表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- Another Episode  作者: 海道 左近


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/84

怪談

(=○ω○=)<二冊同時の書籍作業も後はあとがきと次回予告だけだ……


(=○ω○=)<今日は普通に短編書けたので投稿します


 □【聖騎士】レイ・スターリング


「デンドロに怪談はあるのでしょうか?」


 ある日のこと、本拠地の図書室で作業をしていたふじのんがそんな言葉を呟いた。

 彼女達三人は三倍時間とアウトプット機能を活かし、こちらでも文芸部としての活動に励んでいる。

 最近はデンドロ内の資料を集めた図書室に集まり、作業をしているようだ。

 俺も俺で最近は調べ物が増えたので、ここで顔を合わせることが多い。


「怪談?」


 俺は手元のジョブ関連資料――ビースリー先輩寄贈――から顔を上げ、ふじのんを見る。


「はい。ちょっと執筆の参考にしたかったのですが、資料の中に見当たらなくて……」

「いやでも……あるんじゃないか? 実物いるよな。ゾンビとか」


 デンドロにおいてアンデッドはお馴染みの存在である。

 また、この世界では【冥王】のジョブスキルなどから魂の実在が証明されている。

 ゆえに怪談や幽霊の有無について語るならば、『当然存在する』が答えとなる。


「その、そういう死後の存在オンリーではなくてですね……。探しているのは形容し難い不気味さとか、答えの提示されない恐怖体験というか……。本当にあった怖い話とか都市伝説みたいな、夏に特番が組まれそうな類の怪談です」

「あー、言わんとすることは何となく分かる」

「オーナーが言ってたのはゾンビ映画とかゾンビゲーっぽいジャンルで、ふじのんが気にしてるのは和製ホラーっぽいジャンルですね!」


 イオがふじのんの話をそうまとめる。

 どちらも『ホラー』ではあるが、方向性が違う。

 前者については実在するなら倒せるが、後者は対処困難かつ理不尽なイメージがある。

 そして、ふじのんが存在を言及しているのも後者だ。


「うーん、どうだろうな。怪談みたいな出来事はありそうだが……やっぱりそういう話でもデンドロだと正体が存在しそうだ」

「たとえば?」

「<UBM>」

「「あぁ〜」」


 幽霊の正体見たり<UBM>。

 実際、地方の村で畏れられている山神とか祟り神が<UBM>というケースはとても多い。モノクロームもある意味ではそのパターンだった。


「理不尽な怪奇現象も<UBM>なら基本装備みたいなところあるしな」

「たしかに……」

「そして実在するなら倒せる」

「オーナー、最近ちょっと脳筋度合い増してません?」


 ……言われて自覚する。

 ちょっとレベリングと模擬戦に時間割きすぎたせいか、頭がフィガロさんや天地勢寄りになっていたかもしれない。


「……まぁ、それは置いといて、だ。考えてみると、<UBM>やアンデッドがいること自体が怪談の発生頻度を下げていて、だからこそ怪談としての資料もないんじゃないか?」

「どういうことでしょう?」

「リアルと違ってデンドロではよく分からない理不尽現象でも<UBM>をはじめとしたモンスターやジョブ関連のオリジナルスキル、そして他者の<エンブリオ>という分かりやすい答えが簡単に出てくるからさ」


 ジョブ産でも式神なんかはそういうものが作りやすいらしいしな。

 元天地の決闘ランカーだった【式姫】の戦闘動画を見たが、ほぼ和製ホラーだった。

 顔のパーツが落ちる呪いって怖すぎるだろ……。

 あと、【光王】なんかも自分の<エンブリオ>でホラーを演出して人間観察してたらしい。やってることがドッキリ番組じゃねえか。


「そして、何が起きても『理解不能で恐ろしいオカルト的存在の仕業』と考えられるより先に、<UBM>をはじめとしたシステム的に身近な存在の所業と分類される。実害の面では変わらなくても、恐怖の性質は別物だろう」


 デンドロにはいくらでもファンタジーな存在がいるからこそ、導き出される答えには困らない。

 何が起きても『◯◯の仕業だ』と考えられる受け入れ先があれば、得体が知れないという恐怖はそこで止まる。


「さっきも言ったが、怪談で主に語られる妖怪や幽霊(アンデッド)が、この世界では既にモンスターの一種として認知されているからな。正体や実在を論じる以前に『いるよね』で済む」


 妖怪は種として存在し、アンデッドは動き回り、死者の怨念はエネルギーとして漂っている。

 それにより、妖怪や幽霊を怖がる意味が変わってしまう。

 得体が知れないために怖いのではなく、実在して害があるから怖いのだ。

 こちらでは『人喰い熊怖い』と同じニュアンスで妖怪や幽霊が恐れられる。

 さらに、そういった存在に対し、この世界の人間は抗う力を持っている。

 出てきて害を及ぼすならば倒すという選択肢がとれるのだ。

 ……話がゾンビゲー的なホラーに戻ってしまった。


「しかし、リアルと違うように見えて、ある意味ではリアルと同じだな。リアルでは科学の発展によって、デンドロでは実在するファンタジーによって……怪談は怪談として扱われなくなる」

「なるほど……」


 不可思議な……『言葉で表現することも心で思いはかることもできない』怪奇現象も、理屈と説明がつけば不可思議ではなくなる。

 むしろデンドロの方が怪談の余地がないかもしれない。

 俺の考察に、ふじのんは納得したように頷いている。


「そうなるとデンドロに怪談らしい怪談は存在しないのでしょうか?」

「あるとすれば、妖怪や幽霊とは違う説明不能の何かが怪談になっているパターンかな。それは俺達目線だと分かりにくそうだからティアンに聞いてみたほうがいいかもしれないな」


 ◇


 というような話をふじのん達とした翌日。

 用事があってアズライトと会った際、怪談について知らないかを尋ねてみた。


「怪談?」

「そう。不可思議で理屈が分からなくて怖い話を何か知らないか? オチがモンスターでもジョブでも<エンブリオ>でもない奴」

「指定が細かいわね……」


 俺の質問に、アズライトは少し考えて……俺を指差した。


「……なにゆえ?」

「<マスター>がこの世界から消えたり戻ってきたり、挙句に死んでも何事もないかのように戻ってくるのは不可思議で理屈が分からなくて怖い話よ?」

「言われてみれば……」


 盲点だった。

 実際、俺達としても細かい理屈は分かっていない部分である。

 初期はゲームとしての仕様としか思わなかったが、今の時点だとどういう理屈で成立させているのかという謎が深まっている。


「まぁ、これが<エンブリオ>オチの範疇に含まれるなら、他にそれらしいのは……<じんせいはんぶん>かしら」

「<じんせいはんぶん>?」


 聞いたことのない単語だ。


「怪談というより昔話の一種だけれど。こういう話よ」


 そう言って、アズライトは語り出す。


 ◇◆◇


 □■<じんせいはんぶん>


 むかしむかし、まずしくて、おなかがへって、人生がどうにもならなくなっている一人の少女がいました。

 彼女はおなかを空かせて死にそうになっていると、頭の中で声がします。


『おじょうさん、おじょうさん。わたしととりひきしませんか?』


 頭の声は続けます。


『あなたのじんせいをはんぶんください。そうすれば、すばらしい『みらい』をやくそくします。おじょうさん、おじょうさん。わたしととりひきしませんか?』


 不気味で恐ろしい声です。

 けれど、少女にとって今の自分の人生ほど怖くはありません。

 もしも自分の寿命が半分になってしまうとしても、このままでは明日にも死んでしまうかもしれません。

 だから、少女は言います。

 

「わたし、じんせいをはんぶんあげます」

『――契約成立』



 その日から、少女の人生は変わります。

 偶々お金を拾います。

 偶々そのお金で買った籤が大当たりします。

 そのお金で商売をすれば大儲け。

 良き伴侶にも恵まれ、彼女の人生は大成功です。



 大金持ちになった少女はやがて大人になりました。

 何不自由ない生活です。

 けれど、不思議なことがあります。

 時々、時間が飛んでいるのです。

 気がつくと夜になり、昼になり、意識の外で時間が過ぎています。

 時には会ったことがない人々が、自分と親しい知り合いのように話しかけてきます。

 彼女にそんな記憶はありません。

 そもそも、彼女には自分が成功したきっかけであるお金を拾った記憶も、籤を買った記憶も、商売を始めた記憶もありません。

 まるで、自分ではない誰かが、自分の人生を生きているようです。

 ふと、鏡を覗き込むと……自分の顔がニタリと笑っているのです。

 そした、鏡の中の自分が……自分の口が勝手に喋ります


 ――じんせいはんぶん、と


 その声を聞いて、彼女は気を失います。



 次に目を覚ましたとき、彼女は皺くちゃのお婆さんでした。

 周りには沢山の人がいて、彼女のために泣いています。

 けれど女性はその人々には見覚えがありません。

 自分の子供に似た特徴の人はいるけれど、記憶の中の子供とは何十歳も離れています。

 孫のような人々とは会ったこともありません。

 それはまるで他人(・・)の臨終を体感しているかのようで……。


『――契約時点から演算した残り寿命の半分を消化』

『――契約満了』


 そんな声が聞こえて程なくして、女性は息を引き取りました。

 誰よりも成功した女性でしたが、彼女の人生の半分は……誰のものだったのでしょうか。


 ◇◆◇


 □【聖騎士】レイ・スターリング


「……という話ね。何百年も前から伝わってる定番の怖い昔話だけど、どうかしら?」

「乗っ取られるタイプの怪談か……」


 アズライトの語りが上手いせいか、普通に怖かった。

 しかし、願いを叶えるけどリスクを背負う。昔話ではよくあるな。


「それ、取り憑くモンスターとか<UBM>だったりしないか?」

「さぁ? 少なくともモンスターどうこうという話題は昔話の中には出てこないわね。取り憑いたのが何だったのか、は結局最後まで分からないもの」


 そういう意味では、確かに怪談だ。

 何か分からないまま、というのは重要なポイントである。


「それと、これは実話として伝わっているわ」

「視点の当事者が死んでるタイプの怪談なのに?」

「【冥王】がいれば死人からも聞き取りできるんじゃないかしら」


 そういえばそうだった。

 ここでも怪談のセオリーが通じない。


「派生として断るバージョンもあるし、貧しい少女ではなく娼婦や奴隷なこともあるわね」

「そこは怪談っぽいな」


 地域や年代でパターンに変化が入るのがとてもそれらしい。


「共通点は人生が追い詰められている女性に語りかけてくるって部分かしら」

「男性パターンはないのか? 怪談や都市伝説だと登場人物の性別だけ変えるパターンも多いんだが」

「ないわね。一貫してそういう立場の女性のケースしかない昔話よ」


 ……そこまで一貫していると、実話を基にした話にも信憑性が出てくる。


「しかし、モンスターじゃないって話だけど、そういうシチュエーションでのみ能力を発揮するタイプの<UBM>にも見えてくるぞ」

「そうね。正直私も同じように思ったから、レイのリクエストに沿うか微妙だと思ったけれど、知っている中では有名なものだから」

「でも怪談らしい怪談で参考になったよ」


 俺がそう言うと、アズライトはふっと笑う。


「なら良かったわ。代わりに一つお願いしてもいいかしら?」

「何だ?」

「私がこの話みたいに『追い詰められた女』にならないように……助けてくれる?」

「ああ」


 それについては言われるまでもない。

 俺は友人として、アズライトを助けると決めている。

 今度の戦争でも、それは変わらない。

 アズライトのために、俺は……俺達は戦争に勝つ。


 そう告げると、アズライトは少し困った顔をして……「ありがとう」と言葉を返した。


 ◇


 余談だが、一連の怪談に関する話の際、ネメシスは耳を塞いで紋章の中に引き篭もっていた。

 然もありなん。


 Episode End

(=ↀωↀ=)<リハビリがてら夏だし『怪談』テーマに話を考えてたら


(=ↀωↀ=)<『デンドロだとこうなるよなぁ』みたいな方向に話が進んでこうなった模様



○<じんせいはんぶん>


(=ↀωↀ=)<数十~百年置きくらいにちょっと変化したパターンが世に出てくる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まるで未来でも見えてそうな妖怪ですね…
[一言] >そして実在するなら倒せる フィガロや天地勢以前に凄くゲーマーな発言だと思った卓ゲ民
[一言] こういう話が残ってるのも不思議だけどその方が都合がいいからかな。 最近気になったのですが、メイデンはwithのカテゴリーに姿を変えて戦闘しますが、一部のアポストルの様にメイデン状態で能力を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ