、通じなかったら、どうするか。聞かれても、分からない」
ゴゥルにとって自分の肉体はこの世で死神の次に信頼のおけるものだ。
ジョブがない段階でも生まれ育った環境にいた如何なる生物よりも強く、ジョブを得てより強靭になり、【金剛力士】に就いてからは尚のことだ。
だからこそ、自分の肉体が通じない環境などゴゥルは考えたこともない。
ゆえに、<親指>の先達たる鎖陣からその『もしも』について考えておくように言われたのだ。
「“封殺”殿は面倒見がいいですな……ふむ。ワタシも興味深くはあります。十代半ばという若さですが貴女の耐久力は並の耐久超級職を上回っている。今後の成長とレベルアップを考えれば、そうそう突破できるものもないでしょうが……」
【猛毒王】である彼の毒でも、彼が一切使う気のない最終奥義以外は通じまい。
だが、『敵わぬ相手でも味方ならば問題なく、むしろ心強い』とアロは考える。
その思想で彼は<親指>になり、老齢まで生き残った。
とはいえ、その思想が行き過ぎたために彼は【死神】が見えなくなる。
さらに彼の死因は敵わぬ相手と戦うことではなく、『簡単に倒せるはずの相手に敗れる』という不名誉なものになるのだが……それはこのときからすれば未来の話だ。
「伝説の聖剣のように防御を無視する例もありますしな。用心は必要でしょう」
「うん。それで、ロクサーヌにも聞いたけど、宿題の答え、教えてくれなかった……」
「“即死”殿には聞くだけ無駄でしょう。戦い方を他人に教えられる生物ではありませぬ」
<親指>筆頭、“即死”【水姫】ロクサーヌ・アドラスター。
六〇〇年以上を生きる半長命種の暗殺者であり、<親指>の中でも別格の実力者。
しかし、別格すぎてまともなアドバイスなどできまいとアロは考えている。
「宿題、どうしたら、いいのかな……」
「ふむ。自らの肉体を頼れぬとなれば他を頼るしかありませんな。道具を使いましょう」
頭を悩ませるゴゥルに、内心で『ワタシは“即死”殿と違ってちゃんと教えられる』と思いながらアロはアドバイスする。
「道具?」
「ええ。“事故死”殿ですと既存の装備の装着は難しいでしょうが、特典武具、オーダーメイド、あるいはジェムなど消費アイテムの類ならば扱えましょう。下部組織にそうした物品の制作をこなす者達もおります」
アロのアドバイスをゴゥルは「へー」と聞くものの、あまり実感はない。
この時点の彼女には道具に頼るという感覚がないからだ。
この世の道具で彼女の肉体より硬く、壊れないものはあまりない。
「また、罠も有効でしょう。相手の取りたがる動きを考慮し、それをこそ陥穽とする策を設えるのも暗殺者の醍醐味なれば。フシュシュシュシュ」
「うーん……」
また、罠を使うという発想もゴゥルにはない。
彼女にとって、命とは些細なことで勝手に消えていくもの。
そんなものをどうこうするために罠や策を使う発想がなかった。
ともあれ、アロが真摯にアドバイスをくれているのは分かったので、聞き流さずに覚えておく。
「要するに自分の力が通じないのならば、自分以外の力や、力以外で戦えばいいのですよ。何を使おうが目的を果たすのが我らなれば……フシュシュシュシュ!」
後に肉体改造を受けて自分以外の力で大幅な強化を得る男の言葉である。
……まぁ、敗因もその強化によるものだが。
「わかった」
ともあれそんな未来を知る由もなく、ゴゥルはアロの言葉に頷いた。
これらのアロからのアドバイスが、未来においてゴゥルにどのような結果を齎すか。
それはまだ、分からない。
Episode End
(=ↀωↀ=)<こうして二つ名込みで揃うと
(=ↀωↀ=)<トップバッターだからかアロだけ“毒殺”の【猛毒王】とかストレートだったな……




