表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- Another Episode  作者: 海道 左近


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/88

リクエストSS『鍛造』

(=ↀωↀ=)<リクエストSS


(=ↀωↀ=)<書籍17巻のネタバレがあります

 □■天地・東青殿家領内・<鋼の庵>


 赤い空間に、金属同士のぶつかり合う音が響く。

 しかしそれは天地で日常的に聞こえる剣戟とは違い、規則的に打ち鳴らされている。

 響くは槌音。赤く熱された金属を叩き、強度を高める鍛冶の音。

 それもまた天地の日常。

 しかし、天地でも他では見られないものがそこに混ざっている。


『…………』


 今、槌を振るっているのは人型であれど、人ではない。

 巨大な金属の塊が、鍛冶をしている。

 人の手首ほどの太さの赤い鋼線(ワイヤー)が縒られ、膨らんだ人型のあみぐるみ(・・・・)となり、それが槌を握っている。

 炉の炎の照り返しを受ける顔には目口もなく、集まったワイヤーの先端部分が頭部に牛の如き角を形成しているため、どこか不気味な……ホラーの様相を呈している。

 鋼のあみぐるみは黙々と鍛冶を続けていく。

 作業の末、鍛造の済んだ金属が出来上がる。

 金属は冷えてもなお燃えるような赤色を維持しており……見る者が見ればそれが鍛えられた神話級金属であると分かるだろう。


『…………』


 あみぐるみは自らが鍛えた金属を手に取り、回し眺めて確認した後。

 巨大な鋼の手で、その金属を握り込む。

 あみぐるみが再び手を開くと、そこに金属は残っていなかった。

 まるで、あみぐるみの手のひらが金属を喰ってしまったかのように。


『……ソレナリダナ』


 そこまで済んで初めて、あみぐるみは言葉を発した。

 金属が反響するような声で発せられたのは、今の仕事の出来栄えについての可もなく不可もないといった言葉。

 神話級金属を更に鍛え上げるという、この世界でも両手の指の数で足りる程度の人間しかできない芸当をした上での発言である。

 そしてあみぐるみはアイテムボックスから素材を取り出し、再び鍛冶仕事に取り掛かろうとして。


二重鉢(ふたえばち)さん。御在宅ですか?」

『……ハァ』


 自らの鍛冶場の外から聞こえた声にあみぐるみ――天地所属<超級>の一人である二重鉢轟は溜息を吐きながら素材を仕舞った。


『イルゾ』


 二重鉢が呼びかけに応答すると、鍛冶場の戸を開いて一人の女が足を踏み入れる。

 華族の令嬢のような整った顔立ちの女だが、首から下……着物を改造した独特の衣服の内側に見える肌には幾つもの傷痕が走っている。

 彼女こそは天地を代表する修羅の一人、決闘四位【阿修羅王】華牙重兵衛。

 二重鉢と同陣営……天地の四大大名が一つ東青殿家に属する<マスター>であり、友人と言えなくもない知人だ。

 もっとも……親しんだ回数よりは殺し合った回数の方が多い間柄ではあるが。


ナン()ヨウ()ダ。マタ、ヨウトウ(妖刀)テイ(手入)レニキタノカ』


 重兵衛は天地でもトップクラスの妖刀使いだが、妖刀は特典武具ではないため自動修復機能を持たないものも多い。

 しかし妖刀四十二染に代表される高位の妖刀ほど、メンテナンスできる人間が限られる。

 この東青殿家の領内においては、二重鉢……鍛冶師派生鍛造特化超級職【鍛造王キング・オブ・フォージング】がその第一人者だった。

 【鍛造王】は武器を作ることに関しては他の同系超級職に劣るが、金属の状態を向上させることに特化している。

 金属自体をより上位の金属にする【錬金王】に対し、【鍛造王】は同じ金属の範疇で質を高めることに特化している。

 その鍛造工程の有無で生産された武器の性能には数割……【鍛造王】の仕事ともなれば倍以上の差がつくとも言われている。

 そして同時に、【鍛造王】は金属武器の状態を向上させるスキルも有しており、妖刀の手入れについても二重鉢は第一人者である。

 そのため、重兵衛は度々二重鉢に武器の手入れを依頼していた。

 二重鉢からすれば『ランキングで並んでいる相手に頼むことか?』という気持ちもあったが、同じ大名家の人間であるため有料で引き受けていた。

 ゆえに今回もその用事だと二重鉢は考えたが、重兵衛は笑みを浮かべて首を振る。


「今日はメンテナンスではなく、武器づくりをお願いに来ました」

『ナニ……?』


 重兵衛の発言に二重鉢は疑問符を浮かべる。


タシ()カニワタシ()モサブジョブデ【ハイ・スミス(高位鍛冶師)】ニ()イテイルガ、ソレダケダ。トッカショク(特化職)デハナク、<エンブリオ>モセイサン(生産)キヨ(寄与)スルモノデハナイ』


 鍛冶師系統の上級職は多岐に亘る。

 全般的な鍛冶師としての能力を高めた【高位鍛冶師】。

 金属の鍛造に特化した【鍛造師(フォージ・スミス)

 刀剣の制作に特化した【刀鍛冶(ブレイド・スミス)】。

 鈍器の制作に特化した【槌鍛冶(ハンマー・スミス)】。

 金属鎧の制作に特化した【鎧鍛冶(アーマー・スミス)】。

 それらに加えて、下級職の時点で分岐した鉄砲鍛冶系統などもある。

 ゆえに武器を作るならば欲する武器に特化した上級職に依頼するのが常道であり、さらに言えば特化超級職や特化上級職に<エンブリオ>の力を加えた生産特化<マスター>がその上位に位置する。

 二重鉢は特化超級職だが金属の鍛造……つまり素材をグレードアップさせる専門家であり、サブジョブも【鍛造師】と【高位鍛冶師】で武器に特化している訳ではない。

 そして二重鉢の【輝鋼軍神 シユウ】は鍛造で得た金属を戦力へと変える純戦闘用の<超級エンブリオ>であり、やはり生産に寄与しない。

 先程までの作業にしても、神話級金属の不純物を除いて質を上げる工程までしか行っておらず、その後に武器の形に整える素延べの工程は行っていない。

 つまりは二重鉢は生産用素材を作る生産職。

 高品質化した金属そのものを他の生産職に譲るか、自身のエンブリオに取り込むのが二重鉢の生業。

 二重鉢自身が武器を作ることは稀だ。

 ゆえに、素材を求めるならばともかく、武器作りを依頼するならば専門の上級職を頼るべきである。

 そんなことは重兵衛とて百も承知のはずなので、二重鉢は訝しんだのだ。


「ええ。二重鉢さんにお願いしたいんです」

()セヌ。ソモソモワタシ()ブキヅク(武器作)リソノモノガニガテ(苦手)ダ。タッシャ(達者)モノタチ(者達)ノヨウナ“アレンジ”モデキナイ』


 生産職は基本的にはジョブスキルとステータス、そして【レシピ】によってアイテムを作成する。

 レシピそのままならば、保有スキルのレベルとステータスによって成否含めてほとんど自動的に完成までの工程を進められる。

 だが、そこに独自のアレンジを加えようとすると話が全く変わる。

 例えば同じ武器の装飾を変えるだけでも、オートからマニュアルに切り替わる。

 センススキルのサポートはいくらかあれど、本人の技量とセンスも求められるのだ。

 それゆえ、製作者次第で強度などは同じでも重心やデザインが歪んだ武器が作られてしまうことも多々ある。

 サービス開始初期の生産職によく見られた現象であり、それを乗り越えてまともなアレンジ武器を作れたのは、生産に対応する<エンブリオ>を持つ手合いがほとんどだった。

 今は内部で数年の経験を積んで<エンブリオ>がなくともアレンジができる者も増えたが……生憎と二重鉢はその類ではない。

 しかし、重兵衛は「それで構いません」と言った。


「変わった武器はいりません。【レシピ】通りの武器を作っていただければそれで十分。ただ、本数は多くなりますが……」

『……ワタシ()デハジブン(自分)タンゾウ(鍛造)シタシンワキュウキンゾク(神話級金属)ブキ(武器)ツク()レナイガ』

「はい。ミスリルか、その上のオリハンコンくらいでお願いします。たしか【高位鍛治師】でも作れたかと」


 そこまで聞いて、二重鉢はいよいよ自分に頼む理由が分からなくなった。


『……オマエ()イマサラ(今更)ソンナレベルノブキ(武器)タイリョウ(大量)ホッ()スルノハナゼ(何故)ダ?』

「練習用ですね。ただ、サイズが大きいので店売りで買い集めるのも手間ですし、あまり噂になりたくもないので。ああ、サイズはこのくらいです」


 重兵衛はそう言ってメモ書きを二重鉢に手渡す。

 そこには薙刀や刀が大凡のサイズまで指定されている。

 しかしどちらも長大であり、刀の方も一般には大太刀や斬馬刀と呼ばれる類の長さだ。

 加えて、装備スキルもないただの武器であることが求められている。

 そのメモ書きを読み、二重鉢は気づく。


『……? コレハオマエ()ブキ(武器)デハナイノカ?』


 重兵衛は様々な武器を扱う【阿修羅王】ではあるが、この長さの武器……それもスキルを伴わないものを何本も使うことはないだろうと考えた。

 ゆえに尋ねると、重兵衛はあっさりと頷く。


「はい。私用の武器ではありませんね。加えて、装備スキルはあるだけ無駄(・・)なので」

ムダ(無駄)?』

「少し待ってくださいね。……アルトさん、そろそろ入ってきたらどうです?」


 重兵衛はそう言って、鍛冶場の外にいる誰かを手招きする。


「うぇあ……!? え、ええとぉ、アタシは<超級>の人と関わり合いになるなんて畏れ多いモブなのでご遠慮したくてぇ……」


 そう言って顔と体のほとんどを扉に隠しながら答えたのは、黄色い着物と頬のフェイスペイントが特徴的な女性だった。

 彼女の名前はアルト。レイ・スターリングこと椋鳥玲二の大学での同期であり、先だってのイベントで彼と共に重兵衛と相対したマスターだ。

 なお、その後は紆余曲折を経て重兵衛に確保され、半ば強制的にコンビとして動くことになってしまっている。

 内部時間での昨日も一緒に行動し……二人VS<UBM>VS改人VS北玄院家陰陽師部隊というカオスな四つ巴を乗り越えてきたばかりである。


「というか、『いいところに行きましょう』って言うからついてきたけど、何で<超級>のところぉ……?」

「いやですね、アルトさん。天地のいいところと言えば猛者のいるところに決まっているじゃないですか」

「それは修羅の理屈だよ!? そしてアタシは修羅じゃなくてモブだよ!?」


 <マスター>のはずなのに天地のティアンより修羅ってる相方に、もはや何度目かも分からないドン引きをするアルトだった。


「ふぅ。アルトさんは何でそう卑屈なんですか。あなたはイベントであの【神獣狩】を倒したんですから自信を持ってくださいな」

『ホゥ』


 重兵衛の言葉に、二重鉢が興味を惹かれたようにアルトの方を向く。

 かつて二重鉢同様天地に属し、今は“万状無敵”と称されるカルルを倒したという話には大いに興味を惹かれた。


「あれは九割レイっち一割ジュリちゃんでアタシは小数点以下だからね!? ハードル上げないで!?」

「謙遜しすぎですよ」


 実際、カルルのノックバック無効を潰して場外敗けを狙える状態にまで追い込んだのはアルト……というか彼女の所持品なので、勝利に寄与した割合は自己申告よりよほど大きい。


「修羅ラッシュは嫌だ……修羅ラッシュは嫌だ……」


 しかし、本人は『天地内で猛者として注目されること』、そして『そんなに強いなら殺し合おうぜ!』と修羅が群がることを本気で怖がっている。

 そもそも彼女自身、自分から関わる分にはノリノリでも、他者からのアクションに対しては打たれ弱いタイプである。

 陽キャの攻撃力と陰キャの防御力を併せ持ったメンタルの持ち主とも言える。

 付き合いが長くなってきた重兵衛は、アルトの<エンブリオ>が『問答無用で拘束するくせに一歩間違うと相手が超強化される』という難儀な仕様なのも本人のパーソナル由来ではないかと思い始めていた。


『……フゥン』


 二重鉢はそんなアルトを観察し……しかし疑問を抱く。


『メモノブキ(武器)ダガ、ソノ<マスター>ガツカ(使)ウニモ、サイズガ()ワナイトオモ()ウガ? ガーディアンニデモ、()タセルノカ?』


 アルトはメモ書きにあった武器を振るえる体躯には見えず、そもステータスが不足しているように思えた。

 ゆえに、ガーディアンか従魔にでも使わせるのかと推測したのだ。


「正解に掠ってはいますね。……アルトさん、出してください」

「ええ!? で、でも<超級>の人にバラすのは御免被りたいんだけどっ!? 秘密って約束じゃん!!」


 重兵衛の要求を、アルトはブンブンと首を振って拒否する。


「二重鉢さんなら大丈夫ですよ。見ての通りに口の硬い人ですから」

「口ないじゃん!! フルメタルで全身硬そうだけど!!」

「それに私と違ってすぐに殺し始めたりしませんから。天地の修羅勢でも指折りにまともな人ですよ?」

「自覚あるなら治してくれない!?」

「嫌です♪」


 重兵衛の言動にアルトが振り回されるのは、ここ最近の二人の常だった。


「……ふぅ。アルトさん。はしたない話ですが、私……最近のアレとの試しは少しマンネリというか欲求不満で……変化が欲しいんですよ。二重鉢さんの武器が手に入らないなら……うふふ……アルトさんも交えた試しもいいかもしれませんね。これがいわゆるさんぴー(・・・・)というものでしょうか?」


 重兵衛はどこか艶やかな笑みを浮かべ、じっとりとした感情の篭った目でアルトを見つめる。

 なお、言葉の雰囲気に反して待っているのは血で血を洗う闘争である。


「ひぇ!? 脅しじゃなくて本気で言ってる顔だこれ!? わ、分かったよぅ……!」


 このままだと自分まであの地獄のような戦いに巻き込まれると察したアルトは、自身のジュエルからあるものを呼び出した。


『――【阿修羅王】、【鍛造王】、確認候』

 ――ソレは首なしの鎧武者。


 天地であれば知らぬ者のいない、そのモンスターの名は……。


『――ホロビマル(・・・・・)


 二重鉢は驚きを滲ませた声で、ソレの名を呟いた。


「やはり分かりますか」

『アア、ワタシ()()ケタカラナ』


 天地の猛者達が挑み、最後には人知れず消えていた<SUBM>。

 それが今、再び二重鉢の前に立っている。


『……ナルホド。カノジョ(彼女)サイゴ(最後)トウバツシャ(討伐者)カ』

「偶然なので!? アタシはこれっぽっちも強くないので襲わないでね!?」


 四度の敗北を経た五回目の【ホロビマル】……鎧のみになった代わりにその性能を十全に発揮し、<超級>達をも退けた状態。

 それをアルトは討伐し、鎧を得た。

 しかし、それもアルトの言うように、実力で撃破した訳ではなくハメ技……というか偶然妙なハマり方をした結果である。

 ……とはいえ、その言い訳が通じる修羅勢は少なく、ほとんどは『まぁとりあえずバトるか』で襲われるだろう。

 幸いなことに、二重鉢はそのほとんどに該当しなかった。


『オマエ()シュウシン(執心)スルワケ()ダ』

「まぁ、きっかけは別件だったのですけれどね。今では良い訓練相手です」


 試しと称してホロビマルと模擬戦……という名の殺し合いをするのが、最近の重兵衛の日課である。


「それでですが……このホロビマル、今は徒手空拳で戦っています。けれど……」

()ッテイルトモ。モトモト(元々)イク()ツモノブキ(武器)シヨウ(使用)スルスタイルダ。……ソウカ。ソノタメ()ワタシ()トコロ()()タノカ』


 事ここに至り、二重鉢にもようやく重兵衛の要求の意図が掴めた。


「はい。私との試しで使う武器が欲しくなりまして」


 つまり重兵衛は、ホロビマルと本来のものに近いバトルスタイルと戦いたいのだ。

 流石に元の武具と同じ特性は持たせられないが、そもそもマジックアイテムだろうが特典武具だろうがホロビマルに触れれば特異性を失う。

 ゆえに、スキルなど必要ではなく、かつての武器に近い形状の武器でさえあればいいのだ。


「お願いできるのが二重鉢さんしか思いつかなかったのです」


 そして重兵衛が知る限り、そんな武器を秘密裏に、かつ大量に作ってくれそうな知人は二重鉢しかいなかった。


「という訳で、お願いできますか?」

『……リョウショウ(了承)シタ』


 重兵衛の頼みに、二重鉢は頷く。


「代金はどれくらい掛かります?」

カネ()()ラン。ミスリルハザイコ(在庫)ガダブツイテイルカラナ。オリハルコンモ、マァユウヅウ(融通)デキル』


 彼の鍛える金属で最も優れているのは最高品質化した神話級金属だが、それを用いた武器制作は難易度が極めて高く、扱える者は天地でも五人といない。二重鉢自身でも無理だ。

 そのため、二重鉢の手掛ける最高品質金属で最も人気なのは、その一段下の古代伝説級金属を高品質・最高品質化したものだ。

 常識的な一流鍛治師達はそれで様々な武器を作り出している。

 しかし逆に、それより下の逸話級金属の最高品質は、また違う理由で余っている。

 なぜなら、ミスリル武器の製作は下級職カンストから上級職のレベルが低い間の定番。そのレベル帯の生産職では、最高品質のミスリルなど荷が勝ちすぎて持て余してしまう。

 ゆえに、素材が手に入る度に鍛造していたものの、引き取り先もあまりいないので在庫として彼自身が抱え込んでいた。ミスリルの一段上のオリハルコンも近い理由で余っている。


 余談だが、神話級金属については在庫が発生しない。極一部の超一流に卸す分以外は、先刻のように自分の<エンブリオ>に食わせるという形で日々消費している。


「代金不要とは太っ腹ですねぇ。何がお望みですか?」

ワタシ()ニモトキドキ(時々)()ラセロ』

「ですよね」


 顔も何も見えない鋼線のあみぐるみ。

 だが、今の声音は、鋼の内側で笑みを浮かべているのだろうと確信させるような響きがあった。

 生産職ではなく、決闘三位としての昂りがそこにはあった。


「とはいえ交渉成立ですね」

『アア』


 重兵衛は嬉しそうに微笑み、二重鉢と握手を交わした。


「……流れるようにアタシが売られた気がする……」


 満足げに握手を交わす二人を、ホロビマルの所有者のアルトは遠い目で見つめていた。

 話の中心は彼女のホロビマル(鎧)なのだが、交渉には噛めなかった。

 というか今回の話は重兵衛が模擬戦で楽しくなるだけで、アルト自身にはプラスがない。

 強いて言えばホロビマルの戦力アップだが……そもそも存在を隠したいアルトが重兵衛以外の人前で使うことなどそうはないのだ。


『…………』


 ただ、二重鉢はそんなアルトの様子に気づいたのか……。


()ケレバ、キミ()ブキ(武器)ツク()ロウカ。モチロン(勿論)タダ(無料)デヤラセテモラウガ』


 空気を読んでそんな提案をしたのだった。


「マジで!? やったぁ!」


 そしてアルトはその一言でさっきまでの遠い目をキラキラした目に変えたのだった。

 飴玉貰って喜ぶ幼児くらいシンプルな子(大学一年生)であった。

 とはいえ、三方良し(?)で話はまとまり、今後しばらくは三人で行動することになるのだった。


 Episode End

○リクエストSS


(=ↀωↀ=)<今回は『生産職』、『重兵衛とアルトのドタバタ天地編』、『他国の<超級>のエピソード(天地)』、『能力や銘・モチーフが出てきていない他国〈超級〉勢』


(=ↀωↀ=)<などを混ぜた話となりました



○【鍛造王】二重鉢轟


(=ↀωↀ=)<天地決闘三位の<超級>


(=ↀωↀ=)<生産職なのに天地の決闘で三位にいる


(=ↀωↀ=)<自分の<エンブリオ>に供給する金属求めて色々やっている間に生産の超級職になっていた


(=ↀωↀ=)<天地の修羅勢の中では落ち着いた部類


(=ↀωↀ=)<というか天地だと<超級>勢はわりとまともで(技巧最強除く)


(=ↀωↀ=)<準<超級>の重兵衛と桔梗が特におかしかったまである



○錬金と鍛造の違い


錬金術師「《ミスリル錬金》で成功したら銀を十分の一の質量のミスリルにするぞ! たまに高品質ミスリルもできるぞ!」


鍛造師「《ミスリル鍛造》で成功したらミスリルを半分程度の質量の高品質ミスリルにするぞ! たまに最高品質ミスリルになるぞ!」


(=ↀωↀ=)<大体こんな感じ


(=ↀωↀ=)<もしも閣下と組んだら金属素材業界に革命が起きる



○更新予定


(=ↀωↀ=)<これから七章終盤の書き溜めに加えて


(=ↀωↀ=)<ガッツリと書籍作業するのでちょっとお休みします


( ̄(エ) ̄)<でも22巻ってもう作業自体はほぼ終わってなかったクマ?


(=ↀωↀ=)<だから別件


(=ↀωↀ=)<『加筆修正したら刊行してもいいよ』とOK出たので本腰入れます


( ̄(エ) ̄)<それはもしや……


(=ↀωↀ=)<うん


(=ↀωↀ=)<――南海編『the Southern Cross』、加筆修正書籍化作業開始

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?テイモンの滅丸は出したらその瞬間指示無視で超級職に問答無用で襲い掛かるんじゃなかったでしたっけ? 出しても制御出来てる?
[一言] >南海編『the Southern Cross』、加筆修正書籍化作業開始 待ってます!
[気になる点] そういえばガチャチケで出た武器はまだ試してないのでしょうか。 [一言] いい出番期待してます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ